◆『フランケンシュタイン』忠武アートホール

行ってきましたフランケン。

正直なところ、秋ごろまでほとんど韓国語がわからない状態だった私には韓国オリジナルミュージカルというものはとてつもなく敷居が高く、夏にJCSにハマるまではそんなものに挑戦しようという気は微塵もありませんでした。しかし気になる方々がキャスティングされたことと、オリジナルミュージカルにも関わらず初演で異様な盛り上がりを見せていたらしいことを知って予習に取りかかったところ、ふと足を取られ、我に返った時にはどっぷりフランケン沼に沈みこんでおりました。

ていうか今もまだ自分を取り戻せていない。最初のトレーラー公開あたりまでは意識はあったはずなんだけどな…このミュージカル完全にある層を狙ってきているけど、そうやすやすと釣られてなるものかフフンと鼻を鳴らしたところまでは覚えてるんですけど…10月末のガラコンサートの映像を観てからの記憶がないですね。

とにかく、そこからは結構な時間をかけてこのミュージカルを観るための予習をしました。外国語のミュージカルを観る前にはいつもそれなりに準備をしてから行くのですが、ここまでがっつりやったのは初めてです。まずは歌詞を調べて、自分で訳して、大事な曲は丸覚えして、ってここまでは通常どおりなんですけど、やってるうちにどうしても会話部分が知りたくなって、台詞がわからないと話をちゃんと理解することができないし、わからない状態で舞台を観たところで聞き取れないし、だけどスクリプトが落ちているはずもなく…ということで慣れないハングルでツイッター&WEB検索しまくって、鬼の形相で台詞を拾い集めて、それらを繋ぎあわせるという地道な作業を繰り返し、フルスクリプトを完成させるという執念をみせました。結果、この2カ月でかなり聞き取れる単語が増えました。まぁこれは情報量の多い超人気ミュージカルだからこそできたことで、今後他の作品ではできないだろうと思いますが。

そんな感じで、これ以上にないというくらいに期待値を上げて観に行ったこの演目。どんなにハードルを上げてもそれを上回るものを見せてくれると思えるものがあるの、幸せだなー。観る前も観たあともずっと幸せだなー。そういう舞台にたくさん出会えた年末年始でしたよ。フランケン以外の演目のこともまた書きたい。

◆◆◆

で、年明けから連続3アンリ。

◆1月1日マチネ


[ビクター/ジャック]チョン・ドンソク
[アンリ/怪物]パク・ウンテ
[エレン/エバ]イ・ヘギョン
[ジュリア/カトリーヌ]アン・シハ

めちゃくちゃ歌の上手いビクターとめちゃくちゃ歌の上手いアンリのドンウンペア。腹黒あざとい(イメージ)ドンソクくんと天然あざとい(イメージ)ウンテさんの絡みは女子をホイホイ釣り上げているようで、一番チケットが売れていると聞きます。私も大本命ペア…のはずだった。

◆1月2日ソワレ


[ビクター/ジャック]チョン・ドンソク
[アンリ/怪物]ハン・チサン
[エレン/エバ]イ・ヘギョン
[ジュリア/カトリーヌ]アン・シハ

ドンソクくんとチサンさんは身長差ペア。一番観たかった怪物がチサンさん。初演の映像で観たチサンさんの『私は怪物』が本当に素晴らしくて、そもそもあれがなければ私はフランケンを観る気になっていなかったかもしれないな。

◆1月3日マチネ


[ビクター/ジャック]パク・コニョン
[アンリ/怪物]チェ・ウヒョク
[エレン/エバ]イ・ヘギョン
[ジュリア/カトリーヌ]イ・ジス

実は今回フランケンにこんなにもどっぷり浸かってしまった大きな原因がここにあります。再演で新たにアンリ/怪物役に抜擢されたチェ・ウヒョクくん。そもそもこの年末年始に彼を観る予定はなかったのに、気付いたらウヒョクくんを観ることが一番の目的みたいになってしまっていた…。そこらへんの話とウヒョクくんのアンリ/怪物についての感想については別口で書きましたので、興味のある方はどうぞ。ただし、だいぶ気持ち悪いタイプの感想になってますので、ご注意ください。


