CGMの現在と未来: 初音ミク、ニコニコ動画、ピアプロの切り拓いた世界
東京大学で行われた情報処理学会 創立50周年記念全国大会の特別セッション
「CGMの現在と未来: 初音ミク、ニコニコ動画、ピアプロの切り拓いた世界」へ行ってきました。
前日はミクの日感謝祭でしたから、イベントの内容は随分異なりますが、ミク2DAYSです。
ちょうど東大は合格発表の日で、赤門の前から大賑わい。
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/91/ee/j/o0600045010446320028.jpg?caw=800)
早くもサークルの勧誘がはじまっていて、どの大学でも今年もこのような光景が繰り広げられるのですね。
会場の教室は700人規模教室でほぼ満員。
東大に行くことはあっても研究室ばかりで、実は教室の机に座るのは初めて。
このキャンパスな雰囲気、あぁあの頃は楽しかったなぁ。
開演前には、ニコニコ動画で募集していたこのイベントの宣伝動画をスクリーンで上映。
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/90/00/j/o0600045010446320031.jpg?caw=800)
ミクの声は流れるとは思っていたけど、東大で「ゆっくり」が聴けるとは思ってもいませんでした。
会場からは笑いが。
ゆっくり凄い!
こちらの手書きアニメの動画は、上映後会場から拍手が!
こうしたニコニコ動画に投稿された宣伝動画の上映を終えて、いよいよ開演となりました。
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/20/00/j/o0600045010446320029.jpg?caw=800)
この日のメンバーは、
司会
後藤 真孝 産業技術総合研究所 情報技術研究部門
講演
剣持 秀紀:ヤマハ株式会社 サウンドテクノロジー開発センター
伊藤 博之:クリプトン・フューチャー・メディア株式会社
戀塚 昭彦:株式会社ドワンゴ 研究開発本部
濱野 智史:株式会社日本技芸
という豪華なラインアップ。
後藤氏の司会を挟みながら、各パネラーが講演、最後にトークセッションがある、
という感じです。
以下、順番にどんなことを話したのか手元のメモを参照に箇条書きしてみます。
また、この講演はニコニコ生放送、Ustreamによる動画中継、twitterでは本家tsudaりがあって
会場以外のリアクションもダイレクトに帰ってくる面白いものでした。
会場スクリーンの右手には、ニコニコ生放送の画面が写しされていて、
ニコニコ動画のコメントを通じたリアクションがリアルタイムで表示されていました。
これ、たまらなく面白いですね。イベントでは初体験でした。
ヤマハ:剣持氏「歌声合成の過去・現在・未来」
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/cf/1c/j/o0600045010446320032.jpg?caw=800)
VOCALOIDの開発者であり、マネジャーである剣持氏の講演は、
歌声音声の歴史を簡単に振り返りながら、今後どのような可能性があるのかを提示するもの。
歌声音声は古くは1960年代から存在。
当時は画期的だったのかもしれないが、デモ再生された古いソフトの音声は人間の声に
いびつなエフェクトをかけたような印象。
歌声音声はいくつかの種類に分類されるが、
ヤマハが開発したVOCALOIDは「準物理モデル」と「スペクトルモデル」の中間。
歌声合成を利用する理由は、
「ボーカルの代わりとして」
「歌ってくれる人がいないから」
といった消極的な理由から
「動画サイトに公開した際にミクのタグがつけば注目を集める」
「可愛い声が好き」
といった積極的な理由までさまざま。
剣持氏は、VOCALOIDは人間の歌手の単なる代用以外のものにならなくてはならない、と説く。
今後の展望として、1声のバリエーション拡大、2利用場面拡大、3ユーザー層拡大を挙げた。
・歌声のバリエーション拡大のアプローチは、音楽ジャンル・歌手のスタイルの拡大と言語の拡大。
言語のテストバージョンとして、この日はスペイン語のボーカロイドのデモが披露。
(かっこよかったです、ミクとかとは系統が違ってクール)
また当初の目的であった「歌声」としての目的から「歌声以外」への広がりについて言及。
VOCALOID Flexというソフトのデモを通じて、感情を込めて朗読するようなスタイルを
VOCALOIDを使ってどうやって行うか、という仕組み。
・利用場面の拡大としては、
現状のニコニコ動画での発表という目的から、今後はコンサートでの活用や家電・ロボットへ。
・ユーザー層の拡大については、「作る人」「聴く人」の垣根が崩れていくことによって、
「私も作ってみよう!」という思いから、最終的には「みんなで作ってみよう」ということになるのでは。
未来予想としては、VOCALOIDで録音しようという選択肢が当たり前のようになるのでは?
