常識をカキ変えろ「食中毒根絶も」|日経新聞 | 牡蠣百科

常識をカキ変えろ「食中毒根絶も」|日経新聞

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 「安心して生で食べられるものを作れないか」。約2年前、東京都内などでカキ料理店をチェーン展開する企業が打診したのは沖縄県海洋深層水研究所(同県久米島町)だった。

■食中毒根絶も


 「オイスターバー」の普及などで生カキを楽しむ消費者は増えているが、ノロウイルスなどによる食中毒も後を絶たない。沖縄本島の西約100キロメートルに位置し、ほぼ無菌状態の海洋深層水が豊富な・・・
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(日本経済新聞2013/02/26)

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日本経済新聞|地域ニュース > 九州・沖縄
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|改訂|2013-08-28|公開|2013-02-28
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常識をカキ変えろ 「消費回復の切り札に」
1次産業 未来に駆ける 第1部 技術で克つ(1)
2013/2/26 12:12

 九州・沖縄の1次産業の生産額は全国の約2割を占め、関東と並びトップクラス。ただ、担い手の脆弱な経営基盤や、少子高齢化を背景とする後継者不足など課題は山積している。環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る議論の行方次第では海外との競争が激化する事態も想定される。生き残りを懸けた「1次産業王国」の最前線を追う。


世界初の種なし甘柿「秋王」は5年後に市場に出回る(福岡県朝倉市)
 「消費回復の切り札だ」。福岡県朝倉市の柿農家、関屋純男さん(54)は新品種「秋王」の木を頼もしげに見詰める。秋王は糖度が20度と、一般的な甘柿「富有柿」に比べ4度ほど高い。だが、関屋さんが「甘み」以上に期待するのは世界初の「種なし」だ。

■初の種なし甘柿

 同市を中心とするJA筑前あさくら管内の富有柿は2012年度の出荷量が2800トンと、3年前に比べ1割減った。「主な要因の一つが種。ブドウやスイカのように種なしができれば、食べにくいイメージも変えられる」(関屋さん)

 実は種なし柿はこれまでも存在した。ただ、それは渋柿の話。優性遺伝する渋柿は甘柿と掛け合わせても渋柿しかできない。「長年、壁にぶち当たっていた」。秋王の開発を担当した福岡県農業総合試験場(同県筑紫野市)の千々和浩幸氏は打ち明ける。

 「ダメもと」(千々和氏)で試したのが、富有柿の未熟な小粒種を培養する手法。この種から成長した木には種なし甘柿が実った。開発に着手してから11年。ようやく昨年、秋王の品種登録にこぎ着けた。商品が市場に出回るのは木が十分に育った5年後の予定だ。

 農林水産省によると、11年の全国の農業産出額は03年比で7%減り、九州・沖縄も4%減少。人口減などを背景に国内の消費市場が縮小しているのが主因だ。海外展開も「資金やノウハウに乏しい」(九州農政局)ことから、大分県のシイタケや宮崎県の飫肥(おび)杉など一部の高級品に限られている。このため、技術革新を通じて逆境に克(か)つ知恵と工夫が欠かせない。

 「安心して生で食べられるものを作れないか」。約2年前、東京都内などでカキ料理店をチェーン展開する企業が打診したのは沖縄県海洋深層水研究所(同県久米島町)だった。

■食中毒根絶も

 「オイスターバー」の普及などで生カキを楽しむ消費者は増えているが、ノロウイルスなどによる食中毒も後を絶たない。沖縄本島の西約100キロメートルに位置し、ほぼ無菌状態の海洋深層水が豊富な久米島は「食中毒を根絶できる可能性を秘める」(山本隆司・同研究所所長)。

 久米島町の海岸から沖合2キロメートルまで延びた黒いパイプ。水深600メートルから海洋深層水をくみ上げるもので、同研究所はこの水を使った「無菌カキ」の試験養殖を今春にも始める。初年度は1万個の生産を目指す。

 農水省の調べでは10年の九州・沖縄の水産業の生産量は国内の25%を占め、全国9地域の中でトップ。水産業が盛んな九州・沖縄では「変革の波」はカキ以外にも及ぶ。

 長崎県総合水産試験場(長崎市)では「冬の珍味を身近にする技術開発」(浜崎将臣・主任研究員)が進む。高級食材として人気のフグの白子(精巣)を量産するため、オスのトラフグのみを効率的に生産する試みだ。

 同試験場はオスの精巣細胞をメスに移植し、オス特有の性染色体だけを持つ特殊な稚魚(超オス)の生産に成功。超オスとメスの間には必ずオスが産まれることを突き止めた。15年にも白子の量産に乗り出す計画だ。

 同県の養殖トラフグの生産量は国内シェア約6割で断トツ。だが、魚価低迷で養殖業者の経営は厳しい。白子が採れるオスの市価はメスより約3割高く、「新技術を実用化できれば競争力を高められる」(浜崎氏)。

 日本政策投資銀行九州支店の久間敬介・企画調査課長は「1次産業を製造業と位置付け、商品の付加価値や生産性を高める意識が大事だ。最先端技術を積極導入し、絶えず脱皮し続ける覚悟が必要だ」と指摘する。


農業産出額、九州・沖縄が20%

 農林水産省によると、2011年の九州・沖縄の農業産出額は1兆7027億円で全国の20.4%を占め、大消費地を抱える関東(22.9%)に比肩する。温暖な気候などに恵まれ、農業をはじめとする1次産業を育みやすい環境が整っている。

 だが、内閣府の県民経済計算では09年度の九州・沖縄の域内総生産(名目)に占める1次産業の割合は2.1%。1次産業は主力産業とは言い難い状況だ。