小学生の頃。

ボクらの机は、一人に一つではなかった。

それは長くて、二人で座るという、不思議な机だった。

一つの机を二人で配分することによって起こり得る問題は、領土問題だ。

どこまでが自分の領土なのか。それは毎日、最新の注意の元、確認をしなければならない重要案件だった。

もちろん、隣の女の子も神経を擦り減らしていた。他からの主権侵害に対する行為を一切許さないという強い態度が必要であると同時に、自らも彼の地に足を踏み入れることのないように気をつけなければならなかったからである。

その過程で、なくてはならない存在。

それが境界線だった。ボクらは境界線を、マジックで引いた。

小学生が引く境界線は、時々曲がり公平性を欠くことも多かった。だから、大概しっかりとした女子が線を引いた。


若林で見た空


ボクは・・・。その領土並びに領空を侵犯することが多かった。

ついついボクの手からこぼれ落ちた鉛筆や消しゴムが、コロコロっと境界線を越した。

そのたびに、隣の女の子はボクの鉛筆や消しゴムを拿捕した。拿捕した後、速やかにボクの筆箱にそれを入れ直した。「「GINちゃん、気をつけるんだよ。」という注意の言葉を添えて。

小学生低学年の頃。

不思議なことに、ボクの隣には必ず、しっかりとした女の子が配置された。しっかりして、かつ面倒見のいい女の子がボクの横に意図的に置かれた理由。

当時は全くわからなかった・・・。

授業中。ボクの鉛筆や消しゴムやノートや教科書は、あらゆるところに拡散した。

核拡散防止条約を無視して、多方面に転がるボクの勉強道具を拾う役割は、それらしっかりした女の子が一手に担っていた。

国際分業。必要である。人は一人では生きていけない。それと同じように、国家も一国では存在しえない。そこには、よきパートナーが必要なのだ。

隣国と仲良くすること。とても大切なことだ。

もちろん、言うべきことはしっかり言うけど。最終的な落としどころは、「握手」でなければならない。

そこを読み違えると、どんでもないことが起こってしまう。

小学校の隣の女の子は、ボクにそのことをちゃんと教えてくれた。