備忘録をかねて,地質時代の名前の由来をまとめておきたいと思います。
なお,地質時代に関しては,以下の過去の記事も参考に。
・"地質年表"はお持ちですか(2012年4月4日のブログ)
・「時代」と「年代」はちがうのです(2012年4月18日のブログ)
・「古い」は下! 地質年表の書き方のススメ(2012年5月1日のブログ)
カンブリア紀やジュラ紀,白亜紀など,地質時代にはさまざまな名称が与えられています。
こうした名前には必ず由来があるものです。
今回は,カンブリア紀以降の地質時代の名前の由来をまとめてみます。
・カンブリア紀(Cambrian)
地質学発祥の地,イギリスの古い地名に由来します。
ウェールズの北部はかつて「Cumbria」と呼ばれていました。
・オルドビス紀(Ordovician)
こちらもイギリスの古い部族名が元です。
ケルト人部族「Ordovices」から。
・シルル紀(Silurian)
こちらもイギリスから。
ウェールズに住んでいた部族「Silures」が元になっています。
・デボン紀(Devonian)
こちらもイギリスです。
上の三つの地質時代のように,古い地名や部族ではなく,そのまま現代名を使っています。
イングランド南西部,コーンウォール半島に「デボン(Devon)」という名の州があります。
・石炭紀(Carboniferous)
これは漢字の意味のママです。「石炭を産出する地層ができた時代」という意味です。
産業革命がおきたとき,地質学はそのエネルギー源である石炭の調査に必要なものでした。その石炭探査を進めながら,地質時代が決まっていきます。
この「石炭紀」は,数ある地質時代の中で,最も先に設定されました。
ちょっとコアな方々への余談として書いておくと,「石炭紀」の設定は,かの『地質学原理』に8年先行します。
・ペルム紀(Permian)
こちらは,ロシアの地名から。
ウラル山脈の西側にペルム(あるいはペルミ:Perm)という地名があります。
この時代,かつては日本では「二畳紀」とよばれていたこともありました。それは,ヨーロッパでこの時代の地層が大きく二つにわけられることに由来しています。
近年では,「二畳紀」を使わずに,「ペルム紀」とする例が多いようです。
・三畳紀(Triassic)
南ドイツの特徴的な地層が,その名の由来です。
この時代の地層が,大きく三つに区分されます。
・ジュラ紀(Jurassic)
フランスとスイスの国境となっている「ジュラ山脈」に由来します。
・白亜紀(Cretaceous)
これはフランスの「白亜の地層」に由来します。
ドーバー海峡をみると真っ白な綺麗な崖がつづいています。
この白亜(creta)の壁をつくる地層にちなんでいます。
・古第三紀(Paleogene)と新第三紀(Neogene)
かつて,地質時代は今日よりももっとシンプルだと考えられていました。
その名残が,この時代名です。「第三紀」とは,「3番目の時代」の意。
地質時代が合計四つに区分されるとみなされていたときのものです。
現在では,単に第三紀とするのではなく,古第三紀,新第三紀と二分割して表記することが主流となっています。
・第四紀(Quaternary)
こちらも,かつての名残。もっとシンプルだと考えられていたときの「4番目の時代」という意味です。
たとえば地学で大学を受験する高校生にとって,地質時代が全部番号だったら,こんなに覚えやすい事はないでしょう。
でも,こうしてみると,先人たちがいろいろと考え,趣向を凝らしていたのがよくわかります。味がありますよね。統一性がないのがアレですが(;^_^A
なお,本記事は古生物学事典 第2版と生命と地球の進化アトラス (1),〈2〉,〈3〉を参考資料としました。
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