どうも、はちごろうです。

週末から一気に寒くまりましたね。
部屋の中にいても肌寒いくらいで、
キータッチもちょっとおぼつかない感じです。
さて、映画の話。

「のぼうの城」

和田竜原作の人気時代小説を狂言師・野村萬斎主演で映画化。
監督は「黄泉がえり」の犬童一心と「ローレライ」の樋口真嗣。
1590年、天下統一を目指す関白・豊臣秀吉は北条氏討伐をめざし、
本拠地小田原城とその支城攻略のため兵を進めていた。
秀吉はその一つ、忍城の攻略に二万の兵を用意し、
その総大将に寵愛する家臣、石田三成を据える。
一方、忍城には小田原城から使者がやってきて
北条勢への加勢を命ぜられる。
それに対し城主・成田氏長は北条側に城の兵力の半分、
五百騎を率いて小田原城内に入る一方、ひそかに秀吉に内通し、
城代の成田泰季には関白軍が攻めてきたら抵抗せず
無抵抗のまま開城しろと命じて城を後にした。
だが泰季はその後すぐ心労で病に伏してしまう。
数日後、光成は圧倒的な数の兵で忍城を見下ろすように陣をとり、
使者として長束正家を送り、開城を迫った。
ところが泰季に代わり城代を務めていた長男、成田長親は
正家の横暴な物言いに徹底抗戦を宣言する。
武将としての能力はからっきしで、城下の者たちからは
でくの坊を意味する「のぼう」と揶揄されるような男の突然の乱心に
幼馴染の武将・正木丹波守利英以下、
開城を渋々受け入れようとしていた武将たちは反発するが
なぜか人望だけはある長親に説得され発奮。
かくして関白軍の二万の兵にたった五百の兵で立ち向かう、
無謀ともいえる戦いの火ぶたが切って落とされるのだった。








「言葉づかい」に見る時代劇的リアリティの扱い


ベストセラーとなった時代小説の映画化ということなんですが、
この作品、あくまで時代劇を普段見ない人向けに作られているので
いわゆる時代劇としてのリアリティは正直乏しい。
というか、敢えて無視しているといった方が正しいのかもしれない。
例えばそれはキャラクターの言葉づかいに表れている。
正木丹波守を演じる佐藤浩市や、成田泰季を演じる平泉成など
いわゆる時代劇に慣れている俳優さんたちは問題ないんだけど、
例えば忍城の若き軍師、坂巻靭負を演じた成宮寛貴や
甲斐姫を演じた榮倉奈々など若い俳優さんの言葉づかいが
やたら現代人っぽいことが少し引っかかるし、
血気盛んな武将、柴崎和泉守を演じた、ぐっさんこと山口智充さんは
逆に過剰なほど時代劇っぽくキャラクターを演じていて
これはこれでわかりやすくて面白いんだけどちょっと問題。
そして一番問題だったのは主演の長親を演じた萬斎さん。
彼は普段から狂言で使う発声法で喋っているときがあり、
そういった意味では一番自然に時代劇を演じられるんだろうけど、
そのネイティブすぎる言葉づかいが逆に浮いてるように感じました。
この、演者間で言葉づかいや発声法にばらつきがあることが、
気になると言えば気になりましたね。
キャラクターが同じ時代に生きていないような感じがするというか。



本作最大の見せ場を襲った「水難」


そして本作は昨年2011年の9月に公開が予定されていたんですが、
東日本大震災の発生と、本作に城を水攻めにするシーンがあったため、
被災者の感情を考慮して上映を1年間延期したという経緯がある。
そして、その水攻めにより忍城の城下が水に沈むシーンの描写を
穏健なものに差し替えた、ということがパンフにも書いてありました。
確かに石田三成が忍城を水攻めにするシーンは
巨大な水しぶきがぶつかっているだけのシーンが多数見受けられ、
決壊した川の濁流で城下の町や田畑が飲みこまれる様は
予想以上に少なかったように感じました。
確かに被災地の方々の心情を察しての決断ということはわかる。
けど、やっぱりこの作品最大の見どころだった水攻めのシーンが
結果的にしょぼい描写になってしまったことは
残念といえば残念だったと思いますね。
ただ、批判覚悟で派手な描写で押し通したらどうだったか?と考えると
どっちが正解だったかはわからないような気がします。



長親と三成、総大将の明暗を分けた決定的な差


さて、本作の主人公、成田長親は武将のくせに戦いを好まず、
城下の者から「のぼう」とあだ名され、
本人もそのことを受け入れているような男。
だが普段から城下の者たちとの交流を欠かさず、
そんな彼の、偉ぶらない人当たりの良さに
城下の者たちは逆に信頼を置いているわけです。
実はこの彼の唯一にして最大の武器である「人心掌握術」、
誰よりも人というものの強さ、弱さ、怖さ、そして頼もしさを理解し、
どうすれば他人を自在に操ることができるかを熟知する、
その才能がいかにリーダーに必要かということが伝わってくる。
その点から見ると、長親と戦う羽目になった関白軍の石田光成は
秀吉の豪快かつ圧倒的な戦い方に憧れるあまり、
共に戦う武将たちの心理を考えず水攻めの策をとる。
その結果、兵の士気は下がり、さらにそこを長親につけこまれ、
形勢はどんどん不利になっていくわけです。
戦を避けるため、人を守るために人を知り、
自発的に人の行動を促す長親のノウハウは、
勉強になったというか、考えさせられるものがありました。


確かに時代劇としてのリアリティは乏しいし、
肝心のスペクタクルシーンは諸事情で規模が小さくなったけど、
登場人物はどれもキャラが立ってるし、
娯楽作品としては十分楽しめる作品になってたと思います。