「健康診断」 | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。




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毎年恒例の健康診断の時期が来た。


と、言っても四十代の私はいつも別個にドック入りするため受けないのだけど、二十代、三十代の店のスタッフにとっては唯一の健康の目安なのだ。


おそらく、時計の修理というとあまり健康を害するイメージは湧かない方が多いと思われるが、実はそうでもない。


確かに、一般の時計メーカーなどでの分解・組立業務においては、管理がしっかりしているので特に問題はないだろうけど。


しかしパスタイムのように、時間の大半が金属部品の製作・加工に費やされる場合、はっきり言って結構体に悪い。


例えば、毎日くり返される旋盤工作。


それ自体には何も有害な要素がないが、使う刃物の材料には有害なものがある。


パスタイムでは、何種類かの特殊合金の刃物を使っているが、特に硬い材料に関しては普通の砥石では歯が立たないので、高速回転のダイアモンドのグラインダーを使う。

その際、超硬合金の刃物の削りカスを吸い込むことになるのだが、この中には有害物質であるコバルトが含まれている。


勿論、集塵の為の工夫はしているが、小指の爪の半分位の刃物の先端を削るために、顔を近づけない訳にはいかず、効果は限定的だ。

実際、仕事後に鼻の中を「グリグリ」すると、ティッシュが真っ黒になったりする(☆。☆)


もうひとつ、有害な可能性があるのは、時計の下洗いに使用しているベンジン。


最近では、ベンジンによる下洗いなどするところはかなり少なくなっているだろうが、場合によっては何十年、何百年もの汚れの付いているアンティーク時計の修理をしているパスタイムでは、避けては通れない部分なのだ。


実際これをするとしないとでは、自動洗浄器による洗浄後の綺麗さに明らかな差が出るから、、、なるべく吸い込まないように頑張って(?)いるのだが。


これは、どうやらわが国ではそれほど有害な物質と捉えられていないようだが、実際はどうなんだろ?


ある時、シカゴ郊外の自宅兼工房で時計のケース修理をしているボブの所に滞在していた時の話。


ボブ;  「ミニッツリピーターの懐中時計のケース修理を受けたんだけど、機械の方もオーバーホールしてくれって言ってんだ。悪いけど頼めないかな?」


私;  「もちろん、構わないよ。 一通り道具貸してもらえれば。」


ボブ; 「サンキュー、助かるよ。 いくら払えばいい?」


私;  「$1000ってとこだな。 けど、2週間も泊めてもらってんだから、金は要らないよ。そっちでいいようにしてよ」


というようなことで、早速取り掛かったところ、下洗い用のベンジンがない。


仕方なしに車を借りて近くのドラッグストアに走ったのだが、、。


私;  「ベンジンが欲しいんだけど。 時計の部品洗浄に使いたいんだ。」


店員;  「ご冗談でしょう? ベンジンなんて有害物質は扱ってません。」


私;   「日本じゃ普通に売ってんだけどなあ、、。」


店員;  「何かの間違いじゃないんですか? 少なくともこの国では強度の発がん性が証明されているので、一般の販売が禁止されています。トルエンじゃ駄目なんですか?」


私;    「\(゜□゜)/!!!」


ベンジンは猛毒だから販売禁止だが、トルエンはいくらでも買えるという。


これには、2重にたまげた!


常日頃、仕事に使っているベンジンにそれほどの発がん性が証明されている(?)という話しもだが、逆に、わが国で厳しく取り締まれている純度100%のトルエンがドラッグストアで普通に売っている驚愕の事実。


シンナー少年が聞いたら泣いて喜ぶような話しではないか!!(笑い事ではありませんが、、。)



それ以来、機械の下洗いの際、出来る限り顔を離すと同時に息をこらえるようにするようになったのは言うまでもない。


それでも、、もしかしたら、癌になるかもしれないと怯えながらも、、、今日も皆ベンジンの下洗いを続けているのである((*^o^*)/~)


検査結果、大丈夫かなー、、、ゴホゴホッ。