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見果てぬ「斉藤謙信」の夢。

長らく更新しませんでして、およそ二ヶ月ぶりの記事です。

 

本日、九月二十二日は斉藤佑介さんのお誕生日。

おめでとうございます。

 

毎年書いていますけど、佑介さんは私の好きな役者さんであり、かつ最初に舞台を見てファンになった役者さん。

まだ舞台なんてほとんど見ていなかった時期に、たまたま佑介さんの出演舞台を見て注目し、その後に長尾景虎役で一気にファンになったのですが、当時のことが懐かしく思い出されますね。

今年は久しぶりに佑介さんの舞台を拝見し、そのご活躍する姿を直に見ることが出来てうれしく思いましたが、また近いうちに舞台を見に行ければなと。

 

これまた毎年書いていますけど、私の中ではベスト・オブ・上杉謙信の佑介さん。

「死守」の頃は若き日の謙信と言う感じでしたが、あれから八年ほど経ち、今や円熟味を増した役者さんになりましたから、今度は謙信の生涯を描くドラマか舞台での謙信役が見たいもの。

私の見果てぬ夢です。

 

ともあれ、素敵な一年になりますように。

二年半ぶり第二弾。

数えてみたら、昨年十月末以来、実に久々と言うか、今年に入って初の観劇でした。

 

つい先日、こちらではすでにお馴染みの斉藤佑介さんが企画・原案・主演を務めた、演劇ユニットSai:Ai時計(こちらも佑介さんが主体となっているユニットですが)の「トニー、もう我慢できない~パッとしない洋館殺人事件~」を観劇してきました。

佑介さんの舞台を拝見するのは、同ユニットの旗揚げ公演(2016年の11月)以来なので、およそ二年半ぶり。

前回の「便利屋チームラビッシュ」同様、今回も主演が佑介さん、脚本・演出が川口清人さんと言うコンビでしたので、発表の段階から楽しみでなりませんでしたが、「チームラビッシュ」同様、序盤からテンポの良い展開と、後半の絶妙なおふざけでの笑いを交えつつ、ふと考えさせられるお話のコントラストがお見事でしたね。

 

例によって、まずはあらすじの紹介から。

とある洋館で行われる二時間ドラマの撮影現場が舞台。

低予算で制作され、撮影日程もたった三日、しかも「雨傘番組」と呼ばれるプロ野球ナイターが中止の際の番組であることが当初から決まっているため、場合によってはお蔵入りになることもあり、出演者・スタッフともに今ひとつやる気がない。

そんな中、主演のトニー役の音川次郎だけはやる気に満ちていて、二時間ドラマ好きの彼は作品を面白くするために撮影初日から自分の意見を、時には撮影の流れを止めてまでもどんどん主張していく。

やる気がなく、ただでさえ撮影が押していることもあって現場の俳優やスタッフは、この音川の言動には冷ややかに応じ、また音川がドラマのスポンサーの製薬会社社長の息子ゆえにコネで主演に抜擢されたと言う反感も手伝って、次第に現場は険悪なムードに。

が、そんな雰囲気などどこ吹く風、ドラマをより面白くすることしか頭にない音川の注文はさらにエスカレート。

初めは音川のわがままで歯に衣着せぬ物言いに反発していた役者やスタッフ達も、彼のドラマに対するひたむきな思いと、一見「わがまま」に思えるがその実正鵠を射ている彼の発言に感化されて、次第にドラマへの情熱を取り戻していく。

果たして、無事に撮影は終わるのか?

 

と言ったような内容。

全体的にはコメディタッチですが、随所で考えさせられるような描写もあり、何より序盤からテンポの良い展開に引き込まれてあっと言う間の一時間四十五分、大変楽しく拝見致しました。

佑介さんはもちろん、それぞれの役者さんも素敵で、久々に舞台ならではの面白さを味わえたように思います。

前回の「チームラビッシュ」が比較的少人数だったの対し、今回は総勢二十一名の大所帯。

かつ、佑介さんを除けば、前作にも出演していた今井英二さんと辻川慶治くらいしか見知ったキャストがおらず、大半の方は初めて拝見する方々だったので、そう言う意味ではかなり新鮮でした。

新鮮と言えば、舞台が二時間ドラマの撮影現場と言うのも新鮮で、度々ドラマを撮影するシーンが入るので、二つの物語を同時に楽しめるような内容になっていて、それも面白い展開でしたね。

