自転車と歩行者の事故が増えているとして、井戸敏三・兵庫県知事は20日、自転車の購入者に自転車保険の加入を義務づける条例案を来年2月にも県議会に提案すると表明した。県によると、自転車保険加入の義務化は全国初という。(朝日新聞社記事より抜粋)


年間1500~2千円程度の保険料で、事故でけがをさせた相手に払う賠償金を補償する自転車保険って・・・

安いように思われるかもしれないが、かなり高額な保険料です。
補償の詳しい内容までわかりませんが、自転車事故の対人賠償の補償で、1台につき毎年この保険に加入するとしたらかなり暴利です。
兵庫県の自転車登録台数は約324万5千台(平成25年(財)自転車産業調査)だそうですから、約5~6億円の保険料が集まる計算です。
先ごろ9500万円という判決が出ましたが、1年に何度も起きる事故ではありません。

すでに自動車保険や火災保険の個人賠償責任補償特約で加入している人も多いと思いますが、1億円から2億円の補償で年間800円~1500円程度。
クレジットカードにもついていたりする保険です。
兵庫県のアンケート調査では加入率24%となっていますが、実は加入していることも忘れている人も多い保険でもあります。
賃貸住宅に住んでいる人は、加入が条件となっている火災保険にたいていこの特約がついています。

この特約なら、一家に何台の自転車があってもこの特約一つだけで補償されます。同居している家族全員が補償の対象です。
また、人身事故だけでなく物損事故も補償します。
自転車事故に限らず日常生活に関わる様々な賠償事故に対して補償しますから、ペットが他人に咬みついたり、キャッチボールをしていた子どもが誤って人にボールをぶつけたり、買いもの中に誤ってお店の商品を壊してしまったり…
様々な賠償を補償します。

保険を義務付けることに反対というわけではありませんが、高額賠償事故が発生しているから保険を義務化という政策の発想は浅はかです。
保険が普及するとモラルは低下する傾向にあります。
保険に入っているから事故っても大丈夫だという心理が働きます。
自転車運転のルールやマナーをきっちり守らせる努力はまだまだ足らないと思います。

また行政が民事上の問題に対して強制するのもいかがなものか・・・
他にも考え出したらきりがない話です。
ペットを飼っている人にもペットによる咬みつき賠償保険を義務化とか・・・
意識の高い人は、すでに保険に入っている人も多いのです。
すでに加入している保険との重複関係はどうするのでしょうか?
すでにある保険を普及させる努力はほとんどしていない状況です。

自賠責のように人身事故の最低限の補償を義務化するのであれば、現在の自転車向け賠償責任保険を上乗せ任意保険にして、行政としてしっかりした保障制度を構築するべきです。