「過度な消費主義から抜け出し、もっと余暇を持ち、スケジュールのバランスをとり、もっとゆっくりしたペースで生活し、子どもともっと多くの時間を過ごし、もっと意義のある仕事をし、彼らのもっとも深い価値観にまさに合った日々を過ごすことを選んでいる」
(『浪費するアメリカ人』ジュリエット・B・ショア著 2000年 岩波書店 森岡孝二訳より抜粋)
“自分なりの豊かさ”に見合う生業を見つけて“豊かに”暮らしているのがダウンシフターズ・・・
ちょうど一年前
著者の方が出演したラジオ番組を聞いた。
その自由さ加減に、羨ましさを隠せなかったことを覚えてる。
そして本を手にしたのは年明けだった
「減速して生きる ダウンシフターズ」・・・帯の村上龍氏のコメントを見ても、自分が読む本じゃないように感じた。そもそも(収入)少ないのにもっと落として暮らせるかよ、と内心ツッコミもした。それでも気になって仕方なく、買った。
すぐに読んだけど、アタマの中で整理できなくて、結構ほったらかしにして
著者はかつて大手小売店で働いていて
売上をあげることを常に求められ走り続けることに不安と葛藤を覚え、悩みながらも離職を決める。
旅をしながら自分の気持ちを棚卸しして、飲食店のバイトを掛け持ちしながら「したくないこと」と「したいこと」を学び、独立して憧れていた小さなBARのオヤジになる・・・
と、それだけならさして興味持たないよね・・・
なのに「したくないこと」と「したいこと」の一つ一つが、BARを開店するまでそして開店してからの著者の選択の一つ一つが
いちいち引っ掛かるというか
3.11があって
何もかもがグラグラ揺れて落ちて流されてひっくり返って
緊急地震速報のアナウンスが鳴り続けガタガタと揺れ続ける中で
泣いて震えて怒って怯えて笑って食べて眠れずに眠って
ライフラインはストップし食べ物を求めて行列に並んで、仕事なんてそっちのけで
食べなきゃ生きていけない
というごく当たり前のことが最優先になった
なのに、家の中で食べ物を置いている場所は冷蔵庫・・・冷蔵(冷凍)保存しなきゃもたないものばかり買ってたわけ。
近いうちに大きな地震が来る可能性何%というニュースを聞いていながら、いつでも近くのコンビニへ行けばすぐに食べられるものが買える
という事実に甘えていた
てか、何もかも「買わなきゃ」食べられない、食事にありつけないという現実!
実際、3.11の後殆どの大手スーパー、コンビニ、百貨店、チェーンの飲食店は長い間閉まったまま
早くに営業再開して炊き出ししてくれたのは皆個人営業のトコだったと思う。職場近くのコンビニも同じで、その裏通りの米屋さんにずいぶん助けられた。
後でわかった
物流が戻らないから
店に並べるものがないんだってこと
自社工場が被災したから
前と同じものが並ばないんだってこと
そして、早くから営業再開して私たちを助けてくれた個人営業のお店は、そんな大きなルートは持たない代わりに、それなりに融通もきいたんだってこと
この本のことを結構ほったらかしにしながらも気になり続けていたのは
答えが見えそうな気がしたから。例えば“巨大市場”から降りる
私はなるべく巨大資本のお店で買い物も外食もしないようにしています。自動販売機、コンビニ、チェーンの飲食店、大型スーパー、百貨店などなど。理由は三つ。
① 私が払ったお金が、どう流れてゆくか見えないから
② 私が買っても買わなくても、大企業には大きな影響はないから
③ マニュアルで「アリガトウゴザイマス」という店員さんに、感じるものがないから
(中略)私が払ったわずかなお金は、小さなビジネスにとっては大きな意味を持ちます。そうだとしたら、経営主はお客様にマニュアル的な棒読みで目も合わせずに、「アリガトウゴザイマス」とは言わないでしょう
揺れが落ち着いてから、少しでも地元にお金を落としたいと、機会があれば地元のお店で買い物をしてた。
だけど、地元のお店で用が足せないことも多く、泣く泣くネットショッピングしたりもした。
“巨大資本”の大型スーパーや百貨店でも「ここで働く地元のひと達の給料にはなるよね」と半ば自分に言い聞かせて買い物したりもした。
自販機やコンビニは利用しないよう工夫もできるし、飲食店も選べば済む(ないなら自炊という選択肢もある)が、大型スーパーや百貨店・・・つまり個人営業の店を探しても見つからない、食料品や衣料品、家具家電などは、頑張って選んでみても相変わらず“巨大資本”に巻かれてる気がするんだよね・・・
大型店が出るから、地元の個人商店は潰れてくんだし、個人商店も何気にチェーン店だったりするし・・・
震災以前から関心があり、利用しているフェアトレード。理由は
誰が作ったものかわかるから
オーガニックコットンを選ぶ=綿栽培に農薬を使わないことで、働いているひと達(子どもが殆ど)を農薬の害から守れる・高い農薬を買えなくて自殺する農家を救えるから
・・・買い物は意思表示もできるまさに“選ぶ”ことなんだと思った。
選びたい
なのに選択肢がない?