と述べて、講演を終えた。
クリプトン:伊藤氏「初音ミクas an interface」
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/56/2a/j/o0600045010446320034.jpg?caw=800)
2番手は初音ミクの発売元であり、SNSピアプロを運営するクリプトンの伊藤氏。
「初音ミク」とは、元々DTM市場を狙った非常にニッチな製品。
ところが初音ミクが、楽曲・イラスト・コスプレなど様々な創作のインターフェースとなった。
こうして初音ミク=インターフェースとなるための取り組みを紹介。
2つの間の情報のやり取りを仲介するインターフェースは誰でも使えるものでなければならない。
一方、著作権法とは誰でも勝手に使えないようにするもの。
この相反するものを成立させるために、ライセンスが必要になった。
そのための「キャラクター利用ガイド」「ピアプロ・リンク」を通じて、
クリプトンが持っているキャラクターや製品であればピアプロを通じて、
公開や第3者による利用を可とした(ただし、営利目的をのぞく)
たとえばミクの作品をネットで公開することは著作権法的にはグレーだが、
ピアプロの規約を通じて可としているということ。
未来予想としては、
・ピアプロのオープン化
・音楽制作のコモディティ化
・密から疎へ
というキーワードを挙げた。
ドワンゴ:戀塚氏「運営側から見たニコニコ動画の現在と未来」
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/17/otemachi/55/95/j/o0600045010446863858.jpg?caw=800)
ニコニコ動画の開発総指揮を行っている戀塚氏(在宅勤務でも有名)は、
運営側(開発側)から見たニコニコ動画の歴史を説明。
ニコニコ動画とは何か?=時系列を持つコンテンツにコメントを同期再生させることで、
「祭り」に参加できるWebサービス群
現在はニコニコ動画やニコニコ生放送が主力コンテンツ。
CGMの変遷としては、コメントの時代→タグの時代→コミュニティの時代→ライフログの時代(今)
・コメントの時代
動画にコメントを入れていくことを広めていく時期。
使い方をユーザーにゆだねたところ、リアクション・突っ込み・字幕→弾幕・コメントアートに。
動画を楽しむために視聴者がコメントを通じて貢献する。
また作り手にはコメントが創作のモチベーションにもなった。
また、リアルタイムで質の高いランキングが「祭り」への参加しやすさに繋がった。
・タグの時代
ニコニコ動画のタグの制度はとても独特なルールがある。
タグは10個まででユーザーのトレンドに従ってドンドンタグが変えられ、
優れたネーミングのタグは一瞬にして広まる
初音ミク、はちゅね、ニコニコ技術が出てきたのはこの時期。
タグによる動画ネットワークの組織化が進んだ。
・コミュニティの時代
ユーザーが増えることで趣向の幅が広がり、ユーザー感に衝突が生まれてきた。
そこで同じ志を持つ人たちでグループを作り、コンテンツを育てていくようにした。
ニコニコミュニティ、ニコニコモンズ、ニコニコ生放送がスタート。
ニコニコ動画はいつでも楽しめる分、ダイレクトな反応は薄い。
ニコニコ生放送は、生放送故に楽しめる時間は制限されるが、リアルタイムで反応が得られる。
その二つが平行することで、ニコニコ動画内で情報がふくれあがり、
ユーザーにとっては理解しづらい構造になった。
・ライフログの時代(今)
ニコニコ動画内に、ニコレポ、ウォッチリスト、twitterとの連携をとるほか、
生放送の内容をあとから視聴できるタイムシフトなどの施策をとっている。
・未来予想
「過去からさかのぼって祭り」→コメントの時代・タグの時代
「いつでも祭り」の拡大→コミュニティの時代・ライフログの時代
そこから「未来をネタに祭り」にするという方向へいくのでは、と。
そのためには、未来を予測すること、調整すること、育てていくことがキーになると述べた。
日本技芸:濱野氏「日本のネットカルチャーはどこへいくのか」
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/5f/49/j/o0600045010446320229.jpg?caw=800)
日本技芸のリサーチャー濱野氏は、日本独自のCGMとネットカルチャーについて講演した。
題材は主にニコニコ動画。
前置きとしてトフラーなどの例をあげながら情報社会論の起源と現在をのべ、
