ジャスト・イン・タイム(以降JITJust In Time))とは、必要なものを必要な時に必要なだけ生産(供給)するという考えの生産方式です。在庫を圧縮と製造期間を短縮するのに有効な生産方式で、トヨタのかんばん方式とも言われています。

 

 

自動車の生産は、一般に「プレス→溶接→塗装→組み立て」という工程で行われます。各工程で必要な部品や材料などがなければ、生産を行うことができません。そのためJIT生産方式では、各工程を行う時には必要な部品や材料を揃えるように在庫をしておきます。

 

その在庫を用意するには、各部品をそれまでに作っておく必要があります。また、部品を作る工場と組み立てをする工場が同じとは限りませんので、部品を運ぶ時間も必要です。

 

自動車の完成に合わせて、それぞれの部品や材料を必要なだけ在庫し、その在庫ができるように各部品を作るための計画を立てておきます。種類によって異なりますが、一台の自動車に使われる部品は23万点に上りますので、無駄な待ち時間が生じないようにするためには、非常に膨大で細かい計画を立てることになります。

 

また、各工程で必要な人や機械(生産ラインなど)も確保しておかなければいけません。部品や材料を調達するための計画とともに、各工程で必要な人や機械についての計画も立てておきます。

 

これらの生産計画の元になるのは、販売計画です。自動車の車種別だけでなく車種ごとの色別など、何台販売するのかという計画を立てます。販売計画は月別に作成し、半年前→3ヶ月→2ヶ月前→1ヶ月前と時間の経過とともに精度を高めていきます。

 

実際には、作成した計画通り注文が入るとは限りません。計画とのズレが生じた場合は、生産計画を変更します。計画と実際の生産数量に大きく違いがあると、部品や材料の調達が間に合わなくなり、注文通りに生産を行うことができなくなります。したがって、計画と実際の生産数量の差をできるだけ小さくすることが重要になります。

 

ここでトヨタが重視しているのは、作成した生産計画に販売情報を反映させていき、より精度の高い生産計画にしていくことです。販売店などでの需要動向をできるだけ販売計画に織り込んでいき、修正を加えるようにしています。

 

また、顧客の要求通りに従っているだけではなく、販売店側がうまく顧客を誘導して販売計画とのズレを最小限に留める努力をします。そして、どうしても生産が間に合わない場合は、無理をせずに納車するのを待たせることもあります。

 

トヨタのJITは、必要なものを必要な時に必要なだけ生産するために、生産計画に需要の見込みを反映させて計画を修正していき、計画と需要をできる限り近づけるようにしていく、という考え方をしています。、

 

 

一方、日産もJITを取り入れましたが、トヨタとは中身がかなり違っています。日産の場合は、生産計画をあまり重視していません。

 

販売計画とは大きくズレが生じようが、できるだけ顧客の要求に応えようとします。また、生産計画に需要の見込みがあまり反映されず、計画自体があまり信頼できない内容になっています。

 

その結果、1か月前の生産計画でも、実際の販売の内容と合っているのは50%くらいということもあるようです。実際に生産するものと計画が半分も違ってしまえば、自動車を作る工程では大混乱になってしまいます。人や機械の手配も、部品や材料の手配も、大幅に変更することになります。

 

部品や材料などは、生産する工程に間に合わないことも発生してしまいます。そこで、日産はどうやって生産を間に合わせるかというと、在庫を大量に持たせたり発注から部品納入までの期間を短くしています。部品や材料の在庫を大量に持ち、部品生産の期間を短くすることによって、計画と大幅にズレても注文通りの生産を行うようにしています。

 

しかし、これは下請けの会社にとっては大きな負担になります。部品生産の期間を短くするには、その部品の材料なども多く在庫したり、生産に係る人や機械の手配も変更したりすることが必要となります。

 

結果として、納入する部品の在庫や、部品を作るための材料を大量に保有することになります。大量の在庫を抱えるには、多大な資金が必要になります。その資金を調達するために金融機関からお金を借りることになるので、不必要な金利も発生します。

 

そのため、日産の下請け会社は在庫を持つための資金を、日産が負担するように求めるようなところも出てきたくらいです。

 

そもそもJITというのは、在庫の圧縮と製造期間の短縮という2つの効果を得るための生産方式です。しかし、日産は製造期間の短縮にばかり目が行ってしまい、在庫の圧縮どころか在庫を増加させてしまいました。これでは、コストダウンどころかコストアップになってしまう可能性があります。

 

日産に限らず、JITを導入して在庫を大量に持つようになってしまった企業は少なくないようです。何か新しい仕組みを取り入れる場合に基本的な考え方を見落としてしまうと、その仕組みを取り入れた効果が全く得られないことになってしまいます。


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