どうも、はちごろうです。


先週の金曜にDVDを一枚借りてきたんですが、
全くもって見る時間が取れない。
今年はなるべくDVDを見る時間も作ろうと思ってたけど、
どうやら一日のスケジュールの抜本的な見直しをしないと
ペースダウンは難しそうである。
さて、映画の話。




「ドラッグ・ウォー 毒戦」











香港映画界の巨匠ジョニー・トー監督が
初めて中国本土で制作した犯罪ドラマ。



あらすじ


中国・津海郊外。一台の乗用車が爆発した工場から飛び出してきた。
乗用車は市内の繁華街でレストランにつっこみ大破。
運転していた男から薬物反応が出たため病院で拘束される。
同じころ、旅行客を装った大規模な麻薬運搬事件が摘発され、
多数の容疑者が同じ病院に搬送されていた。
拘束されていた男テンミンは隙をついて逃走を企てるが、
病院にいた中国公安警察の麻薬捜査官ジャン警部らに確保される。
警察に連行されたテンミンはジャン警部の取り調べを受ける。
同時にテンミンがいた津海の工場も捜索され、
彼が中国国内で麻薬の製造に関わっていたことが判明する。
麻薬の製造は死刑だと知ったテンミンは、
助かりたい一心でジャン警部の捜査に協力を申し出る。
テンミンは黒社会の大物チェンビャオから原料を受けとり、
自分の工場で精製したのち、津海の漁港を取り仕切る大物、
ハハに売り渡す計画があることを告げる。
そこでジャンはチェンビャオの甥チャンに成りすまし、
テンミンと共にハハとの取引現場に向かうのだった。




香港ノワールの巨匠ジョニー・トー



香港映画界の巨匠ジョニー・トー監督。
元々アジア映画には疎かったのですが、
タマフルで宇多丸さんが絶賛していたのを聴いて存在を知り、
いくつかの作品を劇場で観たり、DVD借りたりしてみました。
「エレクション」2部作、「スリ」、「ブレイキング・ニュース」
そして近年の傑作「エグザイル/絆」など、
主にノワールもの(犯罪ドラマ)を得意としてきた人です。
無駄をそぎ落としたテンポの良い演出と、
一瞬の出来事が起きるまでの緊張と緩和、
そして香港映画の特徴でもある先の読めない展開
(まぁ、盗作されないために脚本を製本せず、
 撮影現場でその都度役者に台詞を伝えるかららしいのですが。
 そんなこといまだにあるんでしょうかね)、 
といったところが彼の作品の持ち味です。




確かに無駄のない展開なんだけどさぁ・・・



さて、そんなジョニー・トー監督の新作は
中国公安警察の麻薬捜査官と彼に協力する犯罪者の物語なんですが、
とにかく冒頭からテンポよく話が展開していくんです。
だから物語に対する集中が途切れず観ていられるんです。
ですが、今回はその徹底した無駄の省略が
いささか行き過ぎてしまったように感じました。
確かにジャン警部が陣頭指揮を執る公安の麻薬捜査官の捜査は
「これぞプロの仕事」と思わせるだけの手際の良さなんですよ。
とにかく動きに無駄がない。全部の行動が捜査に繋がる。
ですが、あまりにもシステマティックに行動しすぎているため
ジャン警部たちの捜査に失敗の不安を一切感じないんですよ。
そもそもこのジャン警部という人が一切の感情を見せず、
淡々と潜入捜査や犯人追跡をやってのける。
その様子はまさに機械みたいで逆に気持ち悪いんですね。
彼の犯罪捜査に対する揺るがない信念の源みたいなものは
本作で語られることは一切ないわけです。
方や、彼に協力する犯罪者のテンミンの方も
自分の命惜しさに組織を裏切って捜査に協力するわけですが、
組織を裏切ったことへの葛藤も見えなければ
そもそも生きるための執着みたいなものもあんまり伝わってこない。
ラストで薬物投与による死刑が執行されるシーンで
必死に知ってる情報を口走って命乞いするんですが、
彼の死への恐怖が全然伝わらす淡々と死んでしまう感じなんですよ。




キャラクターの感情を「削除」したのは、もしかしたら・・・



だからおそらく今回、ジョニー・トー監督は
登場人物の感情の起伏までもそぎ落としてしまった感じなんですね。
そうしたところに興味がないというか。
だからクライマックスの小学校前での銃撃戦も、
ジャンたちは「周囲に子供がいる」ということで躊躇することもなく
当たり前のように平然とドンパチを始めるんですよ。
だからなんか、人間というよりも機械が戦ってるみたいで
アクションシーンなのにあんまりテンションが上がらなかったです。
じゃあ、なんでこんなことになったかというと、
どうやら今回中国本土で撮影をした関係で、
中国当局から相当チェックが入ったらしいんですよ。
だから本来あってしかるべき登場人物の感情、
特に捜査官側の人間的側面が削除されてしまったのかな?とも思います。
まぁ、考えすぎかもしれないですが。


古くからの監督のファンは「いや、いつもどおりだよ」と言うかもしれないですが、
例えば「エグザイル/絆」とかで見せた男同士の友情みたいな
熱い感情のぶつかりみたいなものが一切なかったことは
拍子抜けというか、非常に不可解に感じました。



[2014年1月21日 新宿シネマカリテ 1番スクリーン]