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○「空の大怪獣 ラドン」

東宝
空の大怪獣 ラドン


水爆実験による地殻変動で蘇った古代のトンボ・メガヌロン。
そしてさらには、それらの幼虫を食料にする巨大翼竜・ラドンが蘇る。
ラドンはプテラノドンの変異体で、数十倍の大きさを持ち超音速で飛行する。
このため行動半径が広く、被害は極東アジア一体に拡がった。
ラドンを補足した自衛隊は直ちに戦闘機による迎撃を試みるが、空中を高速で自在に飛行するラドンに苦戦する。
ようやく翼にダメージを負わせてラドンを追い込むが、逆に窮地のラドンが福岡市内に突入し、市内は阿鼻叫喚の地獄と化す。
その内に二匹目のラドンが現れ、傷ついたラドンを助けて二匹で飛び去っていった。
このままラドンが増えればどうにもならなくなってしまう。
そこで、彼らの巣と目される阿蘇山を噴火させ、巣ごと破壊してしまう作戦が取られるが…。


これは怪獣映画としては、もはや異色の存在と言ってもいいのではないでしょうか。
とにかく大人向けの作品で、前半は炭鉱の出水事件と人身事故、それに関連して失踪した男が犯人と疑われ、彼の妹は犯人の妹として肩身の狭い思いをする的な昼メロっぽいエピソードなどを織り交ぜつつ展開します。
事故死した男の妻の背中で泣く赤ん坊。
この赤ん坊は、つまり一家の大黒柱を失った家庭の暗澹たる今後を象徴しているわけですが、こういうのはさすがに子供には難しすぎです。


円谷英二率いる特撮チームが大変いい仕事をしていて、特に福岡市内の炎上シーンなどは見ごたえがあります。

ラストのラドンの死も悲劇的で、感動します。

ラドンには決して悪気は無いけれど、さりとて人間にとって迷惑な生き物である以上共存の道は有り得ません。

自らが生き残るためにはラドンを駆除しなければならない。

分かっていても、自ら巣と運命を共にし、また伴侶と運命を共にするラドンのつがいの姿は涙を誘います…。

しかし残念ながらこの最期も、何故ラドンが噴火する阿蘇山に舞い戻ったのか子供には理解し難しいでしょう。


個人的にはこういう演出方針には非常に愛情を感じます

全編に渡る良質なドラマは、見ていて不思議と心が安らぎました。

「大人も怪獣映画を見ていいんだ」と言われているような気分です(笑

もちろん、考証などの面できちんとつめれば色々アラが出てくるんだとは思いますが、一番大事なのは見て面白いことであって、怪獣がいかにユニークだろうと考証がしっかりしていようと、つまらない作品はつまらないわけです。

面白い作品は面白い原因が論じられるし、つまらない作品はつまらない原因が論じられ…ってこれを言っちゃあオシマイでしょうか?

ただ、作品としてはやはりサービス精神に欠ける部分を指摘せざるを得ません。
事実、これだけよくできているにもかかわらず、ラドンには続編が製作されていません。
それもこの内容では…。


作品の真髄「面白さ」は大人も子供も普遍だと思います。
ですから、表現手法の工夫次第では、このラドンももっと違った評価になったのではないでしょうか…?

大人向けの怪獣ドラマです。


製作年 : 1956年
製作国 : 日本
配 給 : 東宝
監 督 : 本多猪四郎 ホンダイシロウ
原 作 : 黒沼健 クロヌマケン
脚 色 : 村田武雄 ムラタタケオ
     本村武
特撮監督 : 円谷英二 ツブラヤエイジ
出 演 : 佐原健二 サハラケンジ (河村繁)
     平田昭彦 ヒラタアキヒコ (柏木久一郎)
     田島義文 タジマヨシブミ (井関)
     松尾文人 マツオフミンド (葉山)
     草間璋夫 クサマアキオ (須田)



空の大怪獣 ラドン(1956) - goo 映画
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