日本で持続可能な農業ビジネスの形 | 農産物の産直マーケティング企業 オリザの公式BLOG

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ごちゃごちゃとTwitterでも書いたけどインドから帰ってきて以来、最近考えてることをまとめました。

乱筆乱文失礼。

<外部要因>

・オランダ/イスラエル型のパッケージ化された農業は多くの途上国で高収量農業を低コストで実現することが可能

・日本に対しても中国以外からも量販品の野菜/花卉の輸入は増える。

・インド→羽田の運賃が$3/kg程度なので、卸価格が$10/kg の価格の野菜/花卉、もしくはチルド船便で運送できる品目(じゃがいも、かぼちゃ)など(コンテナで\20/kg)は世界中の産品が国産野菜のコンペティターとなりうる。


<国内野菜市場の動向>

・2010年の生鮮野菜輸入量は中国の農薬スキャンダルが発生した2006年レベルまで回復した。ただ今後の中国の野菜供給は中国国内とASEANにシフトしていくので、値段は上がるが量はそこまで増えない。中国以外の国からの輸入が増加していく。

・国産野菜のターゲットとしては小売で価格が高めのパプリカや高糖度トマトの海外産品が入ってくる可能性はある。例えば、実際には植物検疫で輸入は出来ないが仮にインドでビジネスを作るなら、生産国からのCIF $6/kg( 空輸運賃 $3/kg 含む)、インポーターへの支払い$1 (関税10%、港湾手数料等)、国内販売者$2で$9(¥747)で小売に渡たせば、今の高糖度トマトの卸価格は¥1000~1500/kg位なので、十分ビジネスになる。


・海外品種は日本に比べて食味がおちるから日本じゃ売れない、という話もあるが、サカタやタキイは海外での販売強化は行っている。オランダでも日本品種を母本とした新品種が増えている。タネの生産自体は海外で行っているのを忘れてはいけないかと。

その結果として考えないといけないことは、

・農業参入や現状のビジネスにおいてマーケット分析の対象には国内産地の競合だけでなく、技術的に生産可能な国からの産品の輸入可能性まで検討した上で選択する必要がある。

・正直、養液栽培や日本でオランダ型農業の実現、という事もやってるところがあるが品質的な差別化ができなければ長期的には難しい。

上記を踏まえて日本で農業ビジネスを行っていくに当たっては、海外でも生産出来る可能性が高い「あたりまえの品質のものを当たり前に作る農業」は難しい気がしている。

参入品目を選ぶ際のポイントは以下の感じかと思ってる。
息子に継がせるか農業辞めるかの判断にも適合するかな。


・参入障壁が高く、やる価値のある産品の条件

1.世界中からの輸入が植物検疫上の理由で日本に禁止されている品目
2.絶対に海外品目を食べない人に対するマーケットに対する品目
3.航空便で日本に送付してもコスト的に合わない最終単価が安い品目
4.船便で送ってこれない品目
5.味や形などで差別化が難しい品目


裏返しですが、参入が簡単でやってもビジネス的に立ち行かなくなる可能性のある産品の条件


1.人的コストが安く農業が盛んな国(中国、南米、インド、ロシアなど)から輸入が許可されている
2.購入に関して海外産品と区別がない品目(野菜じゃないけど花卉など)
3.最終価格が航空便で送付しても合うくらいの高い品目
4.船便で送付しても問題なく送ることが出来る品目
5.誰でも同じような品質のものを作れる品目


例えば、前回のインドの記事でもありましたが海外品でも誰も気にしないで、キロ単価の高い花卉が輸入されているのは自然な流れ。カボチャなどは日本が出る時期は来ないけど、ない時期は海外品が殆どですね。パプリカはほとんどが海外品ですが、新野菜などはあまり購入者のアレルギーはないのかもしれない。


<これからの”あり”な農業参入モデル>

1.超高級/高価格帯モデル

日本品質への幻想はまだまだある。特にオランダ型の栽培方法で出せない味/もしくは特殊品種を利用した最高級品農業。ターゲットは世界中の金持ち。


2.Community Supported Agriculture

いわいる地元との”縁”や”笑顔”を大事にして販売チャンネルを作る農業。オーガニックなどが大事。顧客は大都市圏が近隣にあるのが望ましい。これはそういう”共感”とかつながりベースでの販売になるので差別化が可能。ソーシャルメディアの活用が大事。

3.海外生産
日本での施設10ha、露地100haの大規模化はコストが高すぎて合わないので補助金を大量に貰う場合以外は難しい。もしくは居抜きで安く買い取れるとか。

逆にコストが全然違うので日本農家が海外での生産に関わるというモデルのが面白い。

とくに1と3のモデルに関しては「日本の品質を高める特殊技術とオランダ/イスラエル型の量を求める技術のハイブリッド」が今後の向かうイノベーションの方向性だと思ってます。

<自分のビジネスに関して>

今は1は自分の農場、3はインドでの生産、2は熊本のとある会社の参入サポートという形で全てのビジネス形成に関わってます。そのなかでうまくいく、うまくいかないはあるんだろうけど、仮説が正しいかのは証明できるかと思ってます。頑張ろ。