舞台作品の裏側を描いた舞台と言うのは以前に見たことがありましたが、テレビドラマの裏側と言うのは珍しい題材なのではないでしょうか。

 

以下、キャストの感想に入りますが、今回は役名とドラマの中での役名の二つがあって、マンネリを打破したい音川のアイデアからドラマ内の役名は「トニー」「ソフィア」「ケンティ」のようにいづれも欧米人の名前になっています。

そっちの方が呼びやすいので、以下、ドラマ出演者役の役者さんに言及する際には、役名で書きたいと思います。

 

まず主演の佑介さん演じる「トニー」こと音川次郎、一見わがままに思えて実は筋の通ったキャラクタは、佑介さんに似合う素敵な役どころ。

本筋の芝居はもちろんのこと、佑介さんの色々な動作も面白く、ペットボトルの早潰しなどはお見事でしたね。

後、佑介さんの「脱ぐ芝居」、実は初めて見たかも(笑)。

うまいこと役を料理する感じは流石で、個性的なトニーを、さらに円熟味を増した佑介さんが好演しておられました。

 

前述のように、物語の面白さをさらに増しているトニーの動作で個人的に好きだったのは、後半に出てくるトニーがジュリアを諭す描写。

ジュリアが考えを改めるきっかけになるすごくいいシーンなのに、この時トニーは好物のシュークリームを頬張りながら話していて、その佑介さんの頬張る演技が本当におかしくて、場違いな笑いをこらえながら見てしまいました(笑)。

 

「場違いなおかしみ」と言う要素は、キャストが段々トニーに感化されていく終盤のシリアスなシーンも多く散りばめられていて、おふざけの応酬が本当に面白かったです。

例えば、辻川さん演じる監督と今井さん演じるチャン刑事が、大人げない罵り合いを展開するくだりは大好き(笑)。

後、ドラマシーンの終盤が結構ハチャメチャでこれまた面白く、「包丁を置いたトニーが悪い」と言うさりげなくも面白い今井さんの台詞が個人的には好きです(笑)。

 

チャン役の今井英二さんを拝見するのは、「チームラビッシュ」の「ちくりん」刑事役以来でしたが、今回も面白い役どころで終始楽しませていただきました。

一人だけ「チャン」と言う東洋系の名前にぶつぶつ文句を言うくだりも面白かったですし、チャンの悪口を言っている所にちょうど今井さんが入ってくるシーン、何となく展開がわかっていてもやはり笑ってしまいますね。

「ちくりん」の時もそうでしたけど、いい味を出す感じで物語のアクセントになっていたと思います。

 

監督・佐久間裕次役の辻川慶治さんも、拝見するのは「チームラビッシュ」以来。

「チームラビッシュ」でも今回もそうでしたが、一見「いい人」そうに見えて、どこか心に鬱屈を抱えている役どころがうまいことはまって、今回の役も良かったですね。

監督だけは、最後までトニーとわかりあえずに終わってしまうのですが、現場から出ていってしまった監督のその後が気になる所でもあります。

 

初めて拝見したキャストの方では、助監督松本役の松村遼さんが印象に残りましたね。

松っちゃんとトニーのちょっと怪しい関係、ちょこちょこ入る二人の「密談」には大いに笑わせていただきました。

この手の小ネタと言うのか、節々に入る笑いと言うのも、舞台の面白さであり醍醐味ですね。 

 

後、ジュリアの末岡いずみさんも印象的で、難関オーディションを勝ち抜いてデビューしたと言う設定に説得力を感じる素敵な方でした。

彼女がトニーの言葉に考えを変える描写は、ジュリアが序盤ではかなり斜に構えていただけに印象的でしたね。

スタイリスト・大津小百合役の萩原綾乃さんも、個性的な出で立ちと相まって面白い役でしたし、彼女の「奇抜な」メイクが、終盤の伏線になるあたりはお見事でした。

 

他にキャストの中で個人的に気になったのは、音川のマネージャーで、実は父親からのお目付け役の瀧本真理演じる松長ゆり子さん。

松長さんご自身が素敵な女優さんであることはもちろん、序盤から佑介さんと絡む役だけに息もピッタリのコンビで、変わり者のトニーと常識人の真理ちゃんのコントラストの掛け合いも面白かったです。 

音川が真理ちゃんに思いがけない「ご褒美」を言い渡すラストシーンも、爽やかな物語を締めくくるに相応しい素敵なシーンでしたね。

 