フリーミニアムとクリエイティビティを両立するという時代的要請に応えるべく、
CGM的なものが根付いていると指摘。
日本のCGMが海外のそれと異なり、独自で不思議な成長を遂げている背景には
日本のオタクカルチャーが関係していると注目。
80年くらいからコミケなどを通じて、オタク間でキャラクターに設定を与えて
共有していくという文化が定着していた。それがネットとして拡大したという判断。
つまりCGMが存在する前からCGM的なものは存在していたという。
次に日本のCGMを理解するために、日本のCGMの環境を解説。
ニコニコ動画の「いつでも祭り」という疑似同期型アーキテクチャーの
インパクトはとても大きい。
なぜならこれまではあらゆるパッケージメディアは、ライブ共有型のメディア以上の
感動を与えることは出来ないといわれていた。
ところがニコニコ動画では視聴する経験が同時瞬間でなくても共有体験を得て、
大きな感動を得ることができる(アウラが生じる)
「今・ここ性の複製技術」というニコニコ動画の画期的な点は、
21世紀のメディア史に残ることであり、
私が絶対に残す!とここで濱野氏が高らかに宣言。
次に述べたのがN次創作について
これまでの同人誌の2次創作というのは、オリジナルを頂点に、垂直に2次創作が広がった。
ニコニコ動画で起きているN次創作とは、垂直方向ではなくアメーバ状にドンドン派生していく。
例えばミクの曲がアップされれば、歌ってみた、踊ってみた、演奏してみた、動画を作成してみた、
合唱してみた、など拡大していく。
ニコニコがYoutubeと比べて独特なのには、ニコニコ動画のタグの仕組みが影響。
タグが淘汰され、タグで会話され、タグが分散する。
ニコニコ動画の疑似同期性フレクソノミーといった得意なアーキテクチャーが
海外のサービスと大きくことなることに影響を及ぼしたという。
そして最後に日本のCGM環境の未来として
・文化 ニコニコ動画と初音ミクのグローバル化
・情報 ユビキタス時代における「ニコニコ的」アーキテクチャでコンテンツの制作と消費がどのように変化していくのか
・経済 N次創作を前提としたコンテンツプラットフォームは構築可能か
・政治 「キャラクラシー」(初音ミク出馬)は実現できるのか
といった項目を挙げた。
(またしても出馬ネタを出すとは……本気で考えているのかも。アイデアは凄く面白いですけど)
その後は、海外展開やマネタイズについてのトークセッションとなり、
予定次回を大きくオーバーして閉会となった。
この講演会、会場とパネラー、そしてネットの向こう側の雰囲気に妙な一体感があって、
最後関係者全員へ拍手をするときに、
「おいおい、講演を聴いているだけなのにまるでライブのような一体感はなんなんだ!」
と震え上がってしまいました。それって愛かもしれないですねwww
これだけのメンバーがそろって、講演をする機会はなかなか無いと思うので、
タイミングよく巡り会い、参加することができてよかったです。
ちなみにこのイベントを知ったのは、twitter経由でした。
※講演の内容はぐじゃぐじゃに書きなぐったメモを分解してまとめているので
真実と異なることがあるかもしれません。
ニコニコ生放送のタイムシフトで講演を視聴できるようなので、
動画で疑似同期することをおすすめします。
「CGMの現在と未来: 初音ミク、ニコニコ動画、ピアプロの切り拓いた世界」へ行ってきました。
前日はミクの日感謝祭でしたから、イベントの内容は随分異なりますが、ミク2DAYSです。
ちょうど東大は合格発表の日で、赤門の前から大賑わい。
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/91/ee/j/o0600045010446320028.jpg?caw=800)
早くもサークルの勧誘がはじまっていて、どの大学でも今年もこのような光景が繰り広げられるのですね。
会場の教室は700人規模教室でほぼ満員。
東大に行くことはあっても研究室ばかりで、実は教室の机に座るのは初めて。
このキャンパスな雰囲気、あぁあの頃は楽しかったなぁ。
開演前には、ニコニコ動画で募集していたこのイベントの宣伝動画をスクリーンで上映。
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/90/00/j/o0600045010446320031.jpg?caw=800)
ミクの声は流れるとは思っていたけど、東大で「ゆっくり」が聴けるとは思ってもいませんでした。
会場からは笑いが。
ゆっくり凄い!
