子どもの頃。

ボクのおじいちゃんは、仁丹を食べていた。

仁丹。銀色に光るその食べ物が珍しくて。

ボクは何度も何度もおじいちゃんに仁丹をもらった。

そして何度食べても、仁丹は不味かった。

やたら、苦々しくて。口の中に、その苦味がずっと残った。


若林で見た空


仁丹は、生薬からできていた。いわゆる、口臭予防のお薬だ。

ところが、仁丹そのものの匂いが強烈だった。

だから、おじいちゃんの所に近づくと、仁丹の匂いがプンプンとした。

仁丹はその後。

梅仁丹なる商品を販売した。これは、仁丹より幾分うまかった。

酸っぱくて。大きさも、ぐっとでかくなった梅仁丹をボクは時々買ってもらって食べた。

子どもの食べ物としてはかなり渋い代物。

梅仁丹。

今もあるのだろうか。森下仁丹さんに聴いてみないとわからない。