印象に残る女性ボーカリストに、高橋真梨子さんがいる。

彼女のハスキーで、でも透き通った歌声が好きだった。

初めて彼女の歌声を聴いたのは、「五番街のマリーへ」だった。

ボクは。

10年前、マリーとジョンに会いに、ニューヨークに出かけた。

マリーという娘がどんな暮らしをしているのかを訪ねようと思って。

でも、残念なことにマリーの家がどの家なのかわからなかった。

仕方ないから、ブランド店が立ち並ぶその町並みの外れにあるディズニーショップでボクは、ミッキーの古い人形を一個買って帰ってきた。

悲しい思いをさせたマリー。今は幸せか。

真梨子に、伝えることはできなかった・・・・。

ところで、ジョンもいなかった。聞くところによるとジョンはもう、ボクらの知らない世界に住むという。

それは、山の彼方の空遠く、幸い住むと人の言う場所に程近い世界のようだ。

ジョンとも会えなかったボクは、ストロベリーフィールズに行って記念写真だけ撮ってきた。「はい、チーズ。」亡くなった方のご冥福を祈るその場所で、「はい、チーズ」なんてニカニカ笑って写真を撮って果たしていいものなのかどうか。

未だにナゾである。


若林で見た空


あなたの空を翔びたい・・・。

高橋真梨子さんはそう歌った。

いいね。ステキな表現だ。

「あなたの空を翔びたい。」とか。

「あなたの海を泳ぎたい。」とか。

「あなたの山を登りたい。」とか。

「山は疲れるからいやだ」とか。

「いいじゃない。次の日曜日、遊びに連れてってよ。」だとか。

「たまの日曜日くらい家でゆっくりテレビを見させろ」だとか。

「昔は、日曜日のたびにいろいろな場所に連れてってくれたじゃない。」だとか。

「うるさい。オレの前で昔の日曜日の話をするな。」だとか。

その会話には、海よりも深い愛情が詰まっている。

ライアン・オニールとアリー・マックグローの恋愛のような、ピュアな愛情が伝わってくる。


上質なラブソング。

それは、今の季節にこそお似合いだ。

秋に。高橋真梨子さんの歌うラブソングを聴きながら、ハイボールを飲めばあなたもきっと。

ハンフリーボガードとイングリッドバーグマンみたいな会話が楽しめるよ。

試してみたらいかが・・・?