ボクは小学生の時。
いつでもうぐいす屋さんという本屋さんで、漫画を立ち読みしていた。
お小遣いが少ない小学生は、漫画をウハウハ買うことができない。
漫画をウハウハ買えるのは、我がクラスきっての特権階級。超大金持ちのKぼたクンだけで、それ以外の子どもはいつでも漫画を買っては、皆で回し読みしていた。
だから。漫画の立ち読みという行為は、ボクらにとってはとても大切な大切な営みだった。
「おそ松くん」「オバケのQ太郎」「天才バカボン」。
当時単行本として売られていた漫画を次々に読破していく、頭の悪い子どもたち。
うぐいす屋のおじちゃんは、困ったやつらだなぁって顔をしながらも、一応は見逃してくれていた。ところが。
ところがある日。本屋さんに行くと、なんと・・・、漫画を読めないように、漫画の周りにビニルが巻かれていた。
「う~む、やられた。」
これじゃぁ、大好きな漫画が読めない。
「これじゃぁ、買わないと読めないじゃないかぁ。」当たり前のことを当たり前のように悩み、当たり前のように叫ぶボクらのところに。
何をやってもでたらめなAつクンがやってきた。
そして彼は。
躊躇することなく、いきなりビニルをビリビリと破いて読み始めた。
そうか。
そうだったのか。ビニルを破けば、漫画は読めるのか。
ボクらの中に起こった閉塞感は全てこれで解決した。
その後。
みんな、ビニルをビリビリ破っては、漫画を読みはじめた。
店のおじちゃんは、悲しい目でボクらを見ていた。