全員に言及は出来なかったですが、皆さん本当にお見事でした。

舞台以外で印象的だったのが、面会の時の役者さんの雰囲気で、例えば私が佑介さんと面会するのを待っていた時に、たまたま隣を通りかかった脚本家・眞鍋さん役のあだにや結さんが会釈して声をかけてくださったり、出口では前述の末岡さんがあちらから会釈してくださったり、全体的に皆さん温かみのある印象でしたね。

 

面会で佑介さんと約二年半ぶりにお話出来たのも、個人的には収穫でした。

いつもながら気さくに応じてくださりありがたい限りです。

今回みたいな役どころは、私は拝見するのは初めてでしたが、役が違っても佑介さんの持っている何と言うか、独特の飄々とした温かみのある雰囲気は変わらなくて、(偉そうな書き方で恐縮ですが)自然体で演じているあたりはさらに円熟味を増したような印象でしたね。

 

最後に個人的な雑感を書くと、実は私の身近にもトニーみたいな人が一人います。

所謂「空気が読めない」タイプなのですが、その発言はトニーと同様、いつも正論で「より良くしたい」と言う思いから出ていて。

なので、個人的にも考えさせられる作品でしたね。

トニーみたいな生き方にはある種憧れもありますが、個人的に響いたのは、眞鍋さんが考えを改めるきっかけになった脚本に書かれた台詞に対するこだわりをトニーが語るシーン。

脚本家の方が書かれた台詞を大事に演じる役者さんと言うのは、素敵ですよね。

 

他にも色々感想があるような気がしますが、思いついたことは一通り書きましたのでひとまずこのあたりで。

いづれにせよ、面白い作品でした。

 

佑介さんの舞台をコンスタントに見たいと言うこともありますし、気が早いですが、Sai:Ai時計第三弾も期待しています。

 

帰ってきた狂乱の貴公女。

久々に、あまり間をあけずに観劇の話です。

 

先日、お馴染みアリスインプロジェクトさんの舞台「クォンタムメモリーズ・量子変数の観測者」を観劇して参りました。

ご存知、アリスインさんの舞台「クォンタムドールズ」の待望の続編と言うことで、クォンタム大好き人間の私としては喜び勇んで見に行かせていただきました。

二年前に第一作が上演され、その後、大阪と東京で再演された人気作品ですが、今回の続編も前作に勝るとも劣らず面白かったです。

前作とも密接にリンクしているストーリーで、序盤から波乱含みで終始飽きさせない二時間弱。

非常にスピード感があって尻の痛みも感じないほどで←、前作から引き続きの人物はもちろん、今作から新たに登場した人物も個性的魅力的でしたね。

例によって、まずは物語のあらすじから書いていきますと(括弧内はキャスト名、敬称は略)。

 

前作から二年後が舞台、「フレイア」と呼ばれる武器に言葉と意思、そして人の姿を与えることが出来る能力者と、武器の精霊である「エインヘリアル」の物語。

前回の戦いでフレイア達に敗れたアーデルハイド(演・高瀬川すてら)の左腕である鋼鉄の義手は、戦後に武器庫に保管されていたが、ある時それが何者かによって奪われる事件が起こる。

政府はこれを環境省属下のフレイヤ・剣城瞳(演・佐藤ゆうき)と木下燃(演・真島なおみ)に調査を命じるが、時を同じくしてソ連の特殊工作員のアンナ(演・大林ちえり)とアリアドネ(演・新木美優)も、アーデルハイドの左腕を回収する命を受けて日本に潜入する。

一方、二年前のアーデルハイドの襲撃によって命を落としたフレイアのエインヘリアルであった日本刀のふゆかぜ(演・中村朱里)を継承した、新人フレイアの尾道南華(演・関根優那)は、フレイアとしての技量を高めるべく前回の戦いを知る鞍馬兎子(演・天音みほ)や麻宮真由美(演・木内くるみ)と交流し、その結果、アーデルハイドの左腕をめぐる争いに巻き込まれていく。

やがて謎の少女ハイジ(演・牧野あやみ)と、最強のエインヘリアルである九つの柱の一つ・ゲンドゥル(演・持田千妃来)が三者の前に現れ、戦いはさらに複雑な様相を呈す。

その戦いの中で、アーデルハイドの左腕が奪われた恐るべき目的と、その意外な「隠し場所」が明らかになって行くのだが…

 

