どうも、はちごろうです。

明日から本格的に梅雨入りだとか。確かに少し蒸し暑くなりましたね。
これから少し外出が面倒になるかと思いますが
雨がなければ米も野菜も出来ないから我慢ですね。
さて、映画の話。

「サニー 永遠の仲間たち」

昨年韓国で大ヒットを記録した青春映画。
ソウル市に住む主婦ナミは稼ぎのいい夫と高校生の娘に恵まれ、
裕福ながらも、少し物足りない日々を過ごしていた。
ある日、入院中の母親の見舞いに行った際、
ある病室から女性患者のうめき声を聴いてしまう。
何気なくその病室の名札を確認すると「ハ・チュナ」と書いてあった。
ハ・チュナ。それはナミが高校時代、共に過ごした仲間の名前だった。
後日、再び見舞いに行ったついでに件の病室に行くと、
やはりその病室の患者は高校時代の親友チュナだった。
実に25年ぶりの再会に喜ぶ二人だったが、
チュナは癌で余命2カ月と診断されていた。
チュナから「またあのころの仲間に会いたい」と言われたナミは、
高校時代、共に過ごした仲間たちを探し始めるのだが・・・。








ナイナイはわかるがピースにはわからない


本作の舞台は、韓国で公開した昨年から25年前の1986年。
当時、主人公のナミはチュナとともに仲良し7人で
「サニー」というグループ名を組んで行動を共にしていた。
当時の韓国は学生運動が盛んに行われていて、
中学・高校の制服が廃止されて私服登校が解禁された。
まだまだ国内での閉塞感は根強かったが
少しではあるが自由の風を感じ始めていた時代だった。
当然、シンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」や
ハリウッド映画「ロッキー4」「ラ・ブーム」など、
当時流行った音楽や映画、ファッションも
作品の中に効果的に取り入れられているのだが
こうした「特定の年代が決まっている時代設定」の物語というのは、
当然のことながら、同時代を生きてきた世代の観客の共感は得やすいが、
逆に少しでもその時代とずれてしまうとピンとこないものである。
日本のお笑い芸人で例えるならば、はんにゃやピースでは間に合ってない。
かといってダウンタウンやウッチャンナンチャン、爆笑問題では遅すぎる。
だからその中間、ナイナイや雨上がりなどの「天然素材」のメンバーや
キャイ~ン、ネプチューンあたりの芸人とって
ドンピシャな時代設定の物語と考えてください。



友情は罪悪感の共有で深まる


さて、ナミとチュナは高校で知り合い、
後に「サニー」というグループを結成する。
メンバーはリーダーのチュナ、地方から転校してきたナミ、
そして二重まぶたに憧れるぽっちゃり体型のチャンミ、
国語教師の娘のクセに口の悪いジニ、
棒を持たせると強いクムオク、ミスコリアに憧れるポッキ、
そしてクールビューティーのスジ。
彼女たちは町で対立する女子グループとケンカしたり、
放課後の教室で洋楽に合わせて踊ったり。
継母と同じ訛りで話すナミを毛嫌いしていたスジ。
二人は後に変装して居酒屋で酒を酌み交わし、
腹を割って話し合って友情を深める。
友情というものは、たいてい同じ経験をすることで深まるものだが、
特にその行為にちょっとした罪悪感が伴うものであるほど
その深まり方が深いものになる。
そうした友情の深まる過程が、当時の流行と相まって
実にほほえましく描かれていて、そこは観ていて非常に楽しい。



女性は物語からリアルを排除する


だが物語の後半、現在の「サニー」のメンバーの消息がわかりだすのだが、
するとナミ達はどうしても辛い現実と向き合わなければいけなくなる。
メンバー全員がナミのように裕福な家庭で幸せに暮らしているわけでなく、
ある者は姑にいびられながら職探しをし、
またある者は親の借金を返すため水商売をしている。
だが、彼女たちの不幸な生活の描写は思っていたほど細かくない。
まるでそうした現実の描写を避けるかのように。
しかもそんな不幸な生活をしているメンバーもひっくるめて、
最後にはご都合主義も甚だしいほどの大団円が待っているのである。
これはおそらくこの映画が狙っている観客層が女性だからだろう。
女性というのは本来、男に比べて現実を見据えて生活する生き物だから、
映画や小説などの芸能に関してあまりリアルな現実を求めない、
むしろどうかと思うほどご都合主義的な物語を求める傾向が強いわけです。
だからこの、後半に行くにしたがってどんどんご都合主義的になる展開に
男は逆に冷静になってしまうんですね。
確かに最後に彼女たちが幸せになって、それは喜びたいけれど、
いくらなんでも都合がよすぎるのではないのか?と。
だから終盤の展開が個人的にはちょっと残念でした。



8人目の「サニー」が落とす影


あと、この作品で残念なところがもうひとつ。
実はナミが転校してきてチュナの仲間になる前、
チュナにはサンミという仲良しのクラスメートがいた。
ところが彼女がシンナーに手を出したことで
チュナはサンミを仲間から外してしまう。
そしてそのことが「サニー」のメンバーに暗い影を落とす
最悪の事件にと繋がっていくことになるのですが、
このサンミというキャラクターが実にインパクトがあるんですよ。
で、このキャラクターに感情移入してしまう観客も実は少なくないんですね。
その最悪の事件が起きたあと彼女はどうなったのか?とか。
そもそも、チュナから仲間外れにされたことで
逆に彼女のシンナー中毒が進んでしまったとも考えられるし、
そう考えれば、「友達づきあいを止める」という
チュナの判断は正しかったのかどうか?とか。
ところがこれだけ存在感を残すサンミにもかかわらず、
パンフには彼女も、彼女を演じた女優さんの名前も載ってないんですよ。
(演じた女優さんも、若いのにこんな汚れ役をやって大丈夫か?と
 個人的にちょっと心配になってます)
だから、彼女に関する描き込みが不足していることも
ご都合主義的な感じの延長線上にあるような気がしました。



まぁ、ご都合主義的だということを納得さえすれば、
86年当時の音楽や映画の使い方もうまいし、
いわゆる「女性向けの娯楽映画」としてよく出来ていると思います。
ただ、やはり86年に青春時代を過ごした
「韓国の女性」を意識した作りになっているので、
いっそのこと日本でリメイクするってのはどうかな?って思いました。