「はやぶさ」が教えてくれたいくつもの事 | ずっこけ北の家族

「はやぶさ」が教えてくれたいくつもの事

 やっぱり、小惑星イトカワにたどり着きそして帰ってきた「はやぶさ」の事は書かずにいられない。はやぶさの何が凄かったのか?そして私たちに何を教えてくれたのか?

あくまできたのおやじが「すっげー」と思った事で、もしかしたら世間の評価と違うかもしれませんが、はやぶさの事を記事にすることに挑戦してみようかと思います。

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 世界で一番宇宙に関する開発が進んでいるのは、勿論NASA。1969年月に人類を送り、1977年に打ち上げたボイジャー1号は太陽系を離れようとしている。マーズパスファインダーとマーズグローバルサーベイヤーは火星に着陸した。

そのNASAもおもいっきりびっくりの成果をもたらしたのが、「はやぶさ」なのである。

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それだけではない。はやぶさは世界の宇宙開発史のトップ7に選ばれたのだ!今年IAA(国際宇宙航行アカデミー)が50周年を迎えた。IAAとは世界中の宇宙理工学者から選ばれた会員からなる、まさに宇宙のプロ達の組織だ。この記念ポスターをご覧頂きたい。はやぶさの写真が月面着陸などと一緒に掲載されている。はやぶさの他には「スピリット又はオポテュニティ火星ランダー」、「土星のリング(ヴォイジャー)」、「国際宇宙ステーションISS」、「月面上靴跡(アポロ)」、「ゴダードによる世界初の液体ロケット実験」、「人類宇宙へ(ガガーリン)」、「人類月に立つ(アポロ)」など誰もが知っている宇宙開発史に燦然と輝く業績が連なる。

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わかるだろうか?一番右上がイトカワに映るはやぶさの影の写真だ。(写真をクリックすると大きくなります)アポロ計画の写真が2枚あるから、ベスト6と言ってもいいかもしれない。

ソビエト、アメリカのみが目立つ宇宙開発において、日本のはやぶさがこれだけプロ達から評価されたのは、何だったのか?そして、はやぶさがやっとの思いで、運んで来たカプセルがたどり着いたオーストラリアのウーメラ砂漠に、取材に行きながら生中継しなかったNHKにはたくさんの苦情が寄せられたという、そしてはやぶさに関する本が売れ、はやぶさをCGで紹介したプレネタリウムが大人気だそうだ、何故日本人の心をはやぶさの旅は奮わせたのだろう?きたのおやじの独断と偏見で紹介させていただきます。

【帰って来た事】
 はやぶさは人類が打ち上げた探査機で一番長い旅をして、サンプルリターンして帰ってきた。その距離60億キロ。地球とイトカワの距離は、月と地球の600倍以上である。そんな所まで行って帰って来たのだから凄い。今まではNASAのスターダストが50億キロの旅をして帰って来た事があるが、JAXAが記録を更新した。そしてサンプルリターンの方法も大変難しい事に挑戦した。NASAのスターダストは彗星とすれ違いざまに塵のサンプルを採取するという方法だが、イトカワは小惑星で塵はない。そこで、ランデブーして(並走して)着地しサンプルを採取するというウルトラ技に挑戦したのだ。計算通りには行かなかったが、はやぶさが持ち帰ったカプセルには微粒子が確認されていて、イトカワのものか解析中である。
 そして、その長旅を支えたのがイオンエンジンである。NASAも実験で失敗していたそのエンジンを改良し、超寿命化に成功した。開発したのはJAXA、製造したのはNECである。このNEC製のイオンエンジンはこの快挙に伴い、今後NASAも使用を考え始めている。

【自分で考える探査機】
 はやぶさはある意味ロボットである。イトカワと地球の距離があまりに離れているため、通信が片道16分もかかってしまう。往復だと32分。そこで、サンプル採取の際のタッチダウン(着地)の時は自分で降りる位置を決め、判断し着地するように設計されていた。この自律機能に日本の技術者達は自分の魂を注いだ。自分達が行けない世界、通信もままならない世界、だからこそはやぶさが自分の判断でサンプルを持ち帰る機能を持たせ、自分達の魂をそれに乗せたのだ。
 はやぶさが着地するためのアイディアとして、着地する前にターゲットマーカーという目印をイトカワに向け発射する方法が採用された。しかし、はやぶさの重力は地球と比べものにならないくらい小さい。地球の10万分の1だ。だから、普通のモノをイトカワに落とすと、跳ね返り宇宙空間に飛んで行ってしまう。そこで、ターゲットマーカーは、イトカワとぶつかった時にその衝撃を吸収しなければならなかった。試行錯誤の結果、ターゲットマーカーは昔から日本のオモチャとしてあったお手玉をヒントに中にペレット状のつぶつぶが入っているやわらかいものになった。

