こんにちは。鳥塚ルミ子です。

日経新聞2017年6月13日付 アメリカにおける遺伝子組み換え表示義務についてのニュースが掲載されていました。全文表示。

 

 


 米国で遺伝子組み換え(GM)作物を使った食品にラベル表示を義務付ける「遺伝子組み換え食品表示義務化法案」(「GMO表示義務法」)が成立して、7月で1年を迎える。米農務省はラベル表示の方法や内容について法成立から2年以内に結論を出す予定。その後猶予期間の1年を経て実際に表示が義務化される。日本でも4月に消費者庁主導で表示対象を見直す検討会が発足、今年度末をメドに報告書をまとめる方針だ。台湾などアジアでも表示義務を拡大する動きがある。一連の流れを受けて世界的に非組み換え作物の需要が高まれば、日本の食糧調達にも影響が及ぶ可能性がある。

モンサントは遺伝子組み換え種子の世界最大手(米ミズーリ州の研究施設)=ロイター
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モンサントは遺伝子組み換え種子の世界最大手(米ミズーリ州の研究施設)=ロイター
 米国は長らく全米規模でGM表示が浸透しなかった。背景には大きく二つの要因がある。一つは、遺伝子組み換え技術が今後成長が期待できる国家戦略的な分野であること。種子開発を手がけるのもモンサントやデュポンといった米国企業だ。

 もう一つは食品業界の根強い反対だ。パッケージの表示を変えたり、原料を細かく追跡したりするとメーカーのコスト増につながる。米コカ・コーラなどで構成する米食品製造者協会は「表示は企業の判断に基づくべきだ」と法案に反対を表明していた。

 なぜ米国で表示義務化の動きが強まったのか。見逃せないのが消費者意識の変化だ。米ニールセンの調査によると、米国では「GM作物を使用していない」と表示する商品の売り上げが法案が成立する2016年7月30日までの52週間で12%増えた。一部の消費者は身体への影響を考慮して特定の原材料を使う食品の購入を避ける傾向にあるという。同じ理由からオーガニック食材を使った食品や、抗生物質やホルモン剤を使わず製造した食品の売り上げも伸びた。

 消費者の変化が法制度として現れたのが14年5月に全州に先駆けて成立し、16年7月に発効した米バーモント州のGM義務表示法だ。同法は「GM作物を0.9%以上含む食品は『遺伝子組み換え原料で製造』などと表示しなければならない」と定めた。米マースなど食品大手がこれに合わせて商品パッケージを変えるなど対応を急いだ。

 だが食品業界の反発は大きかった。政府は表示義務に関わる全ての州法を無効にした上で、食品業界の意見も取り入れた「GMO表示義務法案」を通し、オバマ前大統領の署名によって成立した。

 新法により、米国全土で販売される食品すべてにGM原料についての表示が義務化された。食品メーカーはパッケージに(1)遺伝子組み換え原料を含むと表示する(2)遺伝子組み換え作物を含むと見て分かるマークをつける(3)スマートフォン(スマホ)で読み込むQRコードをつけてネット上で詳細を確認してもらう――の3つの表示方法からいずれかを選ぶ義務を負うことになった。

 

3つ目に対しては消費者団体から批判の声もでている。スマホを持たない人にとって確認が難しい。わざわざQRコードを読み取る手間を消費者に負わせるのは情報開示を限定的にする「抜け穴」となる可能性がある。遺伝子組み換え作物に詳しい日本の関係者からは「表示方法が比較的緩い連邦法に統一することで、より厳しいバーモント州法をスタンダードにさせない意図があったのでは」との声もあがる。

 

米国の変化は日本にとっても無視できない。折しも4月、消費者庁はGM作物を使った食品について表示対象を見直すための有識者検討会を立ち上げた。現行の制度で表示義務の対象となるのがGMの大豆やトウモロコシなど8作物と、これらを使った豆腐など33の加工食品。欧州や米国がすべての食品を対象にしたのと比較すると表示しなくて良い食品が多い。また意図せずにGM作物が混入した場合、5%以下までなら表示義務はない。欧州などでは0.9%未満と定めており、今後日本もこの基準を同水準まで引き下げるかが焦点となる。

 調達上の懸念もある。豆腐など食品に使う大豆は、商社が米国やカナダの農家に割増金を払って非組み換え品を栽培してもらっている。最近は「台湾や韓国といったアジア圏で非組み換え作物の需要が増えている」(アメリカ大豆輸出協会)。台湾では15年に規制が強化され、これまでGM作物を使った食品の包装食品だけに義務付けられていたラベル表示の対象が、パッケージのない食品や飲食店で提供される食品にも広がった。

 GM表示が世界的な潮流となるなか、需要が高まる大豆などの非組み換え作物は調達コストが上昇する可能性もある。非組み換え原料を使った食品を扱う生活クラブ連合会(東京・新宿)は「農家が契約栽培の相手を変えるリスクを視野に、今のうちから米国農家との結びつきを強める努力をしている」と話す。

 同会は全農と連携し、国内の需要予測に関わる。全農はこれをもとに米農家が使う種子の育成を提携先の種子会社に依頼。農家は収穫した穀物を全農に供給する。長期的なパートナー関係を前提とした調達を行うことで、米国のトウモロコシ農家が安定的に栽培できるよう取り組んでいる。

 GM作物の商業栽培が始まって約20年。世界で表示のルール作りも本格化してきた。各国で盛り上がるGM表示のうねりは、食品の包装だけでなく将来の日本の食糧調達の風景を変えるかもしれない。

 

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