最近読んだ本 | 楕円球空間

最近読んだ本

7月はギリシャ・シンガポール・博多と毎週出張があった。

ギリシャはスペツェス島というアテネから船で2時間くらいの島。人口4000人というが、もっと栄えている感じなのは観光島だからか。元寄宿学校、というところに全員泊まりこんで、合宿形式で楽しく研究会。午後は(暑すぎて大変なので)講演はない。ということで散歩か読書かしかすることがない(アクティブな人は自転車で島を一周したり泳いだり)。持参したのは

池内紀「亡き人へのレクイエム」
ハンス・ファラダ「ベルリンに1人死す」

池内先生はゲーテやツヴァイクの翻訳で好きな先生。エッセイも独特の味があって、書評でも絶賛されていたので是非読まねば、と機内で既に熟読。亡くなった人には自分のの知っている人も知らない人もいるが、そして池内先生とその方々との距離もいろいろなのだが、どのエッセイにも共通しているのは先生がその人を尊敬している・愛しているということと、どういう魅力的な人柄なのかが読者によく伝わってくる点。佳作だった。

ファラダの本は最近出た本だと思っていたら、戦後すぐに出版された本らしい。再発見された、という感じのようだ。ものすごくリアリティのある(実際にあった話を元にしているので当然だが)筆致で、ナチス統治下のベルリンの真綿で首を締められるような息苦しさが行間から立ち上がってくる。しかもそれが今の日本と共通している部分が多くて、さらに薄ら寒くなる。海外脱出へのカウントダウンを早めなければ、と思いつつ読了。最後に少しだけ救いがあるので読後感はよい。