△「亡国のイージス」
レンタル屋に行くタイミングが悪すぎて、中々借りることができなかった作品を11月30日になってようやくゲットし、嬉々として見てみた。
まぁさんざん予告編やらCMやら原作やらで既に新鮮味は失われてしまっているけど、日本人を煽動して演習中の護衛艦をジャックし、首都東京を攻撃・破壊することで、ひいては本国北朝鮮の政府転覆をも狙う工作員、という発想は中々大胆と言える。
逆に言えば、この部分に多くの時間を割いたが故に、残りの部分の描写が平均的に薄くなってしまい、作品の力点が何ともボヤけてしまった。
例えば女工作員の存在意義。着替え中に兄貴の工作員が部屋に入ってくるシーンはセリフが一切無いにもかかわらず印象的だし、水中で如月と戦うシーンで突然キスをするなど、意味深な設定であるにもかかわらずその説明がほとんど無いため、これらのシーンが無駄になってしまっている。
また反乱自衛官らの動機付けも薄い。
レビューにおいて批判が大多数を占めるのも、この失敗によるところが大きそうだ。
やはり一本の映画作品として独立して楽しめるポテンシャルが無くては失敗作と言わざるを得ない。
「原作を読まなきゃ分からない」では困るのだ。
もう少し「映画にとって」不必要なシーンを省略することで、テーマの表現に力を注ぐべきだった。
たとえ細かい部分が「原作と違う」と批判を受けようとも、原作の持つテーマをきちんと表現しきれていれば映画作品としては成功なのだ。
救いは、本物の護衛艦や戦闘機を使ったシーンの迫力と、やはり主演クラスの俳優の好演だろう。
戦闘シーンも「見せ方」という点ではやはり食い足りなさを感じるものの、これまでの邦画の軍事モノと比較すればかなり進歩したとは言える。
また真田広之や中井喜一、佐藤浩市、寺尾聡といった堂々たるキャスティングは、それだけでも一見の価値あり。
色々言っておきながら、最後に一言、趣味の分野で突っ込みを入れてみたいのだが。
序盤で、演習の僚艦を対艦ミサイルで撃沈するシーンがあるが、あのシーンで撃沈される護衛艦が最後に近接防衛のための装備である「ファランクス(自動照準のバルカン砲で弾幕を張ってミサイルなどを迎撃するための装備)」を使用せずに撃沈されたのは何か意味があるのだろうか?
あの程度の攻撃で沈められるのなら、海自の高速ミサイル艇や通常護衛艦、横須賀の米軍のフリゲートやイージス艦、さらには地上発射型の対艦ミサイルでも十分撃沈が可能だと思うのだが…。
(補足:これについては後日人に訊いたところによると、原作の方ではきちんと説明されているとのこと。やっぱり尺が足りなかったんだろうなぁ;)
全編に渡って慢性的に「説明不足」な作品。
解説
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD7211/index.html
製作年 : 2005年
製作国 : 日本
配 給 : 日本ヘラルド映画=松竹
監 督 : 阪本順治
出 演 : 真田広之
寺尾聰
佐藤浩市
中井貴一
勝地涼
チェ・ミンソ
安藤政信
原田芳雄