私のピアノ生徒の中でも一番の年長さんがエドモンド。
今、日本でいうところの、高三。中国系アメリカ人で、
学校の授業はほぼ取り終え、数ヶ月前に大学への願書手続きなど、
すべて終えた所。あとは次々に届くであろう(何校も受けてるので)
大学からの合格通知を待つのみ、といった感じ。
滑り止めにうけたいくつかの大学からの合格通知はすでに来ている。
第一志望、第二志望の大学からの通知がまだなので、
心配でたまらない、落ち着かない、という。
予定としては、四月中には届くらしい。
”やることはすべてやったんだから、リラックスすれば?”
というのだが、性分としてそれができないらしい。
そして、大胆にもわたしの面前で、”ピアノやだな~”
とぼやく。わるびれた様子もない。思った事がすぐ口にでてしまう
性格のようだ。
もともと、おとなしく座ってレッスンを受けるような習い事には
不向きで、お母様の望みで、いやいやながらピアノを習ってきたけど、
進学を機に、いいかげんやめたいのだとか。
でも、お母様から、ピアノの技術をキープするため、大学入学の
直前までなんとかレッスンを続けるようにとのおたっし。
もちろんレッスン代もお母様が出されている。
”そんなにいやだったら、おかあさんと交渉すれば”
と言ったのだが、無理らしい。
かくして、彼は、毎週わたしのレッスンに無遅刻、
無欠席で来てはいるが、その実態はほとんどわたしと
世間話をして帰って行く、ということに相成った。
(お母様にはないしょ。ないしょ。。)
私の方も、長きにわたる受験勉強から解放され、なんだか
虚脱状態のようになっている彼に、無理強いして
練習させる気にもなれなかったし。
案外、お母さん思いのいい子なのかもしれない。
彼の話から察するに、友達も多そうだ。
お調子者のような所もあるが、明るくて人なつこくて、
憎めないキャラ。
この間の”レッスン”では、”もう数ヶ月で長年の友達とも別れてしまう。
さみしい、みんなと卒業旅行行きたいな、パリがいいや”
とか言っていた。
わたしの出身校を聞いてきたので、それに答えると、
”すげ!僕のドリームスクールだよ。第一志望なんだ。”
と、それ以来わたしの母校について聞いてくるようになった。
”在学中、ヒップスターだったんじゃない?”
とまで言った。(おしゃれで、いけてる人、というニュアンスか)
実際、卒業生の中には、ハリウッドや音楽界で有名な人も
いるので、私の母校をそういう風なイメージでみているひとも
多いようだが、わたしはきわめてジミーな学生生活を送った。
もちろん、ヒップスターでもなかった。
学部やスクールによってオフィスもまったく異なるし、
校風も違うので、彼に先輩ずらしてアドバイスするような
ことも出来ない。(わたしは音楽専攻、かれは
ビジネスを勉強したいらしい。)
或る日の”レッスン”で、彼が、わたしに知人がやってる
”おにぎりカフェ”のようなお店の事を紹介してきた。
行ってみろと、熱心にすすめる。聞き慣れない名前なので、聞くと、
彼とおなじく、中国系の経営者らしい。以前、経営者の女性の、
お子さんの家庭教師をしていて知り合ったらしい。
彼のような学生が気楽に来れるような、お手頃価格の
カフェだという。おにぎりなど以外に、ヤキソバもあると言った。
ド庶民の私のテイストにぴったりはまる感じだ、
近いうち行ってみようではないか。