ジョニーが来たなら伝えてよ 2時間待ってたと わりと元気よく 出て行ったよと


お酒のついでに話してよ 友達なら そこのところ うまく伝えて・・・・。




と、高橋真梨子さんは歌った。つまり、彼女はジョニーに2時間すっぽかされたことになる。最近ならありえないね。2時間のすっぽかし。


だって、携帯があるから。


10分、20分待たされたところで、大概は電話する。


「どうなってるの?」ってことになる。「どうなって、あなたは今どこにいて、いったい何をしているの?」ということになり、詳細を説明しなければならなくなる。


仔細にメールを打たなければならなくなる。


ジョニーもたまったもんじゃない。誰もがジョニーに同情する。異論はない。




若林で見た空





ところがこの時。


ジョニーは、戦場へ行っていたのだ。


ジョニーは徴兵を受け、恋人と別れを告げ、第一次世界大戦の戦地に赴いていたのだ。


彼を待ち受けていた戦場とは、過酷なところだった。


砲弾が飛び交う中。彼は塹壕に飛び込むが、被弾し、視覚、聴覚、臭覚、言葉、聴覚を失い、また疱瘡を起こした両腕、両足を切断されてしまう。


悲しみに暮れ、絶望を味わったジョニーは一時、死を望むが、その後立ち直る。


もう一度強く生きたい。ベッドの上で彼は、そう願うようになる。


全てのコミュニケーション機能を失ったジョニー。その彼が最後に選んだのは、モールス信号による医師・看護婦との会話だった。わずかに動く首を振って、彼が送るモールス信号。でもそれを、医師と看護婦は理解できなかった。「これはきっと、痙攣だ。」ジョニーに意識や意思はない。そう思い込んでいた彼らは、ジョニーの動きを麻酔で抑え込んでしまう。


しかしその後。新しくやってきた看護婦がクリスマスの日、ジョニーの胸にメリークリスマスと一文字ずつ綴った時に、ある事に気づくのだ。


「ジョニーはうなずいている。」「ジョニーの心は生きている。」と。そして。


看護婦と医師は、ジョニーの動きに意味があることを悟る。


「彼は我々に、モールス信号で語りかけている。」




つまり。


高橋真梨子さんに言いたいのは、ジョニーを許してあげて欲しいということだ。


たとえ、2時間待たされたとしても、携帯で電話なんかしてはいけない。メールも打ってはいけない。


もし、彼とコミュニケートしたいのであれば。


真理子はモールス信号を打つべきだ。




と言うわけで・・・。


「モーリス持てば、スーパースターも夢じゃない」そんなCMがラジオで流れていた時代のお話を今日は書きました。長くなってごめんなさい。


「ジョニーへの伝言」「ジョニーは戦場へ行った」「モーリスギターラジオCM」を繋ぎ合わせたお話です。フィクションなので、お間違いなく。