あと観てないのはユ・ジュンサンさんのビクターで、こちらは2月末に観る予定。

◆◆◆



『フランケンシュタイン』は前にナショナルシアターライブでベネディクト・カンバーバッチとジョニー・リー・ミラーが出演した演劇を観ており、その時に原作小説も読んだのですが、韓国ミュージカル版はこれとは物語が大きく異なります。韓国ミュージカル版の特徴は、怪物がビクターの友人の頭を使って創られること。ビクターの友人であり身体接合術の権威者である青年アンリ・デュプレが怪物として生まれ変わるまでの経緯を描くのが一幕です。


◆◆◆

まず舞台はウォータールー戦争の地で、死体を利用した人造人間創造を目論むビクター・フランケンシュタインが、戦場で敵軍の兵士を治療しようとした廉で殺されようとしていたアンリ・デュプレを救うところからお話が始まります。[♫ 워터루 (ウォータールー)]

有無を言わさず自分の研究所に所属させようとするビクターに、彼の研究は神への冒涜であるとアンリは反発しますが、これは破滅へ向かう人類を救うための唯一の方法なのだという自信に満ち溢れたビクターの言葉に感化され、研究に協力することになります。

これは確か初演キャストのイ・ゴンミョンさんのインタビューで読んだのだと思いますが、ビクターは遺体の再利用についてのアンリの論文を読んでから、戦場をかなり探し回ってやっとのことでアンリを見つけたという裏設定があるとか…ようやく見つけた自分の研究に必要な技術者が今にも銃殺されようとしているのに、にやにや笑いながら悠々と登場して「デュプレ少尉は本日付で第1師団兵器研究所に配置された(ドヤッ)」みたいな、超性格悪くて最高ですね。戦場でまで執事連れて歩いてるし、中尉にも「傲慢な奴!」とか陰口叩かれてるし、もうどう見ても友達おらんなこの子、っていう。わがまま坊ちゃんって感じですね。

ビクターはきっとアンリの論文にかなり感銘を受けていて、実際に会う前から天才である自分と同じレベルの技術をもつ人物だと一目を置いていたんだと思いますが、やっと話のわかる相手に自分の研究のことを喋れるうれしさからかテンション上がりすぎて言葉がどんどんやな感じに。

アンリ:いかなる名分であれ、決して―
ビクター「決して神の審判から自由になれない」。君頑固だな。
そう、そのくだらない道徳と信仰心で君は何ができた?ああ、死んで行く者たちのために消毒薬やらを塗って、包帯で巻いてあげるのか。それとも、この戦争を早く終わらせてくれと神に祈ることか。もしくは敵軍を治療してやり、人間としての自負心を覚え、その極めて小さな人間の限界に慰められたのか?

うわ~性格わる~!そんな言い方して、せっかくの共同研究者候補に逃げられたらどうするんだ…。もっと丁重にお願いしろよ!もうとにかくいちいちつっかかる物言い。「生命ってな~んだ?」って自分から聞いておきながらアンリの答えを遮って「生命、それはただの偶然に過ぎない」とかいって歌いだすの、面白すぎやしません?

[♫ 단 하나의 미래 (たった一つの未来)]ユ・ジュンサン、パク・ウンテ
https://www.youtube.com/watch?v=MpaBaIbh4Ic

[♫ 단 하나의 미래 (たった一つの未来)]チョン・ドンソク、チェ・ウヒョク
https://www.youtube.com/watch?v=6ueong8LKRY

ドンソクビクターはずっとにやにや見下ろしながらアンリを見ていて、「あなたの信念も野望に過ぎない」って言われるところに至ってはパチパチ手を叩いて笑っていてすんごいマッドネスでした。好きです、そういうの。

