鳴りやまぬ拍手~amazarashi Live Tour 2014『あんたへ』 名古屋公演 | ライブハウスの最後尾より

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邦楽ロックをライブハウスの最後尾から見つめていきます。個人的な創作物の発表も行っていきます。




どうも( ^_^)/


開演前に飲み干したドリンクを返しに行くのが面倒でビニール袋の中に入れていたら氷が溶けて中のチラシがぐしゃぐしゃになっていた者です。


場所は名古屋新栄ダイヤモンドホール。今年から装いをやや変えて新しくなったライブハウスです。


そして昨年と同じアーティストのライブに行ってきました。


amazarashi 
Live Tour 2014『あんたへ』
CLUB DIAMOND HALL



ここで改めてamazarashiという“特別なライブ”をするバンドについておさらいです。


インディーズ時代そしてメジャーレーベルに移籍してからもしばらくは人前に出る音楽活動をしなかったamazarashiですが1stフルアルバム『千年幸福論』のタームでついにライブを解禁。


しかしそこでも明確な“顔出し”は行わず、演奏と共にステージに張ったスクリーンにタイポグラフィやアニメーションなどの映像を映し出すシネマティックなライブで話題を呼びました。


以来口コミで「一度はamazarashiのライブに行っておけ」が邦楽ロック好き界隈の合言葉になったりならなかったりしながら、今タームでZeppクラスの箱にも進出。

数千人のキャパを埋めるトップアーティストに名乗りを上げ、珠玉のメッセージアルバム『あんたへ』を掲げたツアーの名古屋公演というわけです。



……なんで名古屋はZeppじゃないのって?

これは憶測に過ぎませんが、前回のチケット、ちょっと当日券が余ってたの。


なのでいわばダイヤモンドホールリベンジともいえる(かもしれない)ライブが18:00、ほぼオンタイムで開演。


※毎度申し訳ありません、セットリストがタダ漏れです。ご注意ください。










amazarashiとして表記されているメンバーは二人ですが、ライブではVo&Gt.+Gt&Cho.+Ba.+Key.+Dr.の五人編成バンドを横一列に並べた形態。


今回、Key.の豊川真奈美さんが体調不良で活動を休止されていましたが、サポートメンバーを加えた変わらぬ編成で登場しました。



そのキーボードの訥々した音色で始まったのはアルバムのイントロダクションでもあった『まえがき』


性急に映し出されるタイポグラフィと共に秋田ひろむさんの歌声も熱を帯びていく。


≪懐かしい感傷と呼ぶには/煤け過ぎた失敗達と/行こうか行かざるかにあえぐ/これからのあんたへ捧ぐ≫


ライブの醍醐味は肉体性です。

そのままの意味で“生きる=LIVE”ということでもそうだし、生の声が伝える情報は6畳一間のオーディオから発せられるそれよりずっと生々しく、切々としていて、鼓膜を含めた全身に突き刺さる。


『あんたへ』はメッセージアルバムだと書きました。ならば、その名を冠したライブは間違いなくメッセージライブであるはずで、その意思が明確に伝わる一曲目でした。



そして間髪入れずに二曲目は前作『ねぇママあなたの言うとおり』のリード曲の一つだった『ジュブナイル』傷だらけの少年少女のアニメ映像も前回のライブで観ているはずですが、一段とそのメッセージ性が増したような気がしました。


『ジュブナイル』が終わって秋田さんが一言「ありがとう」と言った瞬間大きな歓声と拍手。


近年の邦楽ロックの傾向とは逆行するようなどっしりとした歌声に拘らず、秋田ひろむというミュージシャンはとてつもなくシャイで、ライブでMCもほとんど無い。


たまに口を開くと、丁寧に言葉を選ぶ緊張感がこちらにも伝わってくる有様で、それが真摯なアーティスト性と相まって基本的にお客さんから何かアクションを起こすライブではないのです。


その反動からか、他のアーティストと比較すると非常に拍手の時間が長い、そして分厚い。まるで荘厳なクラシックコンサートのようです。



今回もMCはほぼ無しでセットリストを駆け抜けていく中、わずかに空いたインターバルでは長い長い拍手が鳴り響いていました。



ところで、秋田さんの歌が少し不調です。


『ジュブナイル』のときはまだ立ち上がりだから多少声が上ずっているのかなと思っていたのですが、中盤の『あんたへ』でハッキリと喉の調子が悪いのだということが分かりました。


しかし、一切誤魔化しはしない。先述したように、ライブとは肉体性と強いメッセージを伝える場であるのだから、10あるうちの5か6しかできないのなら5か6の100%を振り絞る。


それでなくても強く声を張るタイプのボーカリストからすれば苦しい状況だと思いますが、それ故に伝わる熱量というものがある。


『奇跡』のバンドアンサンブルは見事だったし『冷凍睡眠』のポエトリーリーディングとタイポグラフィの調和は圧巻でゾッとするほどだったし『真っ白な世界』では少し持ち直してきました。




「デビュー間もない頃、深夜のアルバイト……糞みたいなバイトをして帰る途中、田舎の山の方に住んでいたので星がよく見えて、それを見ながら「見てろよ」って思った。
思えば、それがわいのスタートラインだったんじゃないかと思います」



というこの日唯一のMCの後歌われた『終わりの始まり』でついに完全に声が飛んでしまうのも構わずの熱唱に、amazarashi史上類を見ないほど前向きなエネルギーに満ちた楽曲を演奏し終え、最後であろう『あとがき』にて終演―――


―――と思いきや、もう一曲ありました。たった一人残った秋田ひろむの弾き語りで『僕が死のうと思ったのは』




中島美嘉さんの歌声の新たな一面を引き出したといっても過言ではない曲をセルフカバーし歌い上げ、この日一番長い拍手が巻き起こり、ライブのエンドロールとして再びCD版の『あんたへ』が流れ、もう一度拍手が起こり、終演。










この日のライブを演る方の目線で良い悪いでいうと“悪い”部類に入ってしまうのではないかと思うのですが、でもオーディエンスとしてこのライブを観て聴けたことを嬉しく思った。


だからこそ、みんなが拍手を終えたのにしばらく一人で手を叩き続けていたんです。













・セットリスト

01.まえがき
02.ジュブナイル
03.奇跡
04.つじつま合わせに生まれた僕ら
05.ドブネズミ
06.夏を待っていました
07.匿名希望
08.あんたへ
09.真っ白な世界
10.冷凍睡眠
11.空っぽの空に潰される
12.無題
13.千年幸福論
14.終わりで始まり
15.あとがき
16.僕が死のうと思ったのは