麻雀小僧94話 田中の話 (作品)  押川 | 押川雲太朗の万事いいかげん

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漫画家 押川雲太朗のブログ。日々の何でもない事や、たまに仕事の告知など、書いていきます

最近田中が大活躍しております。


私の周りでは、田中はあまり評判が良くない。


田中が活躍すると、

「また田中がでしゃばってる。」

などという話をよく聞く。


担当の編集者も

あまり田中が好きではないようである。


担当曰く、

「やってることや思ってることが自分と同じレベルなので、

田中が妬んだり失敗したりすると嫌な気分になる。」

だそうである。


確かに田中は特殊なキャラとの

対比のために置いているキャラなので、

普通の人がやりそうな失敗をよくやる。


麻雀においても同じである。


漫画には、そういう人物を登場させることも

必要なのである。



それにしても、田中という名前は

あまりにも普通すぎる名前である。


私はキャラクターの名前については

特にこだわっていない。


苗字が人物の特徴を表すなどというのは

むしろ、リアリティがないと考えている。


世の中にはものすごい「鈴木」が

いっぱいいるではないか。


だがそれにしても、

漫画に登場する人物の名前として

田中は普通すぎる。


「鈴木」、「佐藤」も多い名前だが、

それは主に東日本の話で

西日本では「田中」、「山本」が多い。


普通の人であるという意味を込めて

「田中」にしたということもあるが、

実は別の事情がある。


田中が初めて登場したのは

「ダイナマイトダンディ」の中で

竹井がマネージャーをする雀荘のメンバーとしてである。


ワニ蔵が雀荘に入り、

「田中!コーヒー持って来い!」

と言われてコーヒーを持ってくる。


その回はそれ以外登場しない。


そうなのである。


田中は最初「モブ」(漫画で言う通行人のような存在。)

だったのである。


「ダイナマイトダンディ」は、最初

読み切り形式で、

ワニ蔵の大活躍を描いていた。


これは、私の事情なのだが

こういう読み切り話を続けることは

結構大変でアイディアに詰まることも多い。


ワンパターンになってつまらなくなることを

避けるために「もっと面白い話を。」と考えると

辛いのである。


その上、そのころ私は

仕事をたくさん抱えていて、

あまり時間がなかった。


そこで田中が主人公の話にしていた。

これが結構動いてくれた。


漫画のキャラクターというものは

作中の中では

自分とは別人のようなところがあって、

うまく動いてくれないキャラは

どうしても動いてくれない。


田中は動いてくれた。


多分、私のイメージするその内面に

麻雀に携わる人の夢や不満、妬みといったものを

持っていたからだろう。


ただし、人気は下がった。

やはりワニ蔵には勝てないらしい。


「麻雀小僧」の人気が心配である。



でも安心してください。

田中は「麻雀小僧」では

あくまで脇役ですから。