[3/5話]農業におけるリスク管理 | 農産物の産直マーケティング企業 オリザの公式BLOG

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こんばんは。
第3弾の今夜は、農業特有のリスクについて考えてみたいと思います。

先日、うちの農業法人では新たなトマト用のハウスが完成しました。
結構大きなハウスで、数千万円の費用がかかっています。
失敗は許されない規模の投資です。

しかし、2年前まで東京でサラリーマンをしていた私では、農業特有のリスクと
いうものを把握できるはずがありません。
リスクが見えてない中で事業開発を行うことほど怖いことはありません。

そこで、私なりに数千万円の投資をするまでに様々な準備をしました。
事業全体のリスクを把握する為、リスクをヘッジする為の策を考える為です。
なので、今回の事業を開始するにあたって、検討段階から2年かかっています。

1年目は、試験栽培でした。
計画している規模の10分の1くらいの面積で、実際にトマトを栽培してみました。
栽培管理においては結構失敗したし、収量が計画の60%くらいしか取れない作もありました。

でも、失敗を経験する中でこの事業における核となるリスクが見えてきました。

2年目になって、試験栽培の経験をもとに、事業計画を練りました。
・計画している面積からどれだけの収量がとれるのか?
・収穫したトマトの良品、悪品の割合は?
・良品の販売先は、どこに、いくらで、どれだけ販売するのか?
・初期投資、ランニングコストはどれくらいかかるのか?

自分の考えていることを紙に落とすことで、どれだけ深く理解できているか、
できていないかがはっきりと分かります。
うちの場合は、ここまで来てようやく事業推進の意思決定を行うことができました。

最近、オリザでも新規就農や企業の新規参入の相談を受けることが多いのですが、
ほぼすべての皆さんが、リスクも何も分かってない状況での相談が多いです。
それが悪いという意味ではなく、当然だと思います。

しかし、少なくないお金を投資して、ゼロからスタートするわけですから、
いかに成功するかよりも、まずはいかに失敗しないかを考えるべきでしょう。

農業には、どうしようもできないリスクと対策可能なリスクの2種類があると考えています。
前者のどうしようもできないリスクとは、自然災害や日射不足、干ばつなどがあります。
後者は、病害虫とか栽培管理とか出荷管理などです。

どんな業界の、どんな事業でもリスクはあると思いますが、相対的にみて
農業はリスクが高い分野だと感じます。
そういうリスクの高い分野というのは、一般的には収益性も高いはずです。
しかし、農業はリスクが高いのに収益性が低いと言われます。

農業はリスクが高い分、そのリスク分も含めた適正利益が得られる構造になってないとダメなんです。
でないと、なんらかのリスクが生じても、農家が手取りを減らして我慢するだけです。
そんな事業には、後継者なんて育ってくるはずがありません。

そのような背景から、農業においてリスクマネジメントが重要なんです。

Wikiでリスクマネジメントを検索すると、
「リスクマネジメント (Risk Management) とは、リスクを組織的にマネジメントし、ハザード(危害 (harm) の発生源・発生原因)、損失などを回避もしくは、それらの低減をはかるプロセスをいう。リスク・マネジメントとは各種の危険による不測の損害を最小の費用で効果的に処理するための経営管理手法である。」と書かれています。

農業分野でも、この考え方を体系化していく必要があると感じます。
そのうちの1つに、病害虫のリスク対策などでは、近年、IPM(総合的病害虫管理)と
いう手法が体系化され、多くの農場に導入され実績をあげています。

リスクマネジメント手法においても、品目や栽培方法ごとに体系化していくことは
価値のあることだと思いますので、オリザでプロジェクト作りましょう。>皆さん

栽培品目や地域、栽培方法などそれぞれの条件によって異なると思いますが、
①リスクを把握すること
②ハザード、損失を回避、低減するプロセスを考えること
③最小限の費用で効果的に処理すること

このあたりを念頭に、新規事業に取り組まれてはいかがでしょうか。