『線路は想い出に繋がってる。今でも きみは咲いているだろう』
──グレープ(さだまさし)「初恋駅」より

 


 

2025年5月14日、さだまさしさんの新アルバム「生命の樹~Tree of Life」。
その中の一曲「初恋駅」に耳を傾けていたとき、
ふと、あのときの夏の記憶が、風に吹かれるように蘇ってきた。

それは、

1977年。高校2年の夏。

親友の”Y善”君の田舎、石川県羽咋へふたり旅。

夜行列車 急行「越前」号に揺られて…

初めて見る日本海は、驚くほど澄んでいた。

湘南の海しか知らなかったボクは「底が見える…!」と感動が恐怖を越えた。
けれど、その透きとおる海の底で、もぞもぞと動く“ウニ”には恐怖を感じた(笑)
 

また、別の日。
旧国鉄・七尾線の無人の とある駅で下車し、
線路の上を歩いて、次の駅まで向かった。

耳を線路にあて、遠くの音を探りながら
(今では考えられないけど、当時は
 耳を線路にあてて「列車来るか?」なんて確かめながら)、 
二人で笑いながら…
炎天下の中を、ゆるやかに(けど、恐る恐る)まっすぐに歩いたっけ。
 

今思えば、あの線路も、
“想い出に繋がる”道だったのかもしれない。

 

 

「初恋駅」の歌詞が、そのままボクの記憶に寄り添ってくる。
ウニが うじゃうじゃ いた海も、汗に滲むTシャツも、踏みしめた線路の音も、
全部が、今のボクの中に咲き続けている。
 

恋だったかはわからない。
けれど、人生で初めて「大切にしまっておきたい」と思った旅。

そのときの記憶こそが あの駅が、本当の「初恋駅」だったのかもしれない。

そして、あの夏のボクは…
(日本海の)“透明な海”の底に揺れていた
名前のない感情の花ように、今もボクの心の中で咲いている──

たいせつな記憶は、きっとこれからも静かに咲きつづけるだろう。

線路の先に、変わらず続いている景色のように。

人生で初めて、忘れたくないと心から思った旅。
グレープの音楽は、記憶の鍵をそっと回してくれる──
そんなことを改めて思った梅雨明け真近の朝でした。