高校の体育祭。

何か盛り上げることをしましょうということで。

ボクら学年が考え出したのが、熱気球をあげて空を飛ぶということだった。

今思うと、とても不思議な話だけど。

素人の高校生が熱気球を上げるという行為について、「危険だからやめろ」と止める者は一人もいなかった。

先生方も、「おもしろいから、やってみろ」と言った。

「危険だからやめさせよう」というより、「そんなこと高校生にできるわけないだろ」という頭が先生方の中にはあったに違いない。


若林で見た空


ところで熱気球作り。

ボクらがなぜそんなことを思いついたのか。

理由がさっぱり思い出せない。とにかく。

「あの空を飛びたい。」

「自由になりたい。」そう願う気持ちが、ボクら高校生を突き動かしたようだ。


熱気球の素材は、なんと驚くことに米袋に決まった。

米袋が一番頑丈だ。ちょっとやそっとじゃ敗れない。

だから熱気球作り。まずは、米袋集めから始まった。校内で、米袋収集。

ポスターを作った。

「あなたの家の余った米袋をボクらに下さい。」

実に呑気だった。この呑気さが、ボクら高校の持ち味だった。そしてその後。

夥しい数の米袋が、学校に集まることとなる。


熱気球作りは、意外にも本格的に進められた。

図面を引くのは同級生。

その図面通りに、米袋をカットするのも同級生。

カットされた米袋は、各教室に配付され、それらを繫ぎ合せ、ある種のシーリング材のようなもので補強した。

全部のクラスでその作業をやることに効率性は見出せなかったけど。全てのクラスでやるべきだという生徒会の意思が優先された。

「我が校生徒全員で熱気球を上昇させる。」

生徒会長はそう言った。

そして、次第にそれは、学校全体の活動へと発展していった。