こんな感じの物語なのですが、まず前作との相違点を書けば、終盤で結構多くのフレイアが命を落とした前作と異なり、今作は割合それが少ない展開。

ストーリー上死なないといけない(?)アーデルハイド様を除けば、他に死者はおらず、誰もブライドもしないですし。

この違いは、兎子様の台詞とか、ストーリー展開上にも明確に打ち出されていましたね。

そのせいか、今作は前作よりもさらに明るいトーンと言うか、「後味の良い」終わり方で、そう言う点でもさらに私好みの作風になっていました。

それが反映されているためかどうか、主人公の南華のキャラも、前作の主人公である明里に比べてだいぶすっきりしていますしね。

 

反面、前作を見ている人にはすっきりしていますが、これが初めてのクォンタムと言う人には、ややわかりにくいかったかも。

基本設定は一通り台詞に盛り込まれいますが、台詞的に不自然にならない程度でしたからね。

まあ、これは同じアリスインさんの「魔銃ドナー」同様、続編の宿命と言うべきでないものねだりですけどね。

一点だけ気になった所を書けば、ディスエンゲージをすると全てのダメージをフレイアが食らうと言う説明が(たぶん)なくて、ストーリーの流れから察するしかないのは(南華がふゆかぜを守るためにディスエンゲージをする際に何となくそれを察せられる描写があったような)、少し不親切かも知れませんね。

 

前作との違いをもう一つ挙げれば、前作は草間さんくらいしか出てこなかった一般人の登場人物が今回は結構登場。

例えばソ連の工作員がフレイアを「化け物」と呼んでいたり、同じく国村さんがフレイアを人殺しと断じていたり(彼女のこの認識は後に変わりますが)、普通の人間がフレイアを冷ややかに見ているような様子が描かれていたのが、前回とは違う切り口で面白かったです。

 

前半では所々回想シーンが挿入され、それが終盤にあるアーデルハイド様復活の助走であり、また見る側にアーデルハイド様を強く印象づける効果があり、かつ前作の展開を何となくおさらい出来るうまい演出でしたね。

回想に入る時のBGMがモーツアルトのレクイエムの一節なのも良い。

 

音楽と言えば、今回は主題歌が前作とがらっと変わっています。

アリスインさんの舞台は、続編や再演の際にはアレンジ加えるものの曲調は似たような感じになるので、初見ではちょっとびっくり。

そして今回は、EITAさんのBGMギター生演奏が所々で入って迫力を添えてくれています。 

 

前作同様スピード感のある展開、と先に書きましたが、話自体の流れとしては割合ゆっくりで、今回登場した九つの柱はゲンドゥルのみなので、完結までにまだまだ結構時がかかるでしょうか?(笑)

まあ、その方が私としては楽しみが増えて良いですが。

後、随所に明確に前作とのつながりが語られるのですが、前作の主人公の阿良木明里については作中で特に言及なく、明里と八咫烏は今頃どうしているのでしょうかね、なんて見ながら思ったり。

 

設定で面白いのは、この世界では2018年の時点でソ連がまだ存続していること。

大半の出演者の方がソ連崩壊をリアルタイムで知らないでしょうが、そう言えば、昔我が家にあった地球儀にはソ連も西ドイツもあったなと(笑)。

ボリシェヴィキが台詞に度々出て来るのも歴史好きとしてはちょっと面白い。

どうでも良い話ですが、手塚治虫の『火の鳥』で、2000何年の設定なのに台詞にソ連が出てくる話があって、もちろんこれは手塚治虫の存命時にはソ連が健在だったことによるのですが、火の鳥もまた、ある種無数に分岐する世界の話なので、ソ連が出てきても違和感はないのかなと思ったり。

 

以下、キャストに特化した感想。

まず主人公の尾道南華は、割と癖のないキャラで、演じる関根優那さんがこのキャラクタにはまり役。

明里と違って戦い自体にはさほど抵抗はないみたいで、そのあたりも「すっきり」の要因かな(笑)。

個人的にはこの南華のキャラクタは明瞭で好きですね。

ただストーリー上、南華が持っている「謎」が話のメインになってしまって、明里みたいな明確な成長の描写がない(あることはあるのですがあっさりしている)ので、人によっては感情移入しにくい主人公かも。