片やアンリはというと、自分の信念に反することにはきっぱりと異を唱えるのですが、その根底には他人への愛があることが感じられるしっかりと芯が通った人物。医療技術の限界と社会システムという枷の中で、絶望し堅く心を閉ざしてしまったのがウンテアンリ、自責の念と諦めの表情を見せるチサンアンリ、苛立ちもがいているウヒョクアンリっていう印象でした。初めての出会いでビクターはアンリにかけられたその両方の枷を外してやり、アンリの心を解きほぐします。アンリには身寄りがおらず、どういう経緯で家族を亡くしたのかは劇中では描かれませんが、過去の経験が身体接合術の研究へと駆り立てたのかもしれません。ビクターの研究はアンリにとって信仰に反するものですが、それ以上に彼の根底にある人間愛を肯定してくれるものだったのだろうと思います。信仰と科学の間で揺れたこの時代に、こういう葛藤に苦しんでいた人は実際たくさんいたのだろうなぁ。

しかし実はビクターを生命創造の研究に向かわせる動悸はまったくべつのところにあります。

アンリ:大尉殿は神を信じないのですか?
ビクター:いや、神を信じている。ものすごく。しかしそれは祝福を通じてではなく、呪いを通じてだ。もしも神がいなかったなら誰がこの世界をこんな地獄にすることができただろうか。私が追究する科学は、遠い未来を開こうとするのではない。今を変えようとするものだ。死、地獄、運命、呪い、こんな迷信のような束縛から抜け出して、もっと素晴らしい人間の世界観を作りたいのだ。


ビクターの根底にあるのは自分から大切なものを奪った神への憎しみでしかないのですが、信仰と愛に生きてきたアンリは、ビクターの「人類の未来のため」という詭弁をあまりにも真っ直ぐに受け取っており、ビクターと自分は同じ目標に向かっていると思い込んでいて、結局はそれが後の悲劇につながることになります。アンリにとってビクターとの出会いは宗教観すらも覆す出来事で、銃殺されかけて一度は死んだと思ったことも新しい考え方を受け入れる一因になったんだろうと思います。

今まで僕が生きた人生
あらゆる事 すべてを疑った瞬間
太陽のように近づいてきた君を見て
これまで僕はどれほど弱い存在だったのかと

《君の夢の中で》

すごく好きだったのは、ビクターと握手を交わしたあとにウンテアンリが雷に打たれたような呆然とした表情で自分の手を見つめるところ。まるで何か見えないものに突き動かされて手を握ってしまったみたいな。この時のアンリにとっては希望に満ち溢れた瞬間だったはずが、実は怪物誕生の瞬間でもあったのかと思うと切ないです。

そしてダメ押しになったビクターの言葉。

ビクター:アンリ・デュプレ少尉、二週間残っている。可能か?君の能力にヨーロッパの平和がかかっている。
アンリ:質問ですか?命令ですか?
ビクター:お願いだ、友よ


ウェリントン将軍から言い渡された任務を引き受けたビクターはアンリにそれを手伝うことを促す時に「友」という言葉を使います。大尉と少尉という立場ではなく、対等な人間として技術を貸して欲しいと思って貰えたアンリはこれで完全に信頼モードに。これまでアンリが権力に邪魔されて自分の信念を貫くことができず苦しんでいただろうことが伺えます。

暗い日々と戦った  弱い自分を恨みながら
世界はいつも僕を裏切った
今や慣れてしまった敗者の溜息

《だけど君は》

しかしビクターはどういうつもりで「友」という言葉を使ったんでしょう。勿論論文を読んだ時点でアンリの技術を信頼し、親近感を抱いてる部分はあったと思いますが、この時点で本当に友達だと思ってるとは思えませんし、結構調子の良い感じに聞こえます。普段コミュ力ゼロの嫌われ者のくせにこういうときだけ天然ひとたらしぶりを発揮する人っているよね!ドンソクビクターはわざわざアンリに額をくっつけて頬に触れながらこれを言います。打算的で超あざといのに、なんで素直にときめいちゃうの、アンリ…。

