どうも、はちごろうです。


新年あけましておめでとうございます。
本年も、ひとつよろしくお願いいたします。
さて、今日を持ちまして3年目に突入したこのブログ。
今年からこのブログでの映画紹介を


「基本ネタバレあり」

という方向でやらせていただきます。
丸2年やってみてネタバレしないように感想を書くと
どうしても奥歯に物が挟まったような内容になってしまうので。
しばらくは「ネタバレ」と書かせていただきますが、
ひとつよろしくお願いいたします。
では、今年最初の映画の話




「ゼロ・グラビティ」











本年度アカデミー賞最有力候補の一本。
船外活動中に事故に遭った宇宙飛行士の決死のサバイバルを描く。
主演はサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニー。
監督は「トゥモロー・ワールド」のアルフォンゾ・キュアロン。



あらすじ


地球の上空60万メートルの宇宙空間で船外活動をしていた
女性宇宙飛行士のライアン・ジョーンズ博士。
彼女は同僚の宇宙飛行士マット・コワルスキーと
NASAのスペースシャトル、エクスプローラー号の
データ通信機器の故障を直していたが、
そこにNASAから緊急事態を知らせる通信が入る。
ロシアが自国のスパイ衛星をミサイルで破壊し、
そこから大量の衛星の破片が飛散したというのだ。
飛散した破片は周囲の衛星を破壊してさらに破片が増え、
周回軌道に乗って猛スピードで彼らの元に向かっているというのだ。
急いで戻ろうとしたが時すでに遅く、
飛んできた破片は猛烈な勢いでシャトルに激突。
ジョーンズ博士を固定していたアームにも破片は当たり、
彼女は宇宙空間に放り出されてしまうのだった。




「無重力」の表現への挑戦



宇宙空間を舞台にした作品は過去にも数多く制作されましたが、
実はその多くは宇宙空間では当たり前である
「無重力」というものを表現してこなかった。
なぜなら「無重力空間」を人工的に作り上げることが出来ない上に、
「無重力状態」っぽく見せるだけでも途方もない労力がいるのである。
「無重力だから」という理由で単純に俳優をワイヤーで吊るしても、
それはただ「吊り下げられている」だけで「浮いている」わけではない。
なにより難しいのは「慣性の法則」というやつ。
つまり、宇宙空間では空気抵抗がないため、
人や物は何かにぶつからない限り延々と進み続けるのである。
確かに「2001年宇宙の旅」や「アポロ13」など、
無重力状態の表現に挑戦した作品もないことはない。
だが「アポロ13」のように飛行機の中にセットを組んで、
実際に飛行機を急降下させて無重力状態を作っても、
撮影できるのはせいぜい数十秒。
だが本作はほぼ全編が宇宙空間が舞台であるため、
最初にキュアロン監督が本作を企画した際、
さまざまな同業者から「技術が伴うまで待て」と言われたそうです。
だから今回、キュアロン監督と撮影監督のエマニュエル・ルベツキ、
視覚効果監修のティム・ウェバーは、
新たな機械を開発して本作に臨んだそうです。
もうねぇ、この技術がとにかくものすごいんですよ!
ほぼ全編CG合成なんだけどその精度がけた違いで。
どこまでがCGでどこまでが実写なのかの境目がわからない。
本作ほどメイキングが観たいと思った作品はないですね。




昨今のハリウッドのトレンド、「翻弄と生還」



さて、パンフの解説文でも指摘されていたんですが、
ここ最近、ハリウッドでは流行りの題材があって、それは
「個人の力では到底太刀打ちできないほどの
 過酷な状況に放り込まれた主人公が、
 それに翻弄されたり、生き残りをかけて戦う」というもの。
昨年の作品だと「ライフ・オブ・パイ」なんか典型的で、
「悪の法則」なんかもそういう側面がありましたが、
前回取り上げた「キャプテン・フィリップス」や本作だけでなく、
本年度のアカデミー賞の有力候補とされている作品は
多かれ少なかれそうした要素を持っています。
これはやはり近年の世界的な先行き不透明感や、
打開の糸口の見えないほど複雑化する国際状況など、
現実社会の閉塞感というものが深刻化しているからだと思います。
これから春先にかけて、そうした作品を紹介する機会が
少なくないと思います。




映画から透けて見える「中国」と「ロシア」の立ち位置



あとひとつ「面白いなぁ」と思ったのは、
本作に登場する「他国」の扱い方ですね。
主人公のジョーンズ博士たちを襲った衛星の破片は
ロシア政府が自国のスパイ衛星を破壊したもの。
そして宇宙に放り出された彼女たちが
ロシアの宇宙船ソユーズで地球に帰還するために
国際宇宙ステーションに向かうわけですが、
頼みの綱のソユーズには燃料が全くないんですよ。
で、最終的にジョーンズ博士が頼るのは
中国の宇宙ステーション「神舟」。
ここから見えるのはハリウッドにおける中国の存在感と、
アメリカがいまどちらの国を重視しているのか?ということ。
実はいま世界で一番ハリウッド映画を観てるのは中国人。
だから中国人が喜ぶような設定になってるし、
逆にロシアは最近あまり信用できないという本音が
透けて見えるような気がしました。



間違いなく本作はアカデミー賞の有力候補ですし、
撮影賞と視覚効果賞の受賞はほぼ確実。
そうした側面を脇に置いておいても、
本作で表現される宇宙空間の表現はホントに見事!
この正月休みに劇場で体験してください。
文句なくおススメです。是非是非!



[2014年1月1日 ユナイテッド・シネマとしまえん 8番スクリーン]