もっとも、脚本を担当された麻草郁さんによれば、南華は見る側(観客)に寄せた人物像になっているとのことですので、見方によっては感情移入しやすいとも言えますが、まあ、どちらにしても私は好きなキャラクタです。

 

余談ついでですが、この新旧の主人公の個性の相違は、明里が組織に育てられて幼い頃からフレイアとして戦うことを宿命づけられていたのに対し、南華は記憶を全くなくし、フレイアとしての能力だけが自らを規定するものだったと言う両者のバックボーンに起因するもので、戦いに対する両者のスタンスが違うのも当然と言えば当然。

なので明里は普通の高校生の生活に憧れ、南華はもっと強くなりたいと願うと言う設定なんでしょうね。

それはそうと、私は南華のすっきりしたキャラクタ設定が、この手の物語の主人公としてよく出来ていると思うのですが、もしクォンタム第三弾があるとしたら、今度はどんな主人公になるのでしょうかね。

 

話を戻します。

日本のフレイアの「元締」(アンナ談)で鞍馬流の鞍馬兎子(余談ですが、兎子様の使う「鞍馬流」は京八流の方なのか、戦国期に出来た将監鞍馬流の方なのか)、兎子のエインヘリアルの大倶利伽羅広光、同じく鞍馬流のエインヘリアルの小烏丸様は、いづれもキャラクタは前作を踏襲していますが、兎子様は戦闘シーンでは主として童子切安綱を使うせいもあって、今回は「とこみつ」要素は割と少なめ。

十六歳になって成長した兎子様を、天音みほさんが好演し、前作以上に見せ場があって、副主人公的役回りでしたね。

これは余計な感想ですが、兎子様は前作ではすべての公演で黒原優梨(現・穂波優里)さんが演じていたので、彼女だったらどう演じただろうかと、つい考えてしまいますね。

 

南華のエインヘリアルのふゆかぜは、感情の抑揚があまりなく、台詞回しも淡々としているのですが、ここぞと言う時には、童子切に啖呵を切ったり、翔にぴしゃりと言い放ったりする格好良いキャラ。

演じる中村朱里さんが、見事にふゆかぜにはまっていて本当に素敵でした。

私は今回の登場人物ではふゆかぜさんが一際好きなのですが、この淡々としている所から、ひとたび感情を露わにした所の切り替えが良くて、最後にアーデルハイド様に「名も知らぬ刀に敗れるんです!」と言い放つシーンは本当に格好良かったですね。 

中村さんは、「続魔銃」で主演を務めていて、一度拝見していましたが、さらに雰囲気のある良い役者さんになっている印象でした。

 

このふゆかぜさんと南華の関係性がまた絶妙で、それが物語の核の一つでもあり。

二人の関係は最初から良好なのですが、どこか噛み合わない部分があって、それが最後に克服されてブライドする以上の力を見せるのは、前作のクライマックスに勝るとも劣らないドラマチックさでした。

 

南華のライヴァルと言うべき存在で何かにつけて張り合う松ヶ浦翔は、話の中盤で心の隙をゲンドゥルにつかれて暴走するフレイアで、演じる平塚あみさんは前作初演以来久々に拝見。

物語の後半で翔は立ち直るのですが、そのきっかけとなる相棒の蛍丸国俊が本当に良い人(人じゃないけど)で好きですね。

蛍丸を演じる星野みおさんも、柔らかな雰囲気で素敵でした。

 

そう言えば、今回のエインヘリアルには、蛍丸と愛染(後述する剣城さんのエインヘリアル)と言う同じ国俊銘の刀が出てきますが、観劇前の私の予想に反して、作中に特に両者の絡みはなし。

考えてみれば、蛍丸の作者の来国俊と、愛染の作者の二字国俊は、同じ国俊でも別人説が有力なので、単に私の勉強不足でした(笑)。

と言うか、作中ではまだ事例はないですけど、同じ刀工が打った刀が複数出てきた場合って、姉妹関係になるのですかね。

 

リタは前作と比べるとがらっと雰囲気が変わった印象。

演じる武井紗聖さんは、お名前はかねてより存じていましたが、今回初めて拝見する方。

ゲストと言う枠なので、出番は中盤以降に限られてしまうのですけど、その美少女振りは存在感抜群でしたね。

 

