平成28年2月29日の日本経済新聞電子版に「特許の例外出願、公表後1年まで可能に 政府が改正案」の記事が掲載されていた。


 同記事によると、
 
「政府は環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意にあわせ、制度を変えるための特許法と商標法の改正案をまとめた。特許の出願前に一定の条件のもとで内容を公表できる期間について、従来の半年前から1年前に延ばす。発明者が成果を発表する機会を確保しつつ特許出願しやすくする。・・・」
とのこと。


 これについては、2月12日に開催された第7回産業構造審議会知的財産分科会の配布資料 TPP協定を担保するための特許法改正について(PDF:150KB)
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/tizai_bunkakai_07_paper/04.pdf
で既に公表されている。


 では何故ブログにしたかというと、「発明者が成果を発表する機会を確保しつつ特許出願しやすくする」の個所が気になったからである。


 平成23年9月 平成27年3月改訂の 特許庁 平成23年度改正法対応「発明の新規性喪失の例外規定を受けるための出願人の手引き」 http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/hatumei_reigai/tebiki.pdf  

の1頁に

 「この規定はあくまでも特許出願より前に公開された発明は特許を受けることができないという原則に対する例外規定であることに留意する必要があります。仮に出願前に公開した発明についてこの規定の適用を受けたとしても、例えば第三者が同じ発明について先に特許出願をしていた場合や先に公開していた場合には特許を受けることができませんので、可能な限り、早く出願することが重要です。
 また、海外への出願を予定している場合には各国の発明の新規性喪失の例外規定にも留意する必要があります。各国の国内法令によっては、自らが公開したことにより、その国において特許を受けることができなくなる可能性もありますので十分にご注意ください。 」

とリスクを挙げて注意喚起しているように、余程のことがない限り発明の新規性喪失の例外規定は受けてはいけない。


 ちなみに、平成23年改正法では、これまでの適用対象を試験の実施や刊行物発表など、限定列挙する方式を改め、「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して」と規定することにより、適用対象を拡大した。



 言いたかったことは、「発明の新規性喪失の例外期間(グレースピリオド)が、現行の公表等から6月を12月に延長する」としても、リスクがあり、発明者にとって決して得にならないことを再認識せよということである。


  「発明者が成果を発表する機会を確保しつつ特許出願しやすくする」に惑わされてはいけない。


 後で泣きを見ないように。