こちらの手書きアニメの動画は、上映後会場から拍手が!
こうしたニコニコ動画に投稿された宣伝動画の上映を終えて、いよいよ開演となりました。
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/20/00/j/o0600045010446320029.jpg?caw=800)
この日のメンバーは、
司会
後藤 真孝 産業技術総合研究所 情報技術研究部門
講演
剣持 秀紀:ヤマハ株式会社 サウンドテクノロジー開発センター
伊藤 博之:クリプトン・フューチャー・メディア株式会社
戀塚 昭彦:株式会社ドワンゴ 研究開発本部
濱野 智史:株式会社日本技芸
という豪華なラインアップ。
後藤氏の司会を挟みながら、各パネラーが講演、最後にトークセッションがある、
という感じです。
以下、順番にどんなことを話したのか手元のメモを参照に箇条書きしてみます。
また、この講演はニコニコ生放送、Ustreamによる動画中継、twitterでは本家tsudaりがあって
会場以外のリアクションもダイレクトに帰ってくる面白いものでした。
会場スクリーンの右手には、ニコニコ生放送の画面が写しされていて、
ニコニコ動画のコメントを通じたリアクションがリアルタイムで表示されていました。
これ、たまらなく面白いですね。イベントでは初体験でした。
ヤマハ:剣持氏「歌声合成の過去・現在・未来」
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/cf/1c/j/o0600045010446320032.jpg?caw=800)
VOCALOIDの開発者であり、マネジャーである剣持氏の講演は、
歌声音声の歴史を簡単に振り返りながら、今後どのような可能性があるのかを提示するもの。
歌声音声は古くは1960年代から存在。
当時は画期的だったのかもしれないが、デモ再生された古いソフトの音声は人間の声に
いびつなエフェクトをかけたような印象。
歌声音声はいくつかの種類に分類されるが、
ヤマハが開発したVOCALOIDは「準物理モデル」と「スペクトルモデル」の中間。
歌声合成を利用する理由は、
「ボーカルの代わりとして」
「歌ってくれる人がいないから」
といった消極的な理由から
「動画サイトに公開した際にミクのタグがつけば注目を集める」
「可愛い声が好き」
といった積極的な理由までさまざま。
剣持氏は、VOCALOIDは人間の歌手の単なる代用以外のものにならなくてはならない、と説く。
今後の展望として、1声のバリエーション拡大、2利用場面拡大、3ユーザー層拡大を挙げた。
・歌声のバリエーション拡大のアプローチは、音楽ジャンル・歌手のスタイルの拡大と言語の拡大。
言語のテストバージョンとして、この日はスペイン語のボーカロイドのデモが披露。
(かっこよかったです、ミクとかとは系統が違ってクール)
また当初の目的であった「歌声」としての目的から「歌声以外」への広がりについて言及。
VOCALOID Flexというソフトのデモを通じて、感情を込めて朗読するようなスタイルを
VOCALOIDを使ってどうやって行うか、という仕組み。
・利用場面の拡大としては、
現状のニコニコ動画での発表という目的から、今後はコンサートでの活用や家電・ロボットへ。
・ユーザー層の拡大については、「作る人」「聴く人」の垣根が崩れていくことによって、
「私も作ってみよう!」という思いから、最終的には「みんなで作ってみよう」ということになるのでは。
未来予想としては、VOCALOIDで録音しようという選択肢が当たり前のようになるのでは?
