Sぎ山クンは、クラスで一番のデキスギクンだった。
勉強もできるし、体育もできるし、優しかった。
人柄がよいSぎ山クン。
ボクらはみんな、彼になついていた。ゴロニャン。
そしてそのSぎ山クンは、鉛筆をいつも、いつの時でも、小刀で削っていた。
小刀で、上手に鉛筆を削るSぎ山クン。
彼が鉛筆を削ると。均等な厚さと大きさの大鋸屑(おがくず)がでた。
そして、同じ形で次々と先端が尖った鉛筆が生産され、それは見事に机の上に並べられた。
Sぎ山クンが小刀で鉛筆を削る仕草。それは、とってもシックだった。
シックで、エレガンスだった。
だからみんな、Sぎ山クンが鉛筆を削りだすと、ウットリした。
それは。
何をやってもデタラメなAつクンや。
何をやってもあやしいK杉クンには全くない、大人の魅力だった。
大人の、ネスカフェのような、そんな魅力だった。
遠藤周作さんも、ビックリしてひっくり返るくらい。
違いのわかる、大人の子どもだった。