北村恒明さんの‘ちぢれ弁’
‘暖地桜桃’
庭のサクランボが色づいてきました。
サクランボと言っても宮崎ではいわゆる西洋系の‘ナポレオン’や‘高砂’などの品種は高温多湿の為、まず路地では育ちません。
家庭果樹と育ててられているのはこのシナミザクラ系のものばかり。
「あんなものはサクランボじゃない」と東北の産地からは言われますが、宮崎の気候ではまず栽培は無理な話ですよ。
そう言われて悔しいので、宮崎でも育つような西洋サクランボを選抜すべくここ数年種を播き続けています。
ところが、発芽はするもののその後がうまく育たない。性質と言うものはなかなか変えられるものじゃはありません。
だからと言って諦めたら何も進展しない。まあ、播き続ければ育つものも出てくるでしょう。そんな気の長い話でやってます。
サクランボ、色付くのが待ち切れずに食べてみたらちと酸っぱかったです。あと2、3日待つことといたしましょう。
さて、“焼け”繋がりで北村恒明さんのビオラをご紹介します。
本当は作品に合わせて紹介したかったのですが、こんなに遅くなってしまいました。
(過去の関連ブログはこちら⇒http://ameblo.jp/pansy-tane/entry-10477465179.html )
2.5cmほどのビオラでパープル&ホワイト、パープル&イエローの2タイプがあります。
上弁と側弁の一部が焼けます。焼け方は‘ドリームワンダー’よりも‘ツタンカーメン’に似ています。
小さい花の為、見逃しやすい変異ですが、大事なのはこれに気付く目を持っているかどうか。作品展でもこれに気付かれる方、そうでない方といらっしゃいました。
よくぞ北村さんこれに気付かれて拾い上げられましたね。さすがです(笑)。
花壇ではなくて鉢に植えて目線の高さに置くと、ぐっと変わったその様が見えます。花に顔が近付きます。その細かな芸に目が行きますよ。
以上は作品展当時の様子。そして、以下は現在の様子。
こんなに大きくなりました。花もいっぱい種もいっぱい付いています。上弁、側弁の一部、唇弁のアゴの部分が焼けています。
焼け具合によって花弁が撚れます。フリルとはまた違った印象。ぐっと日本的、この歪みがいいですねえ。
暖かくなっても焼けに変化はありません。きちんと焼けています。むしろ咲き始めよりもよく焼けているようです。
いぶし銀を塗ったような、最近の宮崎で言えば灰が降ったような感じ。うまく表現できないけれどいいなあって感じます。これが日本人の感性なのでしょう。
よくないと本来は捨てられる形質。それを拾い上げて利用するブリーダーの感性。またそれを美しいと感じる日本人の美意識。その文化レベルの高さを再認識します。
この花を見ると花の形質で捨てられるものはないんじゃないかって気がします。要はそれをどうやって利用するか、利用すべき道を見つけ出すかでしょう。
すでに‘ドリームワンダー’、‘ツタンカーメン’など大小さまざまな焼けの花が出現しました。これらを元に、そして焼けの形質が認知されたことによりこれからいろんな花が出現するでしょう。
もっとしなやかに、そしてしたたかに日本独自のパンジー・ビオラの育種は進みます。