と述べて、講演を終えた。
クリプトン:伊藤氏「初音ミクas an interface」
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/56/2a/j/o0600045010446320034.jpg?caw=800)
2番手は初音ミクの発売元であり、SNSピアプロを運営するクリプトンの伊藤氏。
「初音ミク」とは、元々DTM市場を狙った非常にニッチな製品。
ところが初音ミクが、楽曲・イラスト・コスプレなど様々な創作のインターフェースとなった。
こうして初音ミク=インターフェースとなるための取り組みを紹介。
2つの間の情報のやり取りを仲介するインターフェースは誰でも使えるものでなければならない。
一方、著作権法とは誰でも勝手に使えないようにするもの。
この相反するものを成立させるために、ライセンスが必要になった。
そのための「キャラクター利用ガイド」「ピアプロ・リンク」を通じて、
クリプトンが持っているキャラクターや製品であればピアプロを通じて、
公開や第3者による利用を可とした(ただし、営利目的をのぞく)
たとえばミクの作品をネットで公開することは著作権法的にはグレーだが、
ピアプロの規約を通じて可としているということ。
未来予想としては、
・ピアプロのオープン化
・音楽制作のコモディティ化
・密から疎へ
というキーワードを挙げた。
ドワンゴ:戀塚氏「運営側から見たニコニコ動画の現在と未来」
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/17/otemachi/55/95/j/o0600045010446863858.jpg?caw=800)
ニコニコ動画の開発総指揮を行っている戀塚氏(在宅勤務でも有名)は、
運営側(開発側)から見たニコニコ動画の歴史を説明。
ニコニコ動画とは何か?=時系列を持つコンテンツにコメントを同期再生させることで、
「祭り」に参加できるWebサービス群
現在はニコニコ動画やニコニコ生放送が主力コンテンツ。
CGMの変遷としては、コメントの時代→タグの時代→コミュニティの時代→ライフログの時代(今)
・コメントの時代
動画にコメントを入れていくことを広めていく時期。
使い方をユーザーにゆだねたところ、リアクション・突っ込み・字幕→弾幕・コメントアートに。
動画を楽しむために視聴者がコメントを通じて貢献する。
また作り手にはコメントが創作のモチベーションにもなった。
また、リアルタイムで質の高いランキングが「祭り」への参加しやすさに繋がった。
・タグの時代
ニコニコ動画のタグの制度はとても独特なルールがある。
タグは10個まででユーザーのトレンドに従ってドンドンタグが変えられ、
優れたネーミングのタグは一瞬にして広まる
初音ミク、はちゅね、ニコニコ技術が出てきたのはこの時期。
タグによる動画ネットワークの組織化が進んだ。
・コミュニティの時代
ユーザーが増えることで趣向の幅が広がり、ユーザー感に衝突が生まれてきた。
そこで同じ志を持つ人たちでグループを作り、コンテンツを育てていくようにした。
ニコニコミュニティ、ニコニコモンズ、ニコニコ生放送がスタート。
ニコニコ動画はいつでも楽しめる分、ダイレクトな反応は薄い。
ニコニコ生放送は、生放送故に楽しめる時間は制限されるが、リアルタイムで反応が得られる。
その二つが平行することで、ニコニコ動画内で情報がふくれあがり、
ユーザーにとっては理解しづらい構造になった。
・ライフログの時代(今)
ニコニコ動画内に、ニコレポ、ウォッチリスト、twitterとの連携をとるほか、
生放送の内容をあとから視聴できるタイムシフトなどの施策をとっている。
・未来予想
「過去からさかのぼって祭り」→コメントの時代・タグの時代
「いつでも祭り」の拡大→コミュニティの時代・ライフログの時代
そこから「未来をネタに祭り」にするという方向へいくのでは、と。
