では、どのくらいの効果があるのかというと、日本のGDPを10年間累積で2.7兆円押し上げる効果があると内閣府が試算しています。つまり、1年間では2,700億円です。
平成26年の日本のGDPは487兆8,823億円ですから、TPPによる経済効果はGDPの僅か0.06%です。GDPが増えないということではないので、全くメリットがないとは言えませんが、たったこれだけしか経済成長に寄与しないというのをどれだけの人が知っているでしょうか。
TPPについて米国のオバマ大統領は、米国の雇用を500万人創出することだと言っていました。TPP加盟国に米国のサービスや物を売り付けて、米国の雇用を増やすことだと宣言していたのです。
ここで、TPP参加国のGDPを見てみましょう。
TPP参加国のGDP
日本と米国の2カ国で全体の約8割を占めています。TPPによって世界最大の経済圏が誕生と言っていますが、そのほとんどは日本と米国に大きく依存しています。
米国を除くと、日本のGDPが占める割合は5割を超えることになります。つまり、米国が他国へサービスや物を売り付けるには、日本への輸出をどれだけ増やすのかに掛かっていると言っていいかもしれません。
逆に日本から見れば、TPPによって輸出が増加するかどうかは米国への輸出がどれだけ増えるのかに掛かっています。
日本にとっては、工業製品の関税が下がることによって日本の輸出が増えるというメリットがあると言われています。
特に、米国の自動車輸入関税が引き下げられることになれば、日本からの自動車輸出が増えると考えられています。米国の自動車輸入関税率は、オートモービルが2.5%、ライト・トラックが25%となっています(日本の関税率は0%です)。
ライト・トラックというのは、小型トラックだけでなく4駆などSUVも含まれていて、米国の自動車メーカーの主力製品です。
工業製品にとって関税率25%というのは高いので、この関税率が低くなれば日本の自動車メーカーにとっては大きいと思います。
しかし、この関税率よりも為替の方が大きな影響を及ぼすことがあります。民主党政権時には超円高で1ドル80円の時がありましたが、最近では1ドル120円近辺です。
下の表は、3百万円のSUVの車を米国に輸出した場合に、ドル建てで幾らになるのかを比較したものです。
3百万円の製品のドル建て価格
1ドル80円で関税率が25%だと、46,875ドルとなっています。為替レートがそのままで関税率が0%になると、37,500ドルとなります。
それに対して、関税率は25%のままで1ドル120円になると、31,250ドルとなります。つまり、1ドル80円のままで関税率が0%になるよりも、関税率は25%のままで1ドル120円になった方が、ドル建ての価格が低くなり、米国での販売価格が低くなるということです。
為替レートというのは一定ではないのですが、関税率が25%くらいであれば、関税を撤廃するよりも超円高の状態を是正する方が輸出価格に与える影響が大きいというのが分かると思います。
日本政府としては、外国の関税を撤廃することも確かに必要なことですが、それよりも民主党政権のように意図的に円高を維持するような政策を取らないことの方が重要なことだと思います。
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