「CHRISTMAS IN PRAGUE」 | こだわりのつっこみ

こだわりのつっこみ

素人が音楽、小説、映画などを自己中心的に語ります。

レベル:若干長めですが中学2~3年生レベルなので1日くらいで読めると思います。


ジャンル:ヒューマン


あらすじ(背表紙から):

In a house in Oxford three people are having breakfast - Carol, her husband Jan, and his father Josef.
They are talking about Prague, because Carol wants them all to go there for Christmas.

Josef was born in Prague, but he left his home city when he was a young man.
He is an old man now, and he would like to see Prague again before he dies.
But he is afraid.
He still remembers another Christmas in Prague, many long years ago - a Christmas that changed his life for ever...


面白さ:★★★☆


※以下、結末まで話します。嫌な方は見ないでください。













Christmas in Prague (Bookworms Series)/Joyce Hannam
¥599
Amazon.co.jp










内容:
オクスフォードに暮らしていたキャロル、夫のジャン、そしてジャンの父親であるジョセフ。
キャロルはオーケストラのハープ奏者として、その年にプラハで催される演奏会に出演するとのことで、ジョセフの出身地であるプラハに家族3人で一緒に行こうと提案します。

しかし、プラハで暮らしていたというジョセフですが、これまでその地での生活について、キャロルはおろか息子のジャンにまで語ろうとはしなかったので、プラハに行くのかどうか迷いますが、ジョセフは死ぬ前にもう一度プラハに行くのも良いだろう、ということでプラハ行きを決心します。

出演する演奏会の練習のため、一足先にプラハに来たキャロルは、練習後の自由時間でプラハの街を散策、するとイギリスにおり数日後にここプラハに来るはずだった夫のジャンが向かいの通りを歩いているではありませんか。
呼びかけても反応を見せないジャンに近づこうとキャロルは道路を渡ろうとしたとき、バスに当たって事故にあってしまいうのでした。

さて、イギリスでは、キャロルの事故を聞いたジャンと父ジョセフが慌ててプラハに駆けつけます。
同時に、キャロルがジャンと思っていた男、彼も自分に近づこうとしてキャロルが事故にあったことを気づいており、キャロルのいる病院に向かいます。

そしてジャン、ジョセフ、ジャンに酷似した男が同時に病院で会うことに。
狼狽するジャンと男(名前はPavel)でしたが、ジョセフは何かを悟ったように話し始めます。
実は男はジョセフの息子であり、彼らが生き別れた兄弟なのだということを。

時は冷戦最中のチェコ。当時自由を求める活動家だったジョセフは、同じく自由を求めるレンカと恋に落ち、双子を授かります。
しかし、政府に目を付けられた2人はイギリスに亡命することにします。
1957年のクリスマス・イブに、まずジョセフが赤ん坊だったジャンを連れて亡命し、成功。
翌日のクリスマスにレンカと双子のもう一人の男の子が亡命しようとしますが、失敗し、レンカは銃弾に倒れます。幸いに一命をとりとめた男の子は以後、チェコでレンカの母親に育てられた、ということだったのです。

「レンカとPavelはあなたのせいで死んだ、もう連絡をしてくるな」
というレンカの母親からの手紙を受け取ったジョセフは以後、2人は死んだのだとしてイギリスでチェコと、思い出を捨てて生きてきたのでした。

当初は自分を捨てたと思い、ジョセフを恨んだPavelでしたが、その経緯を聞いてジョセフと邂逅、さらに兄であるジャンと涙ながらに抱き合うのでした。

さて、事故にあったキャロルでしたが、なんとかその日のコンサートに出演できる様子。
キャロルはジョセフ、ジャン、Pavelをコンサートに来てくれと言います。
新しく大切な家族が加わった記念のクリスマスのコンサートに。


感想:

何はともあれ、この物語で一番、胸をついたのは、冒頭の文章。つたない英語力ですが、意訳和訳してみます。


あなたは家族のことについて、全てを知っているだろうか?
家族はあなたについて全てを知っているだろうか?
どんな家族でもなにがしかの秘密を持っている。それは大きな秘密、小さな秘密、笑ってしまうような秘密、そして、それは悲しい秘密かもしれない。 

ジャンは妻のキャロル、そして父のジョセフとオクスフォードに住んでいる。
ジャンはプラハで生まれたが、父と共に幼い頃にイギリスに来たのだ。
母親は彼が生まれたときに死んだので母のことをまったく知らない。
また父も母について多くを語らない。
しかし、ジョセフは未だに妻の写真を持ち歩いているのだ。

キャロルはオーケストラのハープ奏者で、クリスマスにプラハでのコンサートをすることになった。
プラハは義父と夫のゆかりの地であり、キャロルはジャンとジョセフと一緒に行きたかった。

しかし、プラハでは彼らの秘密が待ち受けているのだ。
素敵な、幸せな、そして悲しい秘密が。



なんすか、秘密って~!!!!
と思わず、一気読みしてしまいました。
今紹介した序文の中の、最初の2文はこの小説に限らず、一般的・本質的な問いかけとして迫ってきます。

内容は、なんとなくありがちな平凡な感じではありましたが、それでも今紹介した序文や、それに続く1957年のプラハの惨劇(最初に母の死を持ってきているので、この時点ではなんのこっちゃ分かりませんが)、すごくいい展開です。

歴史上の悲劇って結構いいストーリーつくりの場になるんだなぁと改めて思います。
例えばナチによるユダヤ人虐殺や、冷戦など。

もちろん、それらの出来事によって、現実にもっともっと苦しい悲劇に遭われた(遭われている)方もいらっしゃいますが、物語の書き手としては、こうした「個人ではどうしようもない大きな力によって別離を余儀なくされている」という状況は書きやすいのかもしれません。