[♫ 하지만 넌 (だけど君は)~ 평화의 시대 (平和の時代)]
https://www.youtube.com/watch?v=bERtN6-4blc

◆◆◆

アンリと共に地元に戻ってきたビクター。とりあえずめっちゃみんなに忌み嫌われてます。アンリによると村の人に石まで投げられてたとか。激昂する叔父シュテファンに思いっきり喧嘩売って、ビクターは城に閉じこもります。ビクターに憧れる青年ウォルターに「ドイツの女性たちは着やせするから脱がせてびっくりすんなよ」とかわざわざいらんモテ自慢までするし、ほんとに性格捻じ曲がってます。ビクター、お持ち帰りした女の子にも事が済んだら「さっさと帰れ」とか言って怒らせてそうですね。めっちゃモテるけど数カ月で界隈の女性からの評判は地に落ちてそう。

ビクターが行ってしまったあと、完全無視された婚約者ジュリアによるめっちゃオン・マイ・オウンぽい歌が初演ではあったみたいなのですが、ここらへんのビクターとジュリアのストーリーラインは再演ではざっくりカットされております。

◆◆◆

ビクターの城に姉エレンが訪ねてきますが、ビクターは会おうとせず代わりにアンリがエレンの話を聞きます。執事ルンゲに「坊ちゃんの戦友」と紹介されてたにも関わらず「友達です」って言うアンリ。ビクターに言われた「友」っていう言葉を後生大事に抱えてる感じがかわいい。

エレンは、ビクターの母親の病死、呪術でそれを治そうとした父親、母の亡骸を持ち帰り蘇生させようとした幼いビクター、魔女の仕業だとして父親を焼き殺した村人のことなどを語り、アンリはここでビクターの神や迷信に対する憎悪の根源を知ることになります。エレンの回想の中の少年ビクターが転んだときに、思わず抱き起そうとするアンリ。母の遺体のそばで泣くビクターを見つめる表情は、語られないアンリの家族のことを思わせます。[♫ 외로운 소년의 이야기 (孤独な少年の物語)]

◆◆◆

実験が失敗し、自棄になって城を出て行ったビクターを心配するエレンに「ビクターは僕にとって友達以上です。心配しないでください。」と言い残し、ビクターを追うアンリ。アンリの中でビクターは憧れの対象から友達に、友達から庇護対象になっていくんですね。それ、ダメ男にはまる典型的なパターンじゃないですか…。

アンリが酒場に行くと、酔っぱらったビクターが客と殴り合いの喧嘩をしてます。とりあえず、客全員の酒代を全部自分が払うといってその場を収めるアンリ。もうとにかくビクターの悪酔いぶりがすごいです。せっかく助けに来てくれたアンリに「なぜ来た。研究は終わったから行けと言ったじゃないか。」って悪態をついたかと思えば、テーブルの上に乗って「偉大な理想の墜落!!」とかって叫びだすし、なんてめんどうくさいやつ…。まぁアンリも「君がこんなに酔ってるとこ初めて見た」って言ってるんで、あと一歩のところで実験が失敗したのが相当ショックだったんでしょうが、それにしてもだな。ドンソクビクターは芝居なのかどうかを疑うくらい派手にすっ転んだり、べろべろばーしてみたり、オケピに向かっておええぇと吐いたりしてて超おもしろかったです。ウヒョクアンリにあまりに集中していたため記憶が薄いのですが、コニョンビクターはあそこまで酷くなかったはず。

だけど急にうなだれて「何かに魂を飲み込まれるみたいだよ…」なんて言われたらもう庇護欲が爆発しちゃうからずるい。見たか、これが天然ひとたらしのテクニック。そんなビクターにアンリは「今夜は飲もう」といって酒をすすめ、歌い踊ります。

[♫ 한잔의 술에 인생을 담아 (一杯の酒に人生を注ごう)]
https://www.youtube.com/watch?v=M36lLtmAroY

ここは劇中で唯一遊びを入れられるシーンなので、かなりアドリブが多く回によってやってることも違ってめっちゃ楽しい。ウンテアンリは母性に溢れていて、あの天使の微笑みとやわらかな声で優しく包み込むようにビクターを励まします。ドンソクビクターはそんなウンテアンリに対して甘えモード全開で、腰にしがみついたり、酒場を去る前には無意味にお尻をさわさわしたりして完全に変態でした。チサンアンリはいかにも対等な友達という感じで楽しく呑もう!と場を明るくしてくれます。「ただ一人の友がいるということ それ以上何が必要だろう」とチサンアンリが歌うところで、手でハートマークを作ってみせるドンソクビクター。ウヒョクアンリは、相手が歳の離れたコニョンビクターだったのもあるかもしれませんが、けなげな妻という感じで呑めない酒を無理して呑んで、一生懸命ビクターを元気づけようとします。(詳しくはウヒョクレポを…)みんな踊る姿がそれぞれにかわいいので注目ポイントです。

