「傘を広げるでしょう。

そして、その傘をぐいっと回すでしょ。

すると、なんということでしょう。傘がひっくり返ります。

ひっくり返った傘をさして家まで帰ると、すごくたくさんの水が溜まります。

それを、お風呂の水に使いましょう。」

小学生の頃。

エコで、ロハスなAつクンは、ボクらにそう教えてくれた。

さすがである。さすが、Aつクンである。

ボクらは皆その教えに従った。

雨の日の帰り道。

Aつ君の教えに従い、皆、傘をひっくり返し、水をためて家路に着いた。

すると、ある者は途中で傘が元に戻りビショビショになった。

またある者は、バキバキバキと壮大な音を立てて傘をぶっ壊した。

「Aつ~!!!」

次の日。家の者に厳しく叱られたアホな男の子たちは、全員エコでロハスなAつクンに文句を言った。


若林で見た空


でもでも。

今思えばAつクン。

雨水でお風呂を焚こうなんて。

本当にエコでロハスで持続可能な少年だった。エライ。

もしあなたが雨の日に。

傘を逆さにひっくり返して、水をためて歩いているオヤジを見かけたとしたら、それはきっとAつクンです。

Aつクンにどうか。声をかけてあげてください。