高校時代。

給食がなかった。毎日弁当。それはそれで嬉しかったけど、母親はさぞ大変だったろうなぁと頭が下がる。

元気な友だちがいた。

○○らクンと言った。体が大きな男だった。

彼は、いつでもお弁当を授業中に食べてしまい、昼は学生食堂に行って、そこでカレーライスやラーメンを豪勢に食べていた。

勉強もできた。旺文社や進研ゼミのテストでは、高校でトップの点数を取った。

その彼が、2年生の途中からお弁当を持ってこなくなった。

「どうしたのだろう。」

皆、不思議がった。

お昼も、学生食堂に行かなくなった。つまり、一日ご飯を食べないのだ。

ダイエット・・・、なんて洒落た代物がなかった時代だったから、ボクらは心配した。

○○らクン。とても元気な男だったのに、そのうちあまり皆としゃべらなくなった。

静かに学校に来て、何も食べずに勉強をして、帰っていく。

大丈夫だろうか。

明らかに、彼の身の上に何かよくないことが起こっている。皆が気づいた頃、彼は学校を休みだした。

親父が商売に失敗した。


若林で見た空


その事実はあとから聞いた。それで彼は、高校で学び続けることが出来なくなったようだ。なんとも切なかった。

それほど世の中が不景気という頃ではなかったから、彼の家の事情は際立った。

その後、彼の足取りはわからなくなった。

もといた家にもいなくなったし、全くボクらの前に姿を現さなくなった。

それもまた事情だったのかもしれない。

今でも弁当を見ると、ボクは○○らクンを思い出す。

ねぇ、キミは。元気に暮らしているかい?