そのためには、未来を予測すること、調整すること、育てていくことがキーになると述べた。
日本技芸:濱野氏「日本のネットカルチャーはどこへいくのか」
![$大手町デイズ-100310](https://stat.ameba.jp/user_images/20100311/02/otemachi/5f/49/j/o0600045010446320229.jpg?caw=800)
日本技芸のリサーチャー濱野氏は、日本独自のCGMとネットカルチャーについて講演した。
題材は主にニコニコ動画。
前置きとしてトフラーなどの例をあげながら情報社会論の起源と現在をのべ、
フリーミニアムとクリエイティビティを両立するという時代的要請に応えるべく、
CGM的なものが根付いていると指摘。
日本のCGMが海外のそれと異なり、独自で不思議な成長を遂げている背景には
日本のオタクカルチャーが関係していると注目。
80年くらいからコミケなどを通じて、オタク間でキャラクターに設定を与えて
共有していくという文化が定着していた。それがネットとして拡大したという判断。
つまりCGMが存在する前からCGM的なものは存在していたという。
次に日本のCGMを理解するために、日本のCGMの環境を解説。
ニコニコ動画の「いつでも祭り」という疑似同期型アーキテクチャーの
インパクトはとても大きい。
なぜならこれまではあらゆるパッケージメディアは、ライブ共有型のメディア以上の
感動を与えることは出来ないといわれていた。
ところがニコニコ動画では視聴する経験が同時瞬間でなくても共有体験を得て、
大きな感動を得ることができる(アウラが生じる)
「今・ここ性の複製技術」というニコニコ動画の画期的な点は、
21世紀のメディア史に残ることであり、
私が絶対に残す!とここで濱野氏が高らかに宣言。
次に述べたのがN次創作について
これまでの同人誌の2次創作というのは、オリジナルを頂点に、垂直に2次創作が広がった。
ニコニコ動画で起きているN次創作とは、垂直方向ではなくアメーバ状にドンドン派生していく。
例えばミクの曲がアップされれば、歌ってみた、踊ってみた、演奏してみた、動画を作成してみた、
合唱してみた、など拡大していく。
ニコニコがYoutubeと比べて独特なのには、ニコニコ動画のタグの仕組みが影響。
タグが淘汰され、タグで会話され、タグが分散する。
ニコニコ動画の疑似同期性フレクソノミーといった得意なアーキテクチャーが
海外のサービスと大きくことなることに影響を及ぼしたという。
そして最後に日本のCGM環境の未来として
・文化 ニコニコ動画と初音ミクのグローバル化
・情報 ユビキタス時代における「ニコニコ的」アーキテクチャでコンテンツの制作と消費がどのように変化していくのか
・経済 N次創作を前提としたコンテンツプラットフォームは構築可能か
・政治 「キャラクラシー」(初音ミク出馬)は実現できるのか
といった項目を挙げた。
(またしても出馬ネタを出すとは……本気で考えているのかも。アイデアは凄く面白いですけど)
その後は、海外展開やマネタイズについてのトークセッションとなり、
予定次回を大きくオーバーして閉会となった。
この講演会、会場とパネラー、そしてネットの向こう側の雰囲気に妙な一体感があって、
最後関係者全員へ拍手をするときに、
「おいおい、講演を聴いているだけなのにまるでライブのような一体感はなんなんだ!」
と震え上がってしまいました。それって愛かもしれないですねwww
これだけのメンバーがそろって、講演をする機会はなかなか無いと思うので、
タイミングよく巡り会い、参加することができてよかったです。
ちなみにこのイベントを知ったのは、twitter経由でした。
※講演の内容はぐじゃぐじゃに書きなぐったメモを分解してまとめているので
真実と異なることがあるかもしれません。
ニコニコ生放送のタイムシフトで講演を視聴できるようなので、
動画で疑似同期することをおすすめします。