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○「男たちの大和」

東映
男たちの大和 / YAMATO


金曜日が解禁だったので、月曜日の昼間という狙いがまんまと的中。
難なく借りることができました。
久々の戦争ネタの大作なので、それはもう鼻息荒げて見ましたよ。
というわけで、少々長いですが感想です。


・大和の特攻出撃にまつわる悲劇の物語
この作品は、大和の特攻出撃の悲劇を描いた物語です。
もちろん大和の最後の出撃の顛末や特攻のなんたるかを描いているものであって、戦争そのものをどうこう言う作品ではない点が重要なポイントだと思います。


・雰囲気作り
もちろん話題になった6億の大和セットは凄いです。
全く同じものを撮影しても、CGと実物(レプリカ)では存在感がまるで違います。
これは「ウインドトーカーズ」や「パールハーバー」と、「トラトラトラ!」や「遠すぎた橋」、「プライベートライアン」などを見比べていただければ一目瞭然だと思います。
もちろん、低予算映画に出てくる出来の悪いレプリカとは比べるべくもありませんが。
いずれにせよ、この点をかんがえて、あえて実物大セットという英断を下したスタッフの方々に拍手を送りたいと思います。

またそれ以外にも、たとえば主人公の青年の実家の漁船や、呉のドック周辺など、どこまでCGなのか分かりませんが凄く良くできていて、この辺りも90年代以降の日本の戦争映画としては最高レベルで嬉しい誤算でした。


・蒼井優の好演
この娘は「花とアリス」で完全に化けましたね。
今回の作品の出演者の中では最高の演技でした。
この演技に泣かされた人はかなり多い筈です。
僕もぐちゃぐちゃになりました…。


・特攻
母親の心情、養子という当時しばしば見られた肉親との複雑な関係、何も言わなくても態度で「特攻」と感づく雰囲気、特攻に出る兵士達の心情…。
様々な角度から特攻を描き、その全てに無理な「作り」が無くすんなりと見ることができたのは大きいです。
特に、生還した主人公が戦死した戦友の母親に報告に行くシーンなどは素晴らしかったです。


・善人ばかりの不自然
一方、ここはやっぱりというか何と言うか…。
軍上官や大和艦上での兵士達の態度などは、もう少しリアルにできなかったかなぁと思います。
上官が部下の兵卒に対して理解がありすぎるのです。
命を賭して戦うことに対してネガティブと受け取られるような発言は、例え具体的にそれを取り締まるようなことが行われない場所でも暗黙のルールとしてできないような雰囲気があった筈です。
ましてや敗色濃厚なあの当時の話ですから、理性を失いかける者が多数いてもおかしくありません。
そういう背景だからこそ部下に理解がある上官が格好いいのであって、みんな良き理解者というのはリアリティ的にも問題だし、演出的にもメリハリがなくてつまらないと思います。


・日本における「戦争映画」の限界
どうなんでしょう。
例え演出上の話であっても、戦死者のことを悪く描いたり、エンターテイメントとして消化したりすることが許されない雰囲気があるのでしょうか。
こういう問題には色々な意見があってしかるべきなのに、日本の戦争映画は皆判を押したように「戦争反対」「平和主義」の大合唱です。
こういうのって、かえって気味悪く感じます。

第一、そんなことは言われなくても分かっていることです。
その点「ローレライ」や、例え作品としては失敗だったとしても「亡国のイージス」などは果敢に挑戦していたので気持ちよかったですけど…。


仮に感動作として考えるにしても、まだどこか「いい子」ぶってるというか、手加減してる気がしてなりません。
国内ではノスタルジーや人道主義も通用するかもしれませんが、この内容ではおそらく、当時敵側に回った人々をも感動させるレベルとは程遠い気がします。
もっと真実に迫り、全てを正直に曝け出してこその人間描写だと思います。


これを乗り越えないと、国際的な評価を得られる戦争映画は、当分作れそうもないような気がするのですが…。


解説
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD36849/index.html


製作年 : 2005年
製作国 : 日本
配 給 : 東映
監 督 : 佐藤純彌 サトウジュンヤ
原 作 : 辺見じゅん ヘンミジュン
脚 本 : 佐藤純彌 サトウジュンヤ
出 演 : 反町隆史 ソリマチタカシ (森脇庄八)
     中村獅童 ナカムラシドウ (内田守)
     鈴木京香 スズキキョウカ (内田真貴子)
     松山ケンイチ マツヤマケンイチ (神尾克己)
     渡辺大 ワタナベダイ (伊達俊夫)