小烏丸様、剣技のことになると口調が汚くなるのは前回の設定を踏襲していますが、若干性格が丸くなったような(笑)。

演じる山田夏帆さんは、佇まいが小烏丸様にはまり役で、偉そうな物言いも堂に入っていましたね。

丸くなったと言えば、前作ではギラギラした部分を全面に出していた麻宮真由美も、相棒のコルトを失ったゆえか今回はかなり角の取れた人物像になっていて、その自らの道を模索し悩む真由美を木内くるみさんが好演していました。

 

可愛らしい風貌でありながら剣の腕は抜群の兎子様門下の俊英・笹本晴希役の飯塚麻結さんと、同じく兎子様門下で、作中のフレイアで唯一非命に倒れる(脚本によれば死んではいないようですが)野際深鈴役の須貝汐梨さん、お二人とも良かったですね。

須貝さんはクォンタム2017の時に田中直衛役で拝見しているのですが、今回は役ががらっと変わっているので最初気づきませんでした。

それくらいお見事な演技。

今回広光を演じていた佐伯香織さんは、知性的な思慮深い役どころで、太陽さんの広光に比べると「広光(大)」と言う感じでしたね(笑)。

 

「妖怪退治の専門家」、剣城瞳役の佐藤ゆうきさんと、木下燃役の真島なおみさんの先輩後輩コンビは、お二人とも佇まいの素敵な美人でまずそれに目を惹かれます。

二人の成長も物語の見どころの一つですが、個人的に戦いの際の剣城さんの豹変ぶりも大きな見どころでした(笑)。 

今回も初めて拝見した役者さんが多いのですが、まず最初に真島さんに目が行ったので、私、背の高い人が好きなのかな←

 

そのお二人の上司で環境省のお役人、大滝紗緒里さんが演じた別役満智流、随分変わった名字だと思ったのですが、高知の地名に由来するの実在の名字なのですね。

香宗我部氏の家臣だったのだとか、一つ勉強になりました(笑)。

 

今回の登場人物では、チームソ連の面々は独特の存在感があって個人的にお気に入り。

特にアンナ役の大林ちえりさんは、職務に忠実な冷徹な部分と、秋葉原大好きなコミカルな部分を使い分けていて良い味を出していました。

すらっとした佇まいも、まさにソ連の工作員にはまり役。

アンナのエインヘリアルのドラグノフ役の今井瞳さんは、寡黙な軍人と言う雰囲気で、途中コミカルに傾くソ連軍では一際真面目で良いアクセントでした。

 

同じくチームソ連、アリアドネ役の新木美優さんと、彼女のエインヘリアル・グラッチ役の栗野春香さんは、お二人とも度々アリスインの舞台に出演されているだけに流石の安定感。

アリアドネは殺し屋と言う設定なのですが、それとは裏腹の明るい感じのコンビが面白い。

新木さんは、いつもながらアクションがお見事でしたし、栗野さんは「続魔銃」の時のお耽美とは全然違うキャラクタだけれども、良い味を出していて、お二人のコンビネーションも絶妙でした。

 

所で、クォンタム2017では、新木さんはフレイア、栗野さんはエインヘリアルで、奇しくも今回も同じ役回り。

と言うことを、特典会の際に栗野さんにお話ししたら、ご本人はフレイアをやることを期待していたのだとか(笑)。

余談ですが、栗野さんはいつもお話をリードしてくださるので、対面接触が苦手な私は助かっています←

 

持田千妃来さん演じる九つの柱の一つゲンドゥルは、登場時から存在感抜群。

好戦的で狂気的、前作で登場した「姉」であるランドグリーズとはだいぶキャラクタは違いますが、ランと同様多くの人を殺して来た自らの存在を倦み、最後にはやはりお姉さんと同様に主人公に救われる役どころ。

彼女に比べると、お姉さんはよく出来た扱いやすい人(柱)だったのですね(笑)。

持田千妃来さんを拝見するのは、昨年の「飛ば鳥」以来、実に久々。

元々印象的な役者さんでしたが、今回のゲンドゥルに見せられて終演後の特典会で持田さんの所にうかがったのはここだけの話です←

 

ゲンドゥルは「ヒトラーの水晶玉」と言う特殊なエインヘリアルで、それを反映してか作中では多くの武器を扱い、太刀、小太刀、洋剣、鉄パイプ、チェーンソー、槍と六種類にもわたっているのですが、殺陣がお得意な持田さんが、多くの武器をとっかえひっかえして見事に魅せてくれていましたね。

