う~マンダム・・・。
ボクらは、そう言ってあごをさすった。
小学生の頃だった。
それは、朝に近いよる~な頃だったし、鼻血がブーな頃だった。
「う~マンダム」
日本全土の小学生が、そう言ってあごをさすった時代は、実に簡単明瞭な時代だった。
セミはシャーシャーシャーと鳴き、鈴虫はリンリンと鳴いた。
セミも、鈴虫も、小学生も、自分のやるべきことをしっかりと理解していた。
ボクは、あごをさすったり、右手を頭の上に、左手を腹の前に置き、シェーと叫んだりした。
大人は、黙々と働いた。日本を世界一の経済大国に押し上げるために、誰も文句を言わずに働いた。
土のにおいがプーンと香る時代だった。
だから、マンダムをつけたのかもしれない。
少なくとも、男も女も「シュシュー」と髪を小奇麗に整える今の時代の化粧品とは、その誕生から生い立ちまで、全く異なる文脈のものだったような気がする。