「今日から本校の生徒は皆昼休み、外に出て遊ぶことになりました。皆さん。外に出て遊びなさい。」

担任のその言葉はかなり奇妙だった。

昼休み。ボクらは運動場に出て遊ぶことはあまりなかった。

だって、サッカーも野球も禁止なんだよ。けがをするからって。

それでいて外で遊べと言われても。何をすればよいのでしょうか?

理解に苦しんだ。

鬼ごっこか。秘密基地ごっこか。

中学3年生は、そんな遊びを好き好んでしない。それなのに、担任は外で遊べという。聞けば、職員会議で決定したことだという。情けない。あなたたち。本当に大人?そんなこと時間をかけて話し合ってるの。と聞き返したくくなる内容だった。担任の「外で元気に遊べ」の言葉はだから、むなしく教室に鳴り響いた。

若林で見た空


つまり、誰もその指示に従わなかったのだ。

そうしたお上のお達しを無視して。ボクらは教室で遊び続けた。

友だちと話をしたり、ノートで五目並べをしたりして。のんびりと昼の一時を過ごした。

ところで。ボクら庶民が外で遊ぶのはなぜムリなのか。

そこにはきちんとした理由があった。

それは、物理的な理由だった。

当時ボクの学年は、全部で14クラスあった。1クラス50人の時代だったから、1学年で生徒数700人。つまり、ボクが通う中学校は3学年全部をあわせると、生徒数2000人をはるかに越すマンモス学校だったのだ。

さて、この人たちが一斉に昼休み。運動場に出てきたら、どんなことが起こるか。

わかるよね。動けない。ギチギチです。

そんななことも考慮しないで、前述のような決定事項をボクら庶民に下ろされても。

ボクらはその指示に従うことはできないよね。ということだったのだ。

昼休みは昼休みで、いろいろあるね。

そんなことを感じた出来事だった。