ゲンドゥルはかなりアクの強い役なのですが、持田さんがこれを見事にものにしていて、平素の可愛らしい感じとはまた違った素敵さがありました。

特に目の演技が良くて、笑っているけどすごく怖い。

衣装も素敵ですし、中盤で見せるキセルをくゆらせるシーンも好きです。

 

さて、一昨年のクォンタム大阪に引き続き、今回もアーデルハイド様を演じた高瀬川すてらさん、もう見事の一言に尽きます。

序盤から少しづつ出てきていて圧倒的悪の総本山的存在感を示していますし、前半の衣装がクォンタム大阪のものだったのも、当時が思い起こされましたし、また高瀬川さんのアーデルハイド様にお会い出来たのがうれしい限り。

あの独特の台詞回し、最初の台詞聞いた時は、アーデルハイド様が帰ってきたと言う感じで鳥肌でしたし、アーデルハイド様復活の瞬間はもう大興奮でしたね。

歴代アーデルハイド様を演じた方々にはそれぞれの良さがあるのですが、すてらさんのアーデルハイド様は、威厳と威圧感と虚無感の塩梅が非常に良い。

元々独特の威厳がありましたけど、私は前作の後で何度かすてらさんの舞台を拝見しているせいか、今回はより迫力を感じましたね。

 

今回は機関銃のリデルではなく、両刃の剣を使って戦うアーデルハイド様ですが、これは演じるのが殺陣を得意とするすてらさんだったがゆえのアイデアなのだとか。

流石麻草さん、わかっていますね。

殺陣と言えば、今作でも殺陣は大いに見応えがあるのですが、特にすてらさんと持田さんが戦うシーンは、お二人の技量もあって大迫力でした。

新木さんと持田さんのシーンでも同じくですが、アクションや殺陣が上手い人同士だと、斬る方だけではなく斬られる方のやられ方もすごく綺麗だなと、今回改めて感じましたね。

ただ、今回はアーデルハイド様はお一人で戦うので、かなうならリデルも一緒に復活して欲しかったなと。

と言う、リデル推しの私としてはわがままな気持ちもあります←

 

今回はアーデルハイド様が幼少時の記憶を語りながら、牧野あやみさん演じる自らの分身と言うべきハイジに見守られて息絶えると言う、これまでの怖い部分とは違う顔を見せるラストシーンが用意されているのですが、これは麻草さんの会心の作のようで、シーンの構想が出来るとすぐにすてらさんにご連絡なさったのだとか。

特典会ですてらさんから直にうかがったのですが、お二人の信頼関係を思わせる素敵なお話を聞けました。

 

時に、今作では所々で前作の台詞やシーンの一部が挿入されていて、そのあたりはクォンタム大好き人間としてはうれしかったですね。

随所で出てくるアーデルハイド様の、

 

「私には君たちと戦う積極的理由がない。

君たちは私を止めなければならない。

勝てる戦いとは、交わる前に終わっているものだ」

 

と言う台詞が、私は作中では一際好きなセリフなのですが、またどこかでアーデルハイド様にお会いしてこの台詞を聞きたいですね。

 

例によって、言及出来なかったキャストの方もいらっしゃいましたが、皆さん本当にお見事でした。

まだまだ書ききれない部分もあるのですが、きりがないのでこのあたりで私なりのクォンタムメモリーズの感想、「ひとまずの幕」(兎子様風)としたいと思います。

 

こんな長ったらしい感想を書いて改めて思うのは、やはりクォンタムは中毒性の高い舞台だなと。

これは「続魔銃」の時も書きましたが、チャンバラ時代劇テイストの明るい作風、と言うと語弊があるかも知れませんが、奥行きのあるテーマを含みながらも、重苦しい展開でもなく救いようのない悲壮感もなく、全体としてはすっきりとまとめているこの作品のトーンが、やはり私は大好きです。

クォンタムは「ドールズ」を見た時からのファンと言うか、たぶんこの作品が今の私の観劇生活を規定していると思うので、今回続編が見られたことはただただうれしいですね。

クォンタムを最初に見た時は、こんなにわくわくゾクゾクする面白い芝居があるのかと、衝撃を受けたことを覚えていますが、色々舞台を見て行くと自分には合わない作品、つまらない作品に当たる時もある中で、こんなにも自分の好みに合う作品にめぐり合えたことに感謝ですね。

 

気の早い話ですが続々編に今から期待しつつ(笑)、このこれまでにないくらい長い感想を終わりにしたいと思います。

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