イスラム帝国の支配下だった時代が長くつづいたせいで
ポルトガル語にもスペイン語にも、アラビア語起源の語彙が多くみられます。
(ある研究者は約1000語あるといっています)
アラビア語を起源とする語彙は、農業、科学技術、動植物名、社会組織、軍事用語
など多岐にわたってみられます。これは、イスラム帝国が進出してきた当時は
ヨーロッパよりもイスラムの方が文化的に進んでいたということに関係があるようです。
少しだけ例をあげてみます。
arroz「米」
azeite「オリーブ」
alfinete「ピン」
alfândega「税関」
azulejo「アズレージョ」
açúcar「砂糖」
わりと有名なことですが、これらの語に多くみられる、語頭のalはアラビア語の冠詞です。
arroz、azeite、açúcarなどもalがついたかたちから形成された語なのですが
これらの語はalの「l」があとの子音と音が同化するという変化が生じています。
ar-roz > arroz
az-zeite > azeite
aç-çúcar > açúcar
ちなみに、冠詞alがついたかたちであることから、これらの語は音声から
ポルトガル語に入ってきたことがわかります。
(話しことばからといってもよいかもしれません)
たとえば、arroz「米」は、スペイン語でも同じかたちですが
フランス語ではriz、イタリア語ではriso(risotto「リゾット」)というように
冠詞のないかたちになっています。これは、イタリアやフランスにはこの語が
書きことばから(文献から)入ってきたということを示しています。
(書きことばからだと、alが冠詞だということがわかるので)
英語はこちらのルートを通って入ったので、riceというかたちになっています。