アニメ版はTVで観た覚えがあるのだけれど、従来のディズニーらしいお話と人物描写が結構子供向けっぽくて、アカデミー賞作品賞にノミネートされるほどの作品とは思えなかった。とはいえ主題歌にしろ野獣とベルの二人きりの舞踏会のシーンにしろ名作の誉れ高い理由は判らんでもない。

 

そんなアニメ版に特に思い入れのない観客からすると、この実写版は何とも微妙な出来。

冒頭、このあまりにも有名なお話のプロローグである、王子が野獣に変身するまでの経緯を懇切丁寧に描くあたりに監督のセンスのなさを感じる。エマ・ワトソン演じるベルはアニメ版同様に読書好きで村人からは変わり者として浮いた存在のキャラクターに設定されているようだが、そこは挿入歌("Belle")に丸投げで演出不足。実写版ガストンは滑稽で、野獣と化した王子様の迫力のなさも痛ましい。

全編を通じてアニメ版を"なぞる"感が拭えない。頑張って実写化した箇所と残念な箇所とが入り混じる。

 

なんだかなぁ、と心の中で呟きながら観ていた筈が、主題歌に合わせてベルと野獣が踊るあの名シーンあたりから(これもアニメ版の後塵を拝するものの)、だんだんと粗が気にならなくなってきた。そしてこの分かり切ったお話のクライマックスが近づくほどに涙腺が緩み始めた。ひとりポロポロ涙を流す父親に、隣で観ていた娘は呆れていたらしい…

 

このお伽話が持つ本来の魅力なのか、はたまたアニメ版の効能なのか、そこんところは良く判りませんが、程好く魔法が効いた作品ではありました。エンドロールで流れるセリーヌ・ディオンの新たな楽曲も素敵だった。

 

日付:2017/5/6

タイトル:美女と野獣 |BEAUTY AND THE BEAST

監督:Bill Condon

劇場名:TOHOシネマズ小田原 SCREEN1

評価:★★★