◆◆◆

葬儀屋から実験に使うための死体の頭を貰う約束を取り付けたルンゲ。しかしビクターたちが葬儀社へ行くと葬儀屋は殺してきたウォルターの頭を見せ、大金を要求してきます。激昂したビクターが葬儀屋を殴り殺してしまいますが、なぜかその罪をかばってアンリが殺人者として名乗り上げ、死刑を言い渡されます。自分が真犯人であることを告白できずにいるビクターに、ずっとビクターの味方だったエレンやルンゲまでもが「アンリの首が欲しいのか?」と責めます。

[♫살인자(人殺し)]

https://www.youtube.com/watch?v=9Yc_GQMYNa0

ビクターがなぜ名乗り出られないのか?と自分を責める『私はなぜ』。今投獄されているアンリのことがどうとかではなく、ひたすら自分は自分がっていうのがビクターらしくて呆れるんですが。このビクターの部屋には母子の絵画がかけられていて、結局ビクターはずっとずっとお母さんを求めて続けているんだなというのがわかります。エレンやジュリアにしてもそうだし、アンリに対してもそうなのかもと思うと、ウンテアンリの聖母のようなアプローチはものすごくしっくり来ますね。嫌味で自分勝手でコミュ力ゼロでマザコンのマッドサイエンティスト。うん!かわいい!(確信)

[♫나는 왜(私はなぜ)]
https://www.youtube.com/watch?v=4KS_w4N9Lfo

開幕直後に撮られた映像なのかな?コニョンさん、生で観るとこれの20倍くらいはお上手でしたよ!しかしほんと難しい曲ですよね、いや難しいのはこの曲に限ったことじゃないんだけど。こんな曲たちを役者に歌わせようだなんて、鬼畜の人のやることやで…!だけどこの難曲たちを役者さんたちが歌いこなすところを観れるのとてつもない快楽です。特にドンソクくんの音域の広さ、すごいね…トートの時よりもずっと色んな種類の歌声を聴けるので、それだけのためにでも観る価値のある公演だと思います。

結局、ビクターは名乗り出たもののシュテファンの手回しのせいで信じて貰えず、アンリの処刑が執行されることに。[♫살인자 reprise(人殺し-リプライズ-)]

◆◆◆

面会に訪れ、真実を言ってくれ、なぜ自分をかばうのかと問うビクターにアンリはこう答えます。

アンリ:僕が選択したんだ、後悔はない。君が生きてこそ、僕らの研究を続けることができるから。だから僕の代わりに生きてくれ。友よ、君に初めて会った時のことを思い出す。覚えてる?

このアンリの「選択」っていう言葉は、出会った日にアンリを連行するときのビクターの台詞「選択は終わった」にかかっているんじゃないかと思ってます。アンリにとってはもうあの瞬間に決まっていたことで、すべてがひとつの信念に基づいた行動だから一切迷いがないんですよね。「後悔」っていうのもビクターにとって大事なキーワードで、この真っ直ぐなアンリの生き方と彷徨うばかりのビクターの生き方がここに対比されている気がします。「友よ」のところをウヒョクくんは「お願いだ、友よ」と出会った時のビクターの台詞を引用していて、もうこれを言われてしまったらビクターは何も言えないよね…

