小学生の頃。

寒い日は、親がセーターを着せてくれた。

ジャンパーもあったけど、学校にそこまで厚着はしていかなかった。

着て行って、セーター。それがあったかくて嬉しかった。

ボクは、自分で自分の服装を決めるというタイプではなかったので、朝起きると、母親が「これとこれを着て行きなさい」と、その日着ていく服をボクに手渡した。

与えられたものを素直に着る。そして毎日休まず学校に向かう。

小学生にしてもはや、模範亭主みたいな子どもだった。


若林で見た空


このセーター。寒い日は、袖の部分をグングン伸ばして指先まであっためた。

半ズボンの足が寒い日は、しゃがんで、足までもセーターの中に入れた。

何をやってもでたらめなAつクンは、ジャミラだぞーと言って、頭をセーターの首の部分で覆い、顔だけ出してボクらを攻撃してきた。

ボクらもジャミラになって、その攻撃に対応した。

そうこうしているうちに・・・。

なんということでしょう。

セーターはグングンと巨大化した。

当時のセーターって、今のものみたいに頑丈に出来ていなかったから、ある部分は薄くなり、そして穴が開いたりした。でも・・・・。

そのセーターを捨てずに大事に大事に着たのも、昭和な世の中の定めだった。

セーターに穴が開いたって。

ところどころ薄くなったって。ちょっとくらいシミになったって。

ボクらはそれを勲章のように大事に大事に着続けた。ボクら頭の悪いこどもたちに、もはや。

「もったいない」の精神はちゃんと宿っていたのだ。

ジャミラAつクンも。

勉強ができないYもとクンとそしてボクも。

真冬の季節を、こうして元気に遊び過ごした。