2回目のボーカルレッスン。

コツがわかってきたぞ。

中学時代に、学校の部活でちょこっとクラシックバレエをかじったのが、今頃生きた。

下腹部、自分のおなかの中に、りんごをふわりと抱えている感覚をイメージするのだ。

で、同時におしりをきゅっと締める。

すると背筋がすっと伸びて、ハラミ、いや横隔膜が、いちばん気持ちのいい状態でのびのびと声を送り出す。

このりんごのイメージは、バレエのときに、体の重心を安定させるために常に思い描くように言われていたこと。

リラックスして歌うと、まるで目の前に2つのスピーカーが並んでいて、その真ん中から自分の声が聞こえてくるような感じなのだ。

ステレオコンポの真正面に座って音楽を聴いているあの感覚ね。

不思議だね、自分の声なのに、正面から向かい合わせに聞こえてくるんだよ。

先生は言った。

「話すように歌い、歌うように話す」

[歌う]というと、どうしても、音程が取れているかどうかについ気をとられてしまう。

歌の意味よりも、音をハズしてないかどうかが気になってしまう。

まぁこれは、元来歌うことが苦手で今まで生きてきた私の、コンプレックスのようなものかもしれないけども。

でも、先生の言うとおりにリラックスしてリンゴをイメージして歌うと、「話すように歌う」感覚が、体でわかるのだ。

音程を気にしなくても、いつのまにか歌えている。

そして、普段から歌うときの呼吸をしていたら、自然に「歌うように話す」ようになっているんだって。

先生は魔法使い。


今日のもうひとつのサプライズ。

レッスンを終えて防音室から外に出ると、向かいの部屋から人が出てきた。

・・・おやまぁ、大学時代の後輩ちゃんではないの!

彼女はサークルで一緒だったんだけども、私が途中で辞めてからは、あまり会うこともなかった。

住む街もお互い遠い二人なのに、それがこんなところで再会するなんて。

彼女はピアノのレッスンで今日が1回目だったそう、なんという偶然。

これからは顔を合わせることもあるんだと思うと、神様が雲の上から遊んでたのかなとも思う。


ものごとのひとつひとつを、大切にしていこう。