労働保険審査制度は前置主義だけれども | 就業規則作成の社会保険労務士越山優のブログ~地球より愛を込めて~

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上司の嫌がらせが原因で自殺したのに遺族補償年金(労災給付)の不支給を決定した(原処分)として、遺族が労働保険審査会に再審査請求をしていた事案が報道されていました。
同審査会は、労災と認める決定つまり原処分の取り消しを裁決したようです。

労災給付の支給・不支給について不服がある場合は、審査請求前置主義により原則としてまずは「労働者災害補償保険審査官」に審査請求をします。
同審査官の決定に不服がある場合は、「労働保険審査会」に再審査請求をします。
この労働保険審査会の裁決が、今回の報道ですね。

労働保険審査会の裁決に不服がある場合は訴訟になります。
労災保険法(労働者災害補償保険法)はとても複雑だし迅速性が求められるため、裁判所に持ち込む前に専門機関である審査官や審査会で検討する方が合理的だとの考え方から、このような前置主義がとられています。

労働保険審査制度について簡単な説明を書きましたが、前置すべきなのは本来は会社の対策です。
今回の事案のような悲劇が起こる前に、上司(つまり会社)は防止策を検討すべきなのです。
「問題が発生した場合の損失を防止するため」はもちろんとして、そもそも「こんな職場環境を放置していて、その企業は高い生産性を継続できるのか」との自問を先に行う必要がありますね。