とりあえず喫茶店 | 加藤行宏blog「トイレット日記」

とりあえず喫茶店

脚本書き書き……



脚本執筆は山歩きみたいな物。パーツパーツで「こんなシーンを書きたい」みたいなところを決めて、

それをお遍路様のようにして、先行きの見えない山道を一歩一歩足を動かしながら、乗り越えていく。

頂上はずうっと先。転げ落ちないように、毎日、足元をじっと見つめていなくてはいけない。

……みたいなことを黒澤明先生は言っていたか?



キネカ大森 で初めての映画鑑賞。「加瀬亮特集」。サービスデイにより千円。



前々から人に勧められ続けていて、なかなか観る機会が無かった「海炭市叙景」を観たかったのだが、2本立てなので、先に「それでも僕はやっていない」を観る。

多分、周防監督はこの映画の脚本を書くために、法律や痴漢冤罪のことについてたくさん取材をしたのだろう……知識だけで書かれている映画。心が無い。そんなの映画じゃない。

一番イヤだったのは、裁判シーンが終わったあと、主人公たちが喫茶店で作戦会議をするシーン……と見せかけて、法律の専門知識を観客たちに説明する場面。大学の講義室と化する喫茶店。俺たちは授業を受けに来ているんじゃない!映画を見に来ているんだ!



劇中に喫茶店を出してくる映画はあまり好きではない、家族ではない不特定多数の人間が情報交換をする場所としては【とりあえず】に適切な場所。「ここ以外はありえない!」という、シーン選択に対する作り手の切実さ感じられない……と言いつつ、俺も「人の善意…」で登場人物たちに「居酒屋」で情報交換をさせてる。反省…。



最低な映画を観た後は、待ちに待った「海炭市叙景」。取材が行き届いている、しかし一切の知識をひけらかさない心の映画。加瀬亮の演技もこちらの方が圧倒的に光っていた。



帰宅途中に、神保町でシド・フィールド の本を立ち読み。今後の参考書として買おうか迷ったが、2600円は高い……。今のところ、この手の本は橋本忍の「複眼の映像 」で十分と思う。