あなたは生まれてから今日までの、
自分の正確な歴史を覚えていますか
魚の頭の中には、
生まれる前から今日までの記録がとある器官に刻まれているのです
という事で今回は、魚の履歴書!
耳石~じせき~についてのお話です
焼き魚を食べていて、
頭の中から骨とはまた違った固くて白い石の様な物が出てきたことはありませんか?
あれが「耳石」です
魚の左右の内耳の中にある耳石は聴覚と平衡感覚を司っている大事な器官で、
200~2000サイクルの音を聞き分け、
それ以下の振動は側線を使う…
といった具合に、人間でいう耳と同じ働きをしています
耳石の主成分は炭酸カルシウムで、
明るい層と暗い層が交互になって年輪の様な形状をしています
切り株の年輪によく似たこの形状は、日周輪と呼ばれ、
光や栄養状態など環境によって変化し、成長の早い夏場には不透明帯が形成され、
成長が停滞する冬場には不透明帯が形成されるので、
一年の年輪も分かるという訳です
耳石は、
動物の基本的機能である重力の受容に関わる構造物なので、
個体発生において最も初期に形成されます
細胞壁に囲まれた場所にある為、血液中の成分の変化を受けにくいので、
成長はゆっくりですが、カルシウムの回転率も低いので、
その魚の生活史は安定したデータとして刻まれていきます
また、耳石の成長は魚の体の成長がほとんど停止しても継続するので、
今まで鱗を見て行っていたよりも正確に
年齢査定や個体の誕生日(孵化日)を推定する事が出来るようになりました
これを可能にするのに必要なのが、
一番最初の輪っかの部分が「いつ作られたか?」を知る事なんですが、
サケやサンマの様に孵化から2~3週間の発眼の時に形成が始まるものや
イワシの様に孵化後に卵黄の吸収が終わって、
エサを食べる用になってから形成が始まるもの等、
魚によって異なる為、
飼育しながら耳石を採取して調べていく…という作業を繰り返して、
ようやく100種類ほどの魚の事が分かってきているそうです
今まではタグを付けたり鰭の切除をして行っていた標識放流実験も、
耳石に色が付く物質を取り込む方法
「耳石標識法」を使えば、卵・小さな稚魚にも行えるので、
これから先、どんどん新たな情報が分かってくることでしょう
魚によって耳石の大きさや形状は様々で、
木の葉状・握り拳状・十字架状・円盤状等などがあってとっても面白いので、
丸ごと魚を食べる機会があったら
ぜひ「魚の履歴書」を取り出して見てみて下さい
MAMI☆