メディア関係者様向け:“地質年表”はお持ちですか | 化石の日々

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オフィス ジオパレオント代表のサイエンスライター 土屋健の公式ブログです。
化石に関する話題,ときどき地球科学,その他雑多な話題を書いていきます。

たとえば,恐竜の絶滅を6400万年前と表記したり,
“人類の時代”である第四紀のはじまりを,181万年前と表記したり……。

その数値は古いです。
ご注意を。

でも,日本語の,とくに紙媒体で最新の数値を扱っているものってなかなかないですよね。信頼のおける書籍となるとなおさら。

そこで今回は,私がいつも使用している資料をご紹介します。
それがこちらでダウンロードできます(無料)↓

このリンク先の一番上にある INTERNATIONAL STRATIGRAPHIC CHART がおすすめです。

今回の記事は,まずこれがなくてはじまりませんので,ぜひダウンロードしてください。
ちなみに,これをすでにお持ちの方には,今回の記事は無用かと思います。

これは,International Commission on Stratigraphy(国際層序委員会)が発行しているもので,最新の国際的な地質年表です。
私はこれを机の脇に貼って,つねに年代を確認しながら記事を書いています。

当然のごとく,英語の資料です(*゚ー゚)ゞ
……ので,ここに一般メディアで必要そうなところだけ,邦訳を載せておきます。

いくつかカラムが並んでいますが,一般メディアにとってまず重要なのは左から二つ目の「Erathem Era」でしょう。ちなみに,「Erathem Era」はこういう熟語ではなく「Erathem(界)」と,「Era(代)」の二つの単語です。

ここに並ぶ,三つの単語がまず頻出しますね。
Cenozoic:新生代
Mesozoic:中生代
Paleozoic:古生代

次に「System Period」。
ここは合計で13の単語を覚える必要があります。
Quaternary:第四紀
Neogene:新第三紀
Paleogene:古第三紀
Cretaceous:白亜紀
Jurassic:ジュラ紀
Triassic:三畳紀
Permian:ペルム紀
Carboniferous:石炭紀(※)
Devonian:デボン紀
Silurian:シルル紀
Ordovician:オルドビス紀
Cambrian:カンブリア紀
Ediacaran:エディアカラ紀

なお,石炭紀のところだけ,MissipianとPensylcvanianの二つにわかれています。これはそれぞれミシシッピ紀,ペンシルヴァニア紀というもので,北米でのみ通用する区分です。

新生代にかぎっては,次の「Series Epoch」も覚えておきたいところです。
Holocene:完新世
Pleistocene:更新世
Pliocene:鮮新世
Miocene:中新世
Oligocene:漸新世
Eocene:始新世
Paleocene:暁新世

UpperとかMiddle,Lowerというのは,直訳すれば上部,中部,下部になります。これは地層の重なりを意識したものですが,一般には馴染みの薄い表現になるので,順に後期,中期,前期と表記すれば良いかと思います。

こうした「○○代□□紀(△△世)」というのが,いわゆる地質時代です。
で,この表の「Age Ma」というのが,地質年代です。

「Ma」というのは,「Mega-annum」の略です。
「なんのこっちゃー」かもしれませんが,ようは「1Ma=100万年前」と覚えておいていただければ問題ないと思います。
この単位が示しているように,地質学者や古生物学者は,100万年,1000万年スケールで物事を考えます。
取材をしていてよく言われるのが,「時間の感覚の差」です。これがなかなか。

さて,たとえば,白亜紀(Cretaceous)と古第三紀(Paleogene)の境界をみると,「65.5±0.3」という数字があると思います。
一般メディアの立場からいえば,とりあえずこの±0.3はスルーして,65.5に注目します。
これは65.5Maですね。
1Ma=100万年前なので,これは6550万年前となるわけです。

ところで,「K/T境界」という言葉を聞いた事がありませんか?
恐竜の絶滅にともなってしばしば使われてきた言葉です。
「恐竜の絶滅……というと中生代白亜紀末だから」と,この年表でそのあたりを探しても,どこにも「K」も「T」もありません(;^_^A
では,「K」と「T」はどこからきたのでしょうか?
まず,白亜紀の本来の英語表記である「Cretaceous」。その頭文字の「C」を見ると,この地質年代表には,やたら頻出していることがわかります。Cenozoic(新生代)だったり,Carboniferous(石炭紀)だったり,Cambrian(カンブリア紀)だったり。
いささか紛らわしい。
そこで,境界名では英語ではなくドイツ語で白亜紀を意味でする「Kreide」から「K」をとって,白亜紀を指すのです。
では,「T」は?
これは,「Tertiary」の「T」です。
最近まで「Teritiary(第三紀)」という時代区分が存在しました。古第三紀と新第三紀をあわせて「第三紀」とよんでいました。
しかし今では,この時代区分は正式な用語としては使われていません。
そこで,「K/T境界」という言葉も使わずに,古第三紀の「Paleogene」から「P」と「g」をとって,「K/Pg境界」と呼ぶようになっています。

注意しなくてはいけないのは,研究の進展によってこの地質年代表はしばしば変更されます。
それは年代値であったり,時代名が消えたり,再び現れたり,新設されたりします。
たとえば,「第三紀」という時代名は消えましたし,「第四紀」は一時期使用されていませんでしたが復活しました。「エディアカラ紀」は21世紀になってから新設されたもので,私が学生のころにはありませんでした。

記事を書く際に何気なく使っている時代名や年代でしょうが,ここは常に情報収集をしていた方がよさそうです。



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もちろんこちらは最新の地質年代表に沿ってつくっています
( ̄▽+ ̄*)
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