われわれの新婚旅行はモロッコとスペインだった。
結婚したのは11月だったが、私の仕事の都合で12月中旬に出発して、大晦日に帰ってきた。

モロッコは私たちの町と緯度が同じである。
しかし、西岸海洋性気候なので暖かい。
実際、アトラス山脈は雪をかぶっていたが、平地では温暖だった。それに、ダウンのコートが役立った。このコートは押し込めばちぢむので不要なときはバッグに入れておけた。

この町では壁が青く塗られている。蚊が寄らないのだそうだ。
当時は、モロッコに行く人は少なかった。
土地の人々は三角帽子が付いた土色の服を着ていた。
しかし、今ちょっと探してみたがあのエキゾチックな衣装を着た人々が見当たらない。
私たちはいちばんいいときに行ったのかも知れない。

多くの人々が私を見る。
最初はなぜだかわからなかった。
ホテルの階段のところでボーイが私に話しかけてきた。空手ができるのかと言う。できないが、かつて先輩が教えてくれた裏拳の使い方をちらっと教えてやった。そのときもまだ、見られる理由がわからなかった。
土産物店などでもかわいい娘たちがちらちら見てくれる。
あとになって、街角に貼ってあったポスターを見てやっとがてんがいった。
ブルースリーの映画がはやっていたのだ。
私たちがモロッコ人の顔が誰も同じに見えるように、東洋人の私をブルースリーと間違えていたのだ。光栄だが、私はカンフーなどできない。

<近日中の運勢>
我慢したかいがあった。予想通りのいいことがまちがいなく来る。もちろん不安など吹き飛んでしまう。

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