と思ったので、調査のために買ってきた。

■背景
【盗作】 電撃文庫 「俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長」 がファミ通文庫 「バカとテストと召喚獣」を間違いなくパクってる!?という記事を発見したのがきっかけ。

俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 (電撃文庫)/哀川 譲


読了後の感想としては、個人的には白という結果である。
以下、つらつらと書き綴ってみる。

■持論
盗作というのは、とてもセンシティブな問題である。
検証するのは勿論大事なことだけど、何でもかんでも認定してればいい訳ではない。
漫画のトレース問題とかと同じでね。

・竹林明秀
例えば、超先生こと青紫も痕のおまけシナリオで色々と騒がれた。
でも、元ネタを明記していればあれ程の騒ぎにはならなかっただろう。
はじめから、何らかのオマージュであったことは謳っていたのだから。
言ってしまえば、元ネタがマイナー過ぎたんだ。

・末次由紀
スラムダンクのトレースで一時期話題に上った人。
これは作品の打ち切りと、出版物の回収という、個人的には信じられない結末を迎えた。
木を見て森を見ないの典型。
「神は細部に宿る」とは俺も思うけど、でも細部くらい色々な遊び心を出してもいいじゃない。
メインシナリオに関係の薄いバスケの描写について、好きと明言している作品の1シーンを持ってくるということは、それこそがオマージュである証拠ではないか。

・三枝零一
将軍様の代表作にして処女作、ウィザーズ・ブレインについても盗作騒動があがった。
Kanonをやっていた人間としては、他人に指摘されるまでもなく「栞だー」って思ったものである。
この作品についても「細部」の遊び心は問題ではない。
氷河に閉ざされた地球、i-ブレインという魔法使いの前提条件。設定や世界観が申し分なく、そこの恋愛要素の1シーンなど、瑣末な部分に茶々を入れるなど無粋としかいいようがない。
なお、将軍様については、2巻で鍵っ子宣言することにより、確信犯とされて終息した。
この結末は色々な意味で幸せであったと思う。
ちなみに私は久弥信者かつ折戸信者である。

・結論
人間誰しも好きなものからの影響が強いはず。
むしろ、影響を与えないようなどうでもいい作品なんて要らないよね。そうだよね、仙水伊鶴?

CLAMPのお茶のシミまでトレースした馬鹿みたいに、本当に駄目な例も勿論あるんだけど、そういうのも含めて、これはアリなのか、ナシなのか、自分で判断したい、いや、する必要があるのだと考えている。

■所感
さて、些か前置きが長くなったが、「俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長」のパクリ騒動を含めた所感である。
盛大にネタバレを含むので、これから買う予定の人は読み終わってから読むことを推奨する。

先に、上のエントリで挙がっていた作品である「バカとテストと召喚獣」と「めだかボックス」はどちらも単行本を有しているため、すべてに目を通していることを述べておきたいと思う。

そして、このエントリの目的はこの作品を贔屓目でみたいということではない(そんなメリットもないしね)
単純にこの歳にもなっても、ラノベに噛り付いている人間の矜持として、この検証を行っているということを主張したいだけである。
むしろ、この騒動がなければ買うこともなかったろう。発売日にスルーしてたんだから。
ウィズブレの新刊が出た時点で、それしか目に入らなくても当然だろう(とかゆー

・概要
この作品は、若干ギャグ寄りのラブコメ+ストーリーものである。
バカテスと比べるとバカテスの方がギャグ寄りで、本作は全体的に淡白ではある。

・キャラクター
ヒロインが「伏城野アリス」(ふしぎのありす)、主人公が「兎沢江太郎」(とざわこうたろう)である。
まず、この時点で「不思議の国のアリス」をパクったんじゃねーの?と言いたくなった人間はお引き取りいただきたい。
逆に、こういう名前をキャラクターにつけてしまうという点で、どういう軽さなのかをご理解いただきたい。
一部のコメントにもあったが、ライトノベルとは結局ライトノベルという枠組みでしかないのである。
その中でいえば、このノリは中庸と言えるだろう。