追われ続け朝から晩まで仕事してたら
帰ってからご飯作って食べる余裕もない
せめて体に良いもの選びたいけど
立ち寄れるのはコンビニくらい
休みも仕事のこと考えて心も体も休まらない
もっともっと稼ぎ続けなきゃいけない?いくら収入が増えたって、安心なんかできない
・・・著者もビジネスパーソンで“システム”の中にいた時に感じていたのだろうパラドックス。
だけどね、私世界一周する気ないし、お店持ちたいわけでもない。雇われて働くことは受け入れてるつもりで、ただ
しっくりこないのだ。
・・・あの揺れで、価値観すらひっくり返って
勝手に、当てずっぽうに信じていた未来はどこにもないんだって
もっと突っ込んでいえば
このまま頑張っていればそれなりに平和な未来がくると漠然とした希望を勝手に描いてその上に座って安穏としてた
・・・あの時、食物の何一つ作れない自分は、空っぽのショーケースの前でオロオロしてたくせに
本の中で語られる
「システムから降りる」という選択
「稼がない自由」というキーワード
著者は言う
ダウンシフターズは、必然的な経済縮小の中で、充足した働き方と暮らし方になります。大きなシステムから降りることは、自分の内側に向かい合うこと。
(中略)今、ひきこもっている人に、無職で苦しんでいる人に、意図せず低所得になってしまった人に、次の文明にはダウンシフターズこそが必要とされることを伝えたくて、この本を書きました。
マスコミ含め、周りに溢れかえる文字や声や画は
一番大事なことには器用に目隠ししたままでいて
もっともらしい風で無責任で不安を煽る
ライフラインが戻り町に人が戻ってきてから
よく聞くのが
「フツー(の暮らし)がいかに大切かわかった」
そう口にする人の気持ちはわかる。ただ
フツーって何?
この不安を抱えたまま生きてくこと?
あの時と同じように、恐怖と不安に怯えながら
なんとか自分を奮い起たせていくだけじゃ、いつか折れてしまいそうな気がするんだ・・・
ココで
スピードを落として
私に見える景色はどんなものなんだろう。
私にも“生業”なんて、持てるのかな。
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たまにはTSUKIでも眺めましょ
----------追記
自販機は見向きもしなくなった。
毎日のごはんを調達するためにコンビニへ足を運ぶこともなくなり。
買い出しは自然食品店。スーパーへは行くけど加工食品は極力買わない。
飲食店も「ここチェーン店?」と気にするようになり。
より地元産、より地元店。
すべてをうまく選べるかっていうと難しいけど。
いまの希望は
狭くていいから田んぼのオーナーになって週末だけでも田んぼに足つっこみつつ
仕事はルーティンでも良いのでより短い時間で日中だけ働きたいな。
日の出前に起きて
朝日を眺めて目を覚ましたい。