【ボロをまとったマリリンモンロー】
 はやぶさを乗せたM-Vロケット5号機を打ち上げたのは、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所の「追跡管制室」の雰囲気を本で読んで、鳥肌が立った。
 ロケットの打ち上げの基地というと真っ先に思い出すのがNASAのヒューストン基地だ。科学者達がコンピュータがきれいに並んだデスクに座ってヘッドホンを付けて通信する。男の子は一度は憧れるのではないのだろうか。ちょっとSFチックな世界だ。
 一方、内之浦宇宙空間観測所の「追跡管制室」はひと味ちがう。外観は工事現場の作業宿舎そっくりで、中には学校の教室より狭い部屋にコンピューターがぎっしり並んでいる。そこに靴を脱いで、緑色のスリッパに履き替え、そして「宇宙研」と書かれた黄色いヘルメットをかぶらなければいけない。ロケットが空中爆発したとき、破片が飛んで来るからだ。こんな見た目かっこ悪い所で世界が驚く成果を生み出したのだから、NASAよりかっこいい!!!!外見より中身、まさに「ボロは着てても心は錦」だ!打ち上げ時、視察に来ていたNASAの職員は驚きを隠せなかったようだ。そして言った言葉は「ここはボロをまとったマリリンモンローだ!」

【いくつもの困難を乗り越えた心】
 このことを詳しく記述しようと思ったら大変な事になってしまう。そのくらい想定外の事が何度もはやぶさを襲った。それはそうだ、誰も言った事のない所まで行って、誰もやった事のない事をしようとしたのだから。例えて言うなら、自転車に普通に乗って行って来ま~すと家を出て、帰って来る時はペダルを手でこぎ、それでも進めないときは、風の力を借りて飲まず食わずで帰ってきたようなもんだ。
 はやぶさは二度行方不明になった、しかしはやぶさチームは諦めなかった。そして、通信が途絶えても、はやぶさ自身も諦めなかった。二度ともはやぶさから弱い信号を発している。「ボクはここにいます」と。見つかってそれまでの挙動を解析すると、一度目の行方不明の時はイトカワに不時着したまま身動きがとれなくなっていた。その間30分程。でも自身の「自律機能」でなんとか一人でイトカワを離陸していた。二度目の行方不明の時は、もう満身創痍、燃料が漏れ姿勢の維持すら困難で、ものすごく弱い信号を地球に向け発していただけだった。はやぶさを知り尽くしている技術者たちが、現状を解析し、今生きている機能と燃料だけで地球に帰らす事ができないか知恵を振り絞った。元々と違う動きをそれぞれの部品にさせるため、新しくプログラムを組み送信した。・・・・そしてはやぶさは瀕死の体で地球に帰ってきたのである。

はやぶさがイトカワに到着して二ヶ月程かけて、イトカワの画像を地球に送って来た時はNASAの技術者たちは、その写真の鮮明さに声も出なかったという。

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はやぶさの「目」(カメラ)は進行方向と逆についている。地球に近づいたとき、技術者達は瀕死のはやぶさの向きをわざわざ変え、地球を見せてあげている。技術者達がはやぶさに「魂」を感じなければわざわざこんなことはしない。私ははやぶさプロジェクトの困難を乗り越えた秘密の一端は、このエピソードにあると感じて止まない。自分達がはやぶさに込めた魂を、自分達自身が信じていた、感じていた。だからこそ地球に落ちるとき、イトカワのかけらが入っているであろうカプセル以外は燃え尽きてなくなり流れ星になってしまうはやぶさに故郷地球を最後に見せてあげたい・・・。その気持ちがこのプロジェクトを成功させた一つの要因になったと思う。メンバーの中にはご利益があるという話を聞けば、その神社まで行ってお守りを買ってくる人もいたという。最後にはやぶさが見た地球、その送ってきた画像が下のものです。

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はやぶさの魂を感じられる人間には、この画像が涙でかすんでいるように思ってしまう。それが、日本人のマインドなのかもしれません。NASAの技術者達が、声もでない程驚くべき鮮明な画像を送ってきたはやぶさが最後に写した地球がこの写真なのですから・・・。

【1万年の時を経て魂を受け継ぐ日本人】
この人類の宇宙開発史に残る偉業は、突然日本人技術者達が覚醒して成し遂げたものではないと思います。一万年を超える日本人特有のいとなみから生まれた、ある意味必然だったようにも感じるのです。

3万年以上前、世界で打製石器を使っていたころ、局部磨製石器を作り始めた日本の石器人。世界で一番最初に1万6千年前に土器を作った縄文人。6千800年前には世界の何処よりも技術的に高いレベルで漆塗りの技術を確立していた縄文人。6千年前には調理道具に魂を感じ、使わなくなるとき供養の儀式をしていた縄文人。千年以上前から米の品種改良をしていた日本人。こういう過去の日本人の万年単位の積み重ね。まさに「さざれ石」の基礎の上での今回の快挙だったと思うのです。

そういう事を思うとき、日本人マインドを感じれば感じる程、日本人マインドを持たぬ偽日本人はそれを本能的に、生理的に毛嫌いしてしまう。そう考えると、「仕分け」されそうになっている事も、マスコミが冷めた目で見ている事も理解出来てしまいます。
日本人なら、そのマインドを受け継ぐものなら、今後計画されている「はやぶさ2」プロジェクトを望むし、おんぼろの建物の中で頑張る技術者たちを応援したいと心から思うのです。「彼らは日本の歴史の一本の線上を走るトップランナーである」と誇りに思う訳です。「日本の歴史の一本の線」私たちの世代で切らす訳にはいきません。


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