・イラスト
最近でこそイラストに騙されることは少なくなった(自制するようになった)が、以前だったらイラストに騙されて買っていてもおかしくないレベルには可愛い。最近のラノベはその辺がすごいよね。
アクセル・ワールドも、イラストに騙されて買っていれば、もっと早く知ることができたろうに。
himapoは夜叉姫だけ描いてろ、もとい貴方が描く夜叉姫がないと生きていけません。

うん、そろそろ、このエントリを書いている人間の人となりが何となく掴めたことと思う。

・プロット
世界観。現代設定の学園モノでいて人外(魔族とかの類い)と共存してる。
設定はありがちに見えるが意外とこの組み合わせはないと思う。

例えば、ロザリオとバンパイアは共生ではなく、紛れ込んでるケース。
まじしゃんず・あかでみいとかも魔法世界なので、常人という括りとしては弱い。
現代の学園で「異能と常人」というと、絶チルやとある科学の超電磁砲みたいな超能力設定が一般的であろう。

・物語の展開
目隠し将棋(将棋盤と駒を使わず、双方脳内で対局すること)が得意の主人公。
ヒロインは、めだかボックスの黒神めだかクラスの天才なのだが、目隠し将棋だけは主人公に勝てないという設定。
要は戦略家ですよ、学校の成績は平凡でも、軍師に成れちゃうかもねアピールですよ。
で、主人公の発案通り事が進み、ドタバタとしつつも解決しちゃうという流れ。

まぁ、鋼鉄の白兎騎士団のガブリエラと比べたらカワイイもんですけど。
ヒロインもめだかに比べたら、突き抜けっぷりが足りない。学校一の天才と世界一の天才くらい違ってるかな。印象的に。
個人的には突き抜けてる方が好き。イリヤの空でも、学園祭(旭日祭)とか尋常じゃないスケールが楽しめていいなと思ったし。で、ミナミノミナミノの2巻はまだかね?

とまぁ、私の好みはさておいて。
実際にそんな変人ばかりでも困るので、比較的ライトな層を狙うのであれば、これくらいが丁度いいのかも知れない。

・ラブコメ
ヒロインとの関係は、ボーイ・ミーツ・ガールよりも扱いが難しい幼なじみ。
しかし、ベタ過ぎる。王道過ぎる。こだわりが感じられない。
件の盗作騒ぎは、ここで雄二と翔子の関係を彷彿とさせるというもの。
まぁ、そうなんだけど、雄二と翔子の設定もそもそもベタ過ぎるので、些末事かなぁと思う。

・その他雑感
表現が一部稚拙である。
人外という表現、魔族っぽい人たちを人類は受け入れることができるの?とか、赤子の手を捻るが如く人類を殺せそうな力を持った人外と力を持たない人間が共に暮すなら相応の舞台設定が必要だなぁとか、某年の金賞受賞作品よりはマシなんだけど、もうちょっとガンバッテ欲しいねって感じた。

・総論
70点。

ヒロインは超人ではなく、ただの天才。めだかボックスも意識してそうだけど、あからさまに被せてはいない。むしろ薄くしている。
主人公も雄二ほど濃くない。相当に淡白。
ロジックを積み重ねて展開を進めるのは好感が持てるが、積み重ねる層がちょっと薄いのが残念。

等々、盗作騒ぎがなければ寧ろ買ってなかったというのは、ある意味で正解の凡作かなぁと。
騒動がなければ、わざわざ労力を割いてこれだけ長々とレビューも書いてないよね。
普通に面白いので読んだ時間を返せとは思わないけど、別の作品を買っても後悔しないかなぁと。

盗作騒ぎ自体については、7:3で白。瑣末部分なので、好きな作品などから引っ張ってきても許容範囲。
プロットがそこそこできているので、気にならないレベル。

ラブコメとしての比率はそこまで大事ではないし、そもそもラブコメ部分の展開は失敗していると感じる。
こんなに簡単に鏡美にフラグが立つ理由がわからん。種族の壁を超えるにはちゃんと下地となるエピソードくらい用意しろと。

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※2010.06.01 追記
念のため、補足エントリを記載した。
http://ameblo.jp/palchan-net/entry-10551182807.html
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