[♫너의 꿈속에(君の夢の中で)- ハン・チサン
https://www.youtube.com/watch?v=IovzbPNQcp4

[♫너의 꿈속에(君の夢の中で)- パク・ウンテ
https://www.youtube.com/watch?v=SICcvIB6gGE

君が話してくれた未来が
僕の前に繰り広げられないとしても
どうせあの日君に出会えなかったならば
再び生きる僕の人生もなかったんだ

君と共に夢を見ることができるならば
死んでも大丈夫 幸せだ
僕が持てるすべてを懸けて
君のその夢の中で生きられるならば


子供みたいに泣くビクターに毅然と語りかけるアンリ。やっぱりウンテさんはこういう頑な意志をもつ役をやらせたら最高で、既に普通の人間には見えない世界を見てるような表情と頬に煌めく涙がうつくしすぎる。セーラームーン世代なんで、美しい涙をみると「幻の銀水晶…」と思ってしまうんですが、ウンテさんの涙は間違いなく世界の滅亡を防ぐほどの力を秘めてますよ。チサンさんは最後「生きたい」の前に俯いて「ビクター…!」と呟いていて泣けました。ウヒョクアンリはもう完全に涙声で歌い始めるのですが、それがだんだん力強くなっていって、だけど最後連行される前に「君と共に」で振り向くところは心は決まっているけれどビクターを置いていくのがつらいって感じで顔を歪ませていて胸が痛かった…。そんな泣き笑いの表情で「大丈夫、幸せだ」だなんて…そんな切ないことがある?まったく迷いのないウンテアンリ・チサンアンリと比べると人間臭さのみえるウヒョクアンリで、だからこそ処刑台に上がって行くところを見るのはほんとにキツかったです。(いやもちろん贔屓だからっていうのが大きいと思いますが)「生きたい」の前にふっと笑うのも切ない。

◆◆◆

アンリの首を持ち帰り、ついに生命創造を成し遂げるビクター。この実験室のセットがね~~~たまらないですよね~~~。スチームパンクってだけで萌える私には垂涎もののセットです。色んなところが動いたり火花や煙が出たりして思った以上にエレクトリカルパレード感ありました。

[♫위대한 생명창조의 역사가 시작된다(偉大なる生命創造の歴史が始まる)]
https://www.youtube.com/watch?v=DvJEYlehCP0

超鬼畜レベルの難曲ふたたび。『私はなぜ』で最後の一滴まで体力絞りとられたんじゃないかな?ってくらいのエネルギーを発するのに、まだこんなの歌うの…ていうかよく考えたらまだ一幕なのに…圧巻です。

◆◆◆

そして怪物誕生。誕生したばかりのウンテ怪物は、人工的な器官を想起させる呼吸音で「被造物」って言葉がとても合う。チサン怪物は動物の赤ちゃんのような呼吸。ウヒョク怪物はもう「獣」そのものでした。ドンソクビクターはアンリが生き返ったことを喜んでいて、コニョンビクターは生命創造に成功したことに興奮している感じ。

ビクターは「アンリ、ビクターだよ、わかる?」と声をかけ、自分のコートをかけてあげるのですが、よろついた怪物がビクターに覆い被さる形になり、ビクターから引き離そうと怪物を殴ったルンゲが噛み殺されてしまいます。アンリを生き返らせたと思ったのに、生まれたのはアンリの記憶を持たない得体のしれない生き物だった…絶望したビクターは何もわからず呆然と返り血を見つめる怪物に後ろから近付き、鎖で絞め殺そうとします。赤ちゃんみたいな無垢な怪物の表情とビクターの残酷な表情が見ていてすごいつらいシーンです…。

鎖から逃れバルコニーによじ上ぼった怪物をビクターは銃で狙いますが、弾は逸れ、怪物は割れた窓から脱出します。この時の怪物の怒りの咆哮は3人ともすごくて震えがきます。実験室の左右にかけられた大きなステンドグラスの窓は、ビクターとアンリが2人で夢見たものの象徴のような気がして、その片方をビクター自らが割って、そこから怪物が逃げるっていうのが切ないところですね…

一幕ラストはビクターの「안돼!!(ダメだ!!)」で終わるんですがここのドンソクビクターのシャウトが素晴らしかったです。[♫또 다시(再び)]

◆◆◆

もうこうやって思い出すだけでもずしんと重くてぐったり…初見の衝撃はすさまじくて、これでまだ一幕しか終わってないなんて信じられないと思いました